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書籍紹介:『科学技術大国 中国―有人宇宙飛行から原子力、iPS細胞まで』

書籍名:『科学技術大国 中国―有人宇宙飛行から原子力、iPS細胞まで

書籍イメージ
  • 著者: 林 幸秀
  • 出版社: 中央公論新社(中公新書)
  • ISBN: 978-4-12-102225-7
  • 定価:  本体 760円(税別)
  • 種類・頁数: 新書、190ページ
  • 商品の寸法: 17.4 x 11 x 1.6 cm
  • 発行日: 2013年7月25日
 

書評:林幸秀著「科学技術大国 中国―有人宇宙飛行から原子力、iPS細胞まで」(中公新書)

小岩井 忠道(中国総合研究交流センター

 中国の科学技術論文の数は、この数年で急激に増えている。年間の科学論文数で、米国に次ぐ世界2位にのし上がってきた。他の論文に引用された数が多い論文の数で比較しても、米国、英国、ドイツに次ぐ4位に入る―。こうした中国の科学技術分野の急激な進展を伺わせる数字は、すでに公表されているから知る人も多いだろう。

 この本は、最初に急速な発展を見せている中国の科学技術の現状を各種統計データから簡潔に解説し、続いて最先端科学技術の現場として中国の誇る6つの施設、装置、研究を選び、最新の状況を詳しく紹介する手法をとっている。6つとは「スパコン『天川1A』と『星雲』」、「有人潜水調査船『蛟竜』と海洋科学技術」、「LAMOSTと宇宙開発」、「核融合研究装置EASTと原子力開発」、「iPS細胞マウス『小小』」、「遺伝子解析会社BGI社」だ。

 昨年6月、マリアナ海溝で7,062メートルの潜航に成功した有人潜水調査船「蛟竜」や打ち上げロケット「神舟」の開発。心臓部に当たるプロセッサの大部分が、インテル社のCPU(中央演算処理装置)と同じ米国のNVIDIA社製GPU(画像データ処理集積回路)というスパコン「天河1A」。米国のプリンストン大学とゼネラル・アトミックス社の協力を得て2006年に完成させたトカマク型最新鋭装置「EAST」―などから、「自前技術にこだわらない」中国の技術開発の特徴が紹介されている。

 同時に、2020年までの10年間で核融合研究人材を2,000人ほど育成する目標を立て、北京大学清華大学など有力5大学に核融合専門学科を設置する、といった相当将来を見据えた意欲的な姿も見逃さない。研究資金面で大学などの研究者が恵まれている実態にも著者は目を向けている。日本の科学研究費補助金(科研費)に相当する国家自然科学基金委員会(NSFC)の予算額(2011年)をみると、日本の科研費約2,000億円の半分ちょっとでしかない。しかし、わずか1年間で倍増しており、7年前に比べると約7倍という急増ぶりだ。

 科研費は日本全体の研究者にある程度満遍なく配分され、かつ既得権化している部分もあるため、総額が少しくらい伸びたところで影響は少ない。それに比べて、NSFC予算は力のある研究者に絞って配分される結果、有力研究者に割り振られている予算額で見れば、中国の方が圧倒的に大きい...というのが著者の見立てだ。

 中国の潜在力の大きさを感じ取る読者も多いのではないだろうか。

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