第2節 国家特色産業基地
第1項 概要
国家特色産業基地は、1995年に設立されてから10数年が経ち、2008年6月時点で全国各地172カ所に設立されている。タイマツ計画国家特色産業基地制度は関係官庁と各地方の連携を強化し、科 学技術成果の転化や産業化を促進し、各地域に既存の特色産業の選択と集中を行い、それを生かしながら注力し、これにより地域経済の振興に直結させることを目的としており、同基地は毎年増える傾向にある。
2006年末までに133カ所に設立された同基地は、下表に示したような地域分布になっている。江蘇、浙江、広東、山東だけで全体の60.9%を占めるように、特定地域に集中している。
所在地域 | 基地数 | 所在地域 | 基地数 |
北 京 | 2 | 福 建 | 4 |
河 北 | 7 | 厦 門 | 2 |
内 蒙 古 | 1 | 江 西 | 1 |
大 連 | 1 | 山 東 | 11 |
吉 林 | 4 | 青 島 | 1 |
黑 龍 江 | 3 | 河 南 | 2 |
上 海 | 2 | 湖 北 | 8 |
江 蘇 | 37 | 武 漢 | 1 |
南 京 | 3 | 湖 南 | 5 |
浙 江 | 19 | 広 東 | 14 |
寧 波 | 2 | 成 都 | 1 |
安 徽 | 2 | 合 計 | 133 |
上記133カ所の国家特色産業基地の分布を技術面から見ると、以下のように言える。
まず、メカトロニクス分野関連が最も多く、44カ所の特色産業基地が設立されている。その内、自動車部品関連の特色産業基地は9カ所ある。次に、化学及び新材料分野関連の特色産業基地は41カ所、バ イオ及び新薬分野関連の特色産業基地は24カ所で、その内、5カ所は漢方薬関連基地である。電子情報分野の特色産業基地は19カ所、新エネルギー及び環境保護分野関連の特色産業基地は5カ所である [1] 。
2008年6月時点で172カ所に増えた国家特色産業基地は、下表のような地域分布になっている。集中している地域は以前と同じで、江蘇、浙江、広東、山東と言う順になっている。また、こ れら4地域が全体に占める割合や技術的分布にも大きな変化が見られない。中国における国家特色産業基地の建設は、規定の方針通りに進んでいると考えられる。
所在地域 | 基地数 | 所在地域 | 基地数 |
安 徽 | 2 | 北 京 | 2 |
福 建 | 6 | 甘 粛 | 1 |
広 東 | 22 | 貴 州 | 1 |
河 北 | 8 | 河 南 | 5 |
黑 龍 江 | 6 | 湖 北 | 9 |
湖 南 | 6 | 吉 林 | 4 |
江 蘇 | 45 | 江 西 | 1 |
遼 寧 | 3 | 内 蒙 古 | 1 |
寧 夏 | 2 | 山 東 | 18 |
陝 西 | 1 | 上 海 | 5 |
四 川 | 1 | 浙 江 | 23 |
合 計 | 172 |
上表の地域分布を地図上に示すと以下のようになる。
図8.1 タイマツ計画国家特色産業基地の地域分布
出典:現地情報をもとに技術経営創研が作成(背景図:Copyright © 2003-2004 中国まるごと百科事典)
[1] 中国タイマツハイテク産業開発センター「2006年火炬計画特色産業基地発展情況」(2006年)。
第2項 事例
最も多くの国家特色産業基地が設けられている江蘇省では、例えば、省レベルの「浦口経済開発区」の中に、「国家タイマツ計画南京浦口バイオ医薬産業基地」が設けられており、地 域の特色を生かしたさまざまな取り組みが実行されている。
具体的には、国内外の科学技術研究院(所)との提携を強化し、独自の知的財産権を持つ製薬企業に対する誘致と助成に力を入れている。設立後3年内に、バイオ医薬及び関係産業の販売高が100億元、税 引き前利益が30億元を超えることを数値目標とし、浦口経済開発区が江蘇省一流の「医薬シリコンバレー」となることを目指している。
浦口経済開発区に計画されている「バイオ基地」の面積は4平方kmであり、合成製薬生産基地、漢方薬生産基地、バイオ製薬基地及び新規医薬品の研究開発、及 び中間テスト基地の4つの機能区域が設けられている。現在、中脈科技、老山薬業、先声東元、立業製薬、薬大製薬、東捷薬業、大淵バイオ、易亨製薬などのバイオ関連医薬企業13社が進出しており、その内、中国「 タイマツ計画」における重点ハイテク企業は2社、バイオ医薬の基幹企業は6社である。
また、開発研究機関が7カ所あり、その内、国家級の工学技術研究センターは1カ所(南京工業大学国家バイオ化学工学センター)、省レベルの研究開発センターは1カ所である。これら機関によって、こ れまでにタイマツ計画におけるプロジェクト3件、863計画におけるプロジェクト2件、973計画におけるプロジェクト1件、「第10次5カ年計画」国 家科学技術難関突破計画におけるプロジェクト1件が引き受けられている。製薬、包装、医療機器が互いに連携し合い、機能を完備した産業団地と教育、研究開発、生産、販売の「四位一体」の 枠組みが基本的に築き上げられている。
2004年には中国科学技術部タイマツハイテク産業開発センターより「国家タイマツ計画南京市浦口バイオ医薬産業基地」に承認され、科学技術部に認定された南京3カ所の国家特色産業基地の一つになった。販 売高12.12億元、税引き前利益4.44億元が達成された。一方、浦口区医薬産業は全体で販売高20億元、税引き前利益8億元を達成した。
上記した事例の他には、広東省で2番目に認定されたタイマツ国家特色産業基地である「佛山新材料産業基地」や、全国唯一の国家新媒体産業基地として認定された「新媒体産業基地」なども注目を集めている。
第3項 経済・社会効果
2006年末時点におけるタイマツ計画国家特色産業基地の経済的な効果を下表に取りまとめた。
年度 | 販売総収入(億元) | 工業総生産高(億元) | 納付税額(億元) | 輸出収入(億米ドル) |
2005 | 11,566.2 | 11,765.4 | 643.4 | 264.3 |
2006 | 15,003.9 | 15,095.6 | 806.6 | 347.2 |