【18-03】太陽光パネル付きEVでCO2削減 中国特に効果大とNEDO試算

2018年2月5日 小岩井忠道(中国総合研究交流センター)

 電気自動車(EV)をはじめとする次世代乗用車の屋根とボンネットに太陽光パネルを取り付けることで、二酸化炭素(CO )排出量と走行コストをさらに削減できるという報告書を、新エネルギー・産 業技術総合開発機構(NEDO)が1月31日公表した。

 国・地域別でみると、最も大きな効果が期待できるのは、EVを今後、急速に導入しようとしている中国、という試算結果が示されている。EVなど次世代乗用車に太陽光発電システムを搭載すれば、搭 載しない場合に比べ、2050年時点でCO 排出削減量をさらに1,450万トン上積みできる、という。日本の削減量上積み効果は、590万トン。2016年5月に閣議決定された「地球温暖化対策計画」には、2 050年度の温室効果ガス排出量を2013年度に比べ8割削減するという目標が掲げられている。この目標達成のため、乗用車に割り振られたCO 排出削減量は6,400万トンだから、5 90万トンは乗用車に割り振られた削減量の9%に相当する。

 報告書は、市場分析調査データを基に2050年時点で日本国内のEV、プラグインハイブリッド車(PHV)、ハイブリッド車(HEV)の台数を合計5,300万台と想定している。こ れら次世代乗用車に太陽光発電システムを搭載した車が販売され始める時期を2018年とし、2029年以降は100%の次世代乗用車に搭載されるというシナリオと、販売され始める時期を2025年、次 世代乗用車全てが太陽光発電システム搭載車になるのが2040年というシナリオの2ケースについて、CO 排出量削減効果を試算した。

 乗用車の屋根とボンネットに取り付ける太陽電池パネルの性能は、変換効率31%としている。高い効率だが、すでにNEDOと日本のメーカーが共同で開発に成功している値だ。1 台当たりどのくらいの太陽光利用が可能かを知るために必要な日射量は、東京都の観測データを使っている。さらに所有者によってさまざまな車の使用形態を6種類に分け、そ れぞれCO 2排出量削減効果と経済効果を算出した。

 試算の結果は、EV、PHV、HEVによって異なることに加え、乗用車の利用パターンの違いによる差が大きい。搭載する太陽電池の出力が1キロワット時程度で、EVにより毎週、土 日にレジャーで150キロメートル長距離走行するという利用形態と、同じくEVで平日5日間、毎日50キロメートル長距離通勤するという二つの利用形態ケースが、い ずれも1年間で1台当たり240キログラムという最も高いCO 2排出量削減効果が期待できるという結果となった。この削減量の算出に当たっては、搭 載する太陽光発電システムの製造から廃棄までに発生するCO 2排出量を差し引いている。

 乗用車の所有者が、太陽光発電システムのおかげで電力系統から買わずに済む電気料金から太陽光発電システムの購入費を差し引いた経済効果についても、同様の結果となった。車 の利用距離が長い同じ二つのEV利用形態が最も経済効果が高く、太陽光発電システムを搭載しない車を使った場合に比べ、年間1万4,200円得する計算となった。

 EVをはじめとする次世代乗用車については国内外の自動車メーカーに限らず、さまざまな企業が大きな関心を示している。特にEVについては、中国の国を挙げた開発・導入意欲が目立つ。欧米、日 本を追い越す自動車産業を築き上げるためにはEVに力を入れるほかないとの考えが根底にある。NEDOの報告書は、2050年時点で中国が保有する太陽光発電システム搭載のEVを2,630万台、P HVを1,340万台、HEVを900万台と予測している。欧州は、EV2,860万台、PHV3,490万台、HEV900万台と台数は中国より多いが、CO 排出量削減効果は、4 20万トンと中国の1,450万トンよりだいぶ小さい。北米は、EV1,960万台、PHV3,190万台、HEV4,090万台で、CO 排出量削減効果は1,270万トン。C O 排出量削減効果が590万トンとされた日本の保有台数は、EV1,060万台、PHV1,200万台、HEV3,070万台となっている。

2050年時点の太陽光発電システム搭載車台数
国名 EV PHV HEV CO 排出量削減効果
中国 2,630万台 1,340万台 900万台 1,450万トン
欧州 2,860万台 3,490万台 900万台 420万トン
北米 1,960万台 3,190万台 4,090万台 1,270万トン
日本 1,060万台 1,200万台 3,070万台 590万トン
図1

EVの将来導入予測(NEDO報告書から)

図2

PHVの将来導入予測(NEDO報告書から)

図3

HEV将来導入予測(NEDO報告書から)

 2050年時点のCO 2排出量削減効果算定に当たっては、経済協力開発機構(OECD)国際エネルギー機関(IEA)の「世界エネルギー展望(ワールド・エネルギー・アウトルック)2015」が、参 考資料として利用された。各国が公表しているエネルギー政策に沿った場合のエネルギー需要や消費の見通しを分析し、世界のエネルギー動向が2040年までにどのような変化が生じるかを示しているからだ。電 力利用に由来するCO 2排出量が2050年時点でどのくらいあるかをまず、このIEA予測を基に推定し、太陽光発電システムを搭載した次世代乗用車を導入することによって主要国・地 域のCO 2排出量がどれだけ削減可能かを算出している。

 では、IEA「世界エネルギー展望」の最新版(2017年版、昨年11月公表)は、2040年時点の中国についてどのようにみているのか。「 中国のエネルギー政策変更が世界のクリーンエネルギーへの移行を早めるきっかけとなり得る」と、中国の影響力増大を指摘し、次のような見通しを示している。

 「2016年に世界で生産された太陽光パネルの半分は中国。低炭素技術への投資で中国は世界を先導している。2040年までの世界の新規風力発電、太陽光発電設備の3分の1が中国で導入され、電 気自動車への投資額は世界全体の40%を占める」

 NEDOの報告書は、太陽光発電システム搭載自動車が実現され普及できれば、世界の運輸部門における温室効果ガス排出量の削減に多大な貢献が可能との見通しとともに、2 050年にはIEAの展望以上に中国の役割がさらに増大することを明らかにしている。さらに、次のような新たな可能性も示している。

 「太陽光発電システム搭載自動車を大きな一つの電源として捉え、それらを統合的に制御して、国内の系統電力システムに組み込んでいくVPP (Virtual Power Plant)や、家 庭部門で利用する V2H (Vehicle to Home)としての活用なども想定される」

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