北京便り

【21-027】《NSFC》国家自然科学基金委員会の改革への取り組み（４）

JST北京事務所　2021年04月01日

国家自然科学基金委員会、2021年の改革措置を発表

　国家自然科学基金委員会（NSFC）の2021年の改革は「国家自然科学基金が改革を深化させるプラン」を全面的に実施することを主旨とし、1月15日に、2021年に進めるべき措置をウィーチャットパブリックアカウントで発表した。以下にまとめる。

　具体的に以下11の措置を掲げている。

1. 属性別審査を深化して実施する。「（新しい発想での）探索を奨励し、突出したオリジナリティを目指す」、「（世界の科学の）最前線にフォーカス、独自の新しい道を切り拓く」、「（国家や経済の）ニーズに応え、ボトルネックを突破する」と「（分野横断的な）共通性を志向し、分野の融合を図る」という4つの課題属性に基づく審査の対象として、2020年に実施した重点プログラムと一般プログラム（面上項目）のほか、2021年は青年科学基金の課題も試験的に加える。

2. 人材支援システムを改善する。青年科学基金支援範囲の拡大、優秀青年科学基金支援額の増加、傑出青年科学基金管理プロセスの見直し、イノベーション研究クラスター課題評価体制の改善、基礎科学センター課題支援の安定化を図る。

（ア）外国籍の非中国系研究者への「国際傑出科学基金プロジェクト」、「優秀青年科学基金プログラム」の開放を継続し、その基礎の上に海外の優秀な若手人材の帰国（来中）しての研究を奨励、「外国青年学者研究基金プロジェクト」の機能を発展させ、全方位で優秀な外国の研究者を支援する。

（イ）なお、この点については、1月29日に青年科学基金プロジェクト（海外）の公募が開始された。1980年9月1日以降に生まれた研究者を対象に3年間で100～300万元を支給する。

3. 創造的探索プログラムを継続に実施する。研究者をオリジナリティのある基礎研究へ向かわせる刺激策として、2021年度に創造的探索プログラムでコンセンサスが取れていなく、革新的で、リスクが高い創造性のある課題を選び、継続的に支援する。

4. 新しい応募コード（分野の分類コード）の使用を全面的に徹底する。

5. 異分野融合統合を促進させる。総合的で複雑な課題をめぐる異分野の学際研究において、新しい研究パラダイムの模索、学際研究力のレベルアップ、世界でインパクトある成果の創出、異分野融合型学際人材の育成を進める。

6.責任・信用・貢献を重視する審査制度の試行を継続する（前回記事参照）。この点について、3月29日のウィーチャットパブリックアカウントが報じたところでは、44のNSFCの学科（分野）でいくつかのプログラムにおいて試行が行われている。これは、NSFC全学科（分野）の35％に相当する。

7. 投資の多様化を強化し、共同イノベーションを促進する。当面、20省、5企業、5業界団体の協力を得たマッチングファンドをベースに、社会や個人による寄付を奨励し、投資主体の多様化、マッチングファンドの範囲を更に拡大する。

8. 経費管理の改革を推進する。傑出青年科学基金に経費の「請負制（※）」を試験的に導入した上、青年科学基金にも試験的に導入する。これによって、直接経費と間接経費の区分けを無くし、応募時にも予算案の提出が求めないこととし、研究代表者は規定に沿って経費を自主的に使用することができる。

※　従来から定額により研究費を配賦していたが、今回の改革により更に直接経費と間接経費の区分を廃止して柔軟性を高めたことを表現しており、法律用語としての請負とは異なる。

9. 公募プロセスの簡素化を持続的に推進する。NSFCの公募は全面的にペーパーレス化を実施する。応募者所属機関は、プロポーザルと添付資料の電子ファイルをオンラインで承認するだけで良く、紙申請書の提出が不要になる。

10. 所属機関に対する管理を強める。所属機関の参入・退出制度を改善し、所属機関に対してダイナミックな管理を導入する。所属機関信用評価制度をつくり、信用評価を間接費用の査定及び奨励・処罰に関連させる。

11. 科学基金の学風づくり事業を深く推進する。教育を根本とし、向かうべき方向への奨励によって誘導し、規範をよりどころとし、監督を手掛かりとして、懲戒を最後の手段とする学風を、科学基金の研究倫理とともに確立・整備することを、「十四五」期間においてしっかりと進める。

　このほか、NSFCでは、国際的に一流の学術交流のプラットフォームを建設し、中国の基礎研究の成果を世界に発信するため、従来の『中国自然科学基金』英文誌をFundamental research に改称した。同誌にはScience Directでアクセスできる。1月に発行された創刊号は、量子情報と量子コンピュータの特集号である。