第1節 概要
既に第2章で述べたように、中国における時代的な背景や関連政策の下で、パークは国家ハイテク産業開発区と言う「基盤的なパーク」から「多様なサブパーク」の設立へと変遷してきた。国 家イノベーションパークもその例である。
2006年1月に開催された中国「全国科学技術大会」では、「15年をかけて『創新型国家(イノベーション型国家)』を建設する」と言う戦略目標が掲げられ、これを踏まえて、2006年2月9日、中 国初の科学技術に関する中長期計画となる「国家中長期科学技術発展規画綱要(2006~2020年)」が国務院より発表された。座長が温家宝首相、副座長が国務院の陳至立国務委員の体制のもと、2 003年より20のテーマに分かれた戦略研究ワーキンググループにおいて、2000人の専門家が参加し内容の検討が行われた結果である。
「国家中長期科学技術発展規画綱要」は、具体的には、重点分野や複数の重大なコア技術の戦略的開発、国家目標の達成を飛躍的に実現するための特別なプロジェクトの実施、未 来の課題に対応するための持続的な開発能力の向上などを含み、制度改革を進めることにより科学技術関連の投資を増強し、人材の育成を強化し、国家イノベーションシステムを構築することなどを謳う、「 イノベーション立国」戦略の宣言である。
このような国家戦略が策定された背景は以下の通りである。改革開放以来、中国は大量の外国資本や先進的な技術などを導入し、経済発展を促進してきた。しかし、このような「市場を以って技術を交換する」経 済成長方式のもとで、中国の対外技術依存度は50%以上となり、ハイテク製品の80%以上を輸入に依存するようになった。また、先進国では知識と技術的なイノベーションによる経済成長への貢献が70~80%と 高いが、中国では20~30%にとどまっている [1] 。このようなことから、中国が自らのイノベーションによって中長期的な発展を実現していくことが緊急課題となり、「国家中長期の科学と技術に関する発展規画綱要」が策定されるとともに、下 図に示すように、関連の政策などの策定も始まった。
図6.1 中国の自主的イノベーションの政策体系
出典:JETRO報告書『自主創新政策と中国企業』(2007年3月30日)より
また、「国家中長期の科学技術に関する発展規画綱要」に定められた基本方針や個別の要点に沿って、科学技術部は、2008年4月に財政部、国家税務総局と共同で「国家ハイテク企業の認定管理に関する規則」/ _ _ / を策定した後、2008年8月にタイマツ計画関連政策として、「国家ハイテク産業化及び環境整備に関する第11次5カ年発展綱要」、「国家ハイテク産業開発区に関する第11次5カ年発展規画綱要」、「 中国技術型インキュベータに関する第11次5カ年発展規画綱要」を策定した。
このような流れの中で、2006年6月26日、中国科学技術部と天津市政府は「共同で国家バイオ医薬イノベーションパークを建設する議定書」に調印し、2007年6月22日、中国科学技術部、中国工業・情 報化部、中国商務部が山東省政府と「共同で国家情報通信国際イノベーションパークを建設する」との通達を発し、2007年11月、中国科学技術部、中国商務部、及び江蘇省政府の支持の下で、中 国科学院と江蘇省科学技術庁が「共同で国家ナノテク国際イノベーションパークを建設する」計画を公表した。
[1] JETRO報告書『自主創新政策と中国企業』(2007年3月30日)。