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【21-033】宇宙関係の話題まとめ

JST北京事務所 2021年04月16日

 別途[1]お伝えしているとおり、3月31日午前0時から世界最大の球面電波望遠鏡FAST("天眼")では世界の研究者からの観測申請の受付けを開始した。

 朝6時45分には、甘粛省の酒泉衛星センターから人工衛星高分12号が打ち上げられ、その後、予定軌道への投入に成功したことが報じられた。同衛星の主たる用途は、国土観測、都市計画、土地の権利の確定、道路計画、農作物の収穫評価、災害予防とのこと。[2]

 この日の17時57分、北京日報アプリは、他からの転載として、中国の有人宇宙プロジェクト総設計師である周建平院士が、2022年前後に計画されている中国の宇宙ステーション建設後に、ハッブル望遠鏡と同程度の解像度ながら、同望遠鏡の300倍のエリアを観測する宇宙望遠鏡"巡天"の計画を報じた。記事では、"巡天"を"天眼"に対比する意味か、"宇宙の眼"と称している。直径2メートルの離軸三反光学系を有するという。10年間の稼働を想定し、そのうち6年間を観測に使用する計画とのこと。ダークマターやダークエネルギー、ブラックホール、宇宙や天体の期限についての研究を行う。[3]

 この日の午前中、北京日報アプリは、やはり転載ながら、「蒼穹に鼎を問う」と題した文章を掲載している[4]。そこでも、"巡天"の計画が紹介されているほか、1986年3月に4人の科学者によって提唱された「外国の戦略的高度科学技術の発展を追い、研究する建議」の中に有人宇宙技術が含まれており、この建議が国家の863計画となって以来の有人宇宙開発の歴史をまとめている。

 この記事では、中国の有人宇宙活動は3つのステップで進められてきたと説明する。第1ステップは、無人・有人の宇宙船を発射し、宇宙飛行士を安全理に近い軌道に投入する。併せて、地球観測と科学実験を行い、宇宙飛行士の安全な帰還を達成し、初歩的な有人宇宙飛行システムを構築する。第2ステップとして宇宙飛行士の船外活動と宇宙船のドッキングを実現、宇宙実験室の研究開発と発射を行い、短期間の有人宇宙活動に一定規模で成功する。第3ステップは、宇宙ステーション建造のニーズを満たし、比較的大規模な有人宇宙活動を行うことである。

 一連のプロジェクトの成果として、3,000万年に1秒以下の誤差しか生じない原子時計や新世代のリモートセンシング技術、宇宙空間における趣旨の長期培養、ドイツとの共同で行われた植物を形作るタンパク質の微重力空間における変化や数選手の植物の微重力空間におけるゲノムの変異のスクリーニング、このほか8種類の哺乳動物細胞の宇宙空間での培養実験、ヒト胚胎幹細胞の原子生殖細胞への分化と33日間の生存、マウスの胚胎幹細胞の中内胚葉への分化成功などを挙げている。プロジェクト全体で1,000近い特許、2,000以上の技術成果が得られたという。

 この記事では、有人宇宙開発を現代の努力により、千年の利を得る"百年の大計"、"千年のプロジェクト"と評している。


1. 中国「天眼」(球面電波望遠鏡)が3月31日から世界の研究者からの観測申請受付を開始

2. 《祝贺!我国成功发射高分十二号02星》北京日报,2021-03-31

3. 《我国继"天眼"之后又推出空间站巡天望远镜 巡天遥看一千河》北京日报,2021-03-31
  ccdi.gov.cn/yaowen/202103/t20210329_238671.html

4. 《问鼎苍穹》北京日报,2021-03-31