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書籍紹介:『躍進する新興国の科学技術~次のサイエンス大国はどこか』

書籍名:『躍進する新興国の科学技術~次のサイエンス大国はどこか

書籍イメージ
  • 編者: 独立行政法人 科学技術振興機構研究開発戦略センター 海外動向ユニット
  • 出版社: ディスカヴァー・トゥエンティワン
  • ISBN: 978-4-7993101-5-1
  • 定価: 1,200円+税
  • 商品の寸法: 17.4 x 11.4 x 1.8 cm
  • 種類・頁数: 単行本、272ページ
  • 発行日: 2011/5/21 Printed in Japan

目次

  • 第1章 ロシア
  • 第2章 インド
  • 第3章 ブラジル
  • 第4章 南アフリカ
  • 第5章 韓国
  • 第6章 イスラエル
  • 第7章 東南アジア
  • 第8章 台湾(地域)
  • 第9章 データによる各国比較

書評

林 幸秀 独立行政法人 科学技術振興機構研究開発戦略センター 海外動向ユニット 上席フェロー

 BRICSを中心とした新興国の経済成長ぶりには、目を見張るものがあります。2008年に発生したリーマンショックによる経済不況でも、中国をはじめとした新興国はあまり影響を受けず、むしろ大きな打撃を受けた米国、欧州諸国、日本などを尻目に、世界経済のけん引力になっていると思われます。そこで、JSTの研究開発戦略センター海外動向ユニットでは、BRICS諸国などにおける科学技術の動向を調査分析し、その結果を今般、「躍進する新興国の科学技術~次のサイエンス大国はどこか」というタイトルでディスカヴァー・トゥエンティワン社から新書版で出版しました。

 本書で取り上げた国・地域は、BRICSのロシア、インド、ブラジル、南アフリカと、韓国、イスラエル、東南アジア、台湾(地域)です。BRICSで最も重要な中国は、今回取り上げませんでした。それは、JSTの中国総合研究センターで「中国の科学技術力について」を刊行しており、また、中国の科学技術力は既に米国や欧州諸国、日本並みとなっており他のBRICS諸国と一緒に取り上げるのはいささか乱暴な気がするからです。ただし本書では、色々な指標を用いて、中国の状況と他の国々と比較できるように、工夫しました。また、最近経済の一体化が著しいと言われている台湾を取り上げました。

 今回本書で取り上げた国・地域の科学技術力はばらつきが多く、完全な工業先進国・地域である韓国、イスラエル、シンガポール、台湾を除けば、それ程急激な科学技術の進展は現在見られません。結果的に、中国の科学技術の驚異的な発展は他の国や地域と全く勢いが違っていることを、再確認することになったとも思われます。他方、インドやロシアなどのように、将来の科学技術大国を予感するような国もあります。これらの国が順調に経済発展すると、第二、第三の中国となる可能性もあり、引き続き注視していきたいと思っています。本書は、新興国の科学技術事情を概観する意味で貴重な資料と思われますので、是非お読みいただきたいと思います。