日中大学フェア&フォーラム開催報告&資料
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日中大学フォーラムが北京で開幕

2016年 5月 9日 馬場 錬成(中国総合研究交流センター上席フェロー)

 「世界最高レベルの大学を目指して ~高等教育と研究開発の両立をめぐって~」を総合テーマに掲げた日中大学フォーラムが、5月6日、北京の中国科学院学術会堂で開かれ、日中の大学人がそれぞれの大学の活動状況を報告し、目指す将来の大学像について意見を発表した。

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写真1 会場は演者を囲むように円形の席になっており、
すべての席のディスプレイには演者の発表内容が映し出された。

 まず、主催者を代表して中国科学院、科学技術振興機構(JST)からそれぞれ挨拶がおこなわれた。最初にマイクに立った中国科学院副院長で中国科学院大学学長でもある丁仲礼博士は、開催のため日中の大学関係者が、多忙なスケジュールを調整して北京に集まったことに感謝した。

 そして1980年代からの中国科学院の歴史と日本との交流を振り返りながら「このような歴史的な交流をもとに、私たちは将来に向けてさらに学術交流を発展させたい」と呼びかけるように話をした。

 また中国科学院は、傘下の100余りの研究所から大学院生を受け入れて博士取得などの教育を行っているが、これを学部学生の教育に拡大していることを報告した。また、中国科学院大学は、1100人余りの外国からの留学生を受け入れており、国籍は約80に及ぶことも紹介した。その中には日本から6人が留学しているという。

 国家の発展と共に人材育成に取り組む中国科学院の積極的な活動の報告だった。

 続いて挨拶に立った濵口道成・JST理事長は、近年の中国の科学技術研究や知的財産活動の急進的な発展を称え、JSTもこのような時代をとらえて北京事務所を開設し、中国総合研究交流センターを創設した。一昨年からはさくらサイエンスプラン事業を立ち上げて積極的に中国との科学交流を進めている現状を説明した。

 21世紀に入り、世界の研究現場だけでなく、社会の発展もかつてない速さで変革している状況を語り「研究成果も10年かけたものが数か月で書きかえられてしまう時代を迎えた。大学もオープンでグローバルな関係を作らないとトップになれないし時代の要請にも応えられない。日中の大学交流によって質量共に連携を進展するように期待している」と語り、日中大学フェアの一層の進展に期待を込めた。

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写真2 挨拶する濵口理事長

祝辞はいずれも日中科学技術交流の意義を強調

 主催者挨拶のあと、日中から3人が祝辞を述べた。まず中国の劉叢強・国家自然科学基金委員会副主任は、基礎研究は大変重要であり日中の科学技術交流は、共同研究やシンポジウムなどで多くの成果を出してきたことを報告した。

 さらにイノベーション創出のために人材の育成は重要であり、交流のサポートを充実させないとならないと強調。「日中両国は隣国であり、これまでもいろいろな合意があり交流してきた。これからも実務的な協力をして行くべきだ」と訴えた。

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写真3 祝辞を述べる戸谷一夫・文部科学審議官

 また戸谷一夫・文部科学省文部科学審議官は、最近実現した日中の女性科学者の交流や日本・アジア青少年サイエンス交流事業「さくらサイエンスプラン」などの実績に言及しながら、日中の科学技術交流の進展を評価した。そして「日中両国にとって科学技術交流は、パートナー同士であり重要なものだ。日本の全留学生のうち4割以上が中国からであり、活発な交流の一端を示している」と語った。

 第5期科学技術基本計画が策定され、これからは人材力、大学の国際共同研究、IT技術を最大限に活用する時代になり、「日中両国の科学技術交流は非常に重要であり、今後につながる緊密な交流になるように促進してほしい」と呼びかけた。

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写真4 祝辞を述べる伊藤康一・在中華人民共和国日本国大使館首席公使

 最後に祝辞に立った伊藤康一・在中華人民共和国日本国大使館首席公使は、日中大学フェアは、この種の交流事業としては最大のものになったと位置付けた。日本の第5期科学技術基本計画と中国の第13回科学技術5か年計画が互いにスタートした時点であり、中国ではイノベーションの必要性と人材育成などを掲げている。

 「中国の李克強総理も語っているように、若い人材なくしてイノベーションは生まれない。このような事情は両国とも同じであり、今後も青少年交流が大事だ。さくらサイエンスプランは中国指導者からも高く評価されている」と語り、こうした交流は両国のイノベーション推進に貢献することを語った。

 この後、日中の参加者らを囲んで記念撮影が行われ、開幕式を終了した。

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写真5 参加者全員の記念撮影