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【21-039】《科学技術インフラ》中国の国家重大科学技術基礎施設について(その1)

JST北京事務所 2021年06月22日

1.概要

 最先端の研究を実施するために必要となる大規模な研究施設を設置するには多額の経費を要するので、共用を前提として設置し、広範な分野における多様な研究等に活用されることにより、その価値が最大限に発揮される。

 中国においては、そのような大規模な研究施設を「国家重大科学技術基礎施設(註:基礎施設=インフラ)」と称し、それらの設立と共用を強力に推進している。

 第11次五カ年計画(「十一五」、2006-2010年)以来、節目で国家重大科学技術基礎施設の強化について言及がなされ、特に今年2021年3月に開催された中国の全国人民代表大会(国会に相当)において承認・発表された第14次五カ年計画(「十四五」)では、イノベーションを中国近代化建設の核心と位置づけ、国家発展の戦略的支えとしており、多くの言及がなされている。[1]

 その中で、第二編第四章第四節では、「国家重大科学技術基礎施設を適宜前倒しして設置し、共用レベルと使用効率を高める。」としており、表3に国家重大科学技術基礎施設が例示されている。

 今回、これまでの五カ年計画において言及された国家重大科学技術基礎施設の概要について紹介する。

2.五カ年計画における国家重大科学技術基礎施設(国家重大科技基础设施)について

(1)第11次五カ年計画(「十一五」[2])(2006-2010年)(抄)

第八章 科学・教育による国家振興戦略および人材強国戦略の徹底的な実施

第二十九節 科学技術のイノベーションと飛躍の加速

重大科学技術基礎施設の建設を強化し、重大科学プロジェクトを実施し、科学技術イノベーションを支援する。」

(2)第12次五カ年計画(「十二五」[3])(2011-2015年)(抄)

第七編 イノベーションによる駆動 科学教育による国家振興戦略および人材強国戦戦略の実施

第二十七章 科学技術イノベーション能力の強化

第三節 重大科学技術基礎施設の建設強化

「独創的なイノベーションを強化し、イノベーションを集積し、またイノベーションの消化吸収能力を導入することをめぐり、基礎的研究、先端技術および共通的技術研究プラットフォームの建設を強化し、国家重大科学技術基礎施設を整備し、相互に組み合わせ、開放と効率的な利用を強化する。」

(3)第13次五カ年計画(「十三五」[4])(2016-2020年)(抄)

第二編 イノベーションによる駆動発展戦略

第六章 科学技術イノベーションの主導的役割の強化

第三節 イノベーション基礎能力の向上

「エネルギー、生命、地球システムと環境、材料、粒子物理と核物理、空間と天文、工学技術等の科学分野と一部の学際領域における国家重大科学技術基礎施設の建設を加速し、既存の先進施設に頼って総合的な国家科学センターを設立する。」

3.五カ年計画各期に対応した国家重大科技基礎施設建設に係る規程について

(1)国家中長期科学・技術発展計画要項(2006-2020年)[5]

「十一五」期間中に制定された。科学技術投資を戦略的投資とみなし、国内のイノベーション能力と国際競争力を強化するため、2020年までに以下を達成するよう努めることが明記されている。

・GDPに対する社会全体の研究開発投資の割合:2.5%以上

・科学技術の進歩貢献率:60%以上

・外国の技術への依存度:30%以下

・国際的な科学論文の引用数:すべて世界のトップ5にランク

この文脈において、国家の財政状況に併せて計画に必要な経費を確実に確保し、国家重大科学技術基礎施設建設を強化する旨が明記されている。

(2)国家自主イノベーション基礎能力建設「十一五」計画[6]

「十一五」期間中に制定された。国際競争力の強化と国家近代化建設のため、国家により重大科学技術基礎施設を建設し、共用を促す旨が記載されている。またそのために「十一五」期間中に12施設を建設することが明記されている。

(3)国家重大科学技術基礎施設建設中長期計画(2012-2030年)[7]

「十一五」の成果を踏まえ「十二五」期間中に制定された。2030年までに7分野における主要な国家重大科学技術基礎施設の建設を完成させることが明記され、特に「十二五」期間中に16施設の建設することが明記されている。

(4)国家重大科学技術基礎施設「十三五」計画[8]

「十三五」に対応して制定された。当該期間最終年度である2020年までに重大科学技術基礎施設を整備し、運用水準を先進諸国の水準に達すること、またそのために55施設程度を建設し重点分野をほぼカバーする旨が明記されている。

そして「十三五」期間中には、10施設の建設が明記されている。

(5)国家発展改革委員会記者会見[9]

2020年4月20日、国家発展改革委員会の記者会見においてハイテク司(註:局に相当)の伍浩司長は、これまでに55の国家重大科学技術基礎施設を配置し、科学技術イノベーションと経済発展の中でリーダーシップを発揮したと述べた。

(註:「十一五」12施設、「十二五」16施設、「十三五」10施設の計は38施設。中国国家重大科学技術基礎施設リスト(十一五−十三五)(PDF248KB)参照)

4.「十四五」参考訳(抄)

中華人民共和国国民経済および社会発展
第14次5カ年計画および2035年遠景目標要項
2021年3月

(※本文の改行は翻訳者による)

第二編 イノベーション駆動発展を堅持し、全面的に発展の新優勢を作り上げる

 イノベーションを、中国の近代化建設の全局面の核心的地位に堅持し、科学技術の自立自強を国家発展の戦略的支えとし、世界の科学技術のフロンティアのため、経済の主戦場のため、国家の重要需要のため、人民の生命健康のため、科学教育興国戦略、人材強国戦略、イノベーション駆動戦略をしっかりと実施し、国家イノベーションシステムを整備し、科学技術強国の建設を加速させる。

第四章 国家戦略科学技術力の強化

 科学技術強国行動要綱を制定し、社会主義市場経済の条件下で新型挙国体制を健全化し、核心技術の難関攻略を行い、イノベーションチェーン全体の効率を高める。

第四節 重大科学技術イノベーションプラットフォームの建設

 北京、上海、粤港澳大湾区が国際科学技術イノベーションセンターを形成することを支持し,北京懐柔、上海張江、大湾区、安徽合肥に総合的国家科学センターを建設し、条件を満たす地方が区域科学技術イノベーションセンターを建設することを支持する。

 国家自主イノベーションモデル区、ハイテク産業開発区、経済技術開発区などのイノベーション機能を強化する。

 国家重大科学技術基礎施設を適宜前倒して設置し、共用レベルと使用効率を高める。

 自然科学技術資源庫、国家野外科学観測研究ステーション(ネットワーク)と科学ビッグデータセンターを集約化して建設する。

 国家科学研究論文と科学技術情報のハイエンド交流プラットフォームを構築する。

表3 国家重大科学技術基礎施設(国家重大科技基础设施)
01 戦略誘導型(战略导向型)
  宇宙環境地上モニタリング網、高精度地上授時システム、大型低速風洞、海底科学観測網、宇宙環境地上シミュレーション装置、核融合炉ホストコンピュータ重要システム総合研究施設などを建設する。
02 応用支援型(应用支撑型)
  高エネルギーシンクロトロン放射光源、高効率低炭素ガスタービン試験装置,超重力遠心シミュレーション・試験装置、加速器駆動型核変換研究装置、未来ネットワーク試験施設などを建設する。
03 将来性牽引型(前瞻引领型)
  硬X線自由電子レーザー装置、高海抜宇宙線観測ステーション、総合極端条件実験装置、極深地下極低輻射バックグラウンドのフロンティア物理実験施設、精密重力測量研究施設、大強度重イオン加速器装置などを建設する。
04 民生改善型(民生改善型)
  トランスレーショナル医学研究施設、多モードトランススケール生物医学イメージング施設、モデル動物の表現型と遺伝型研究施設、地震科学実験場、地球システム数値シミュレータなどを建設する。

その2 へつづく)


1. 中華人民共和国人民政府「中华人民共和国国民经济和社会发展第十四个五年规划和2035年远景目标纲要

2. 中共中央关于制定"十一五"规划的建议(全文)

3. 国民经济和社会发展第十二个五年规划纲要(全文)

4. 国民经济和社会发展第十三个五年规划纲要(全文)

5. 国家中长期科学和技术发展规划纲要(2006--2020年)

6. 国家自主创新基础能力建设"十一五"规划

7. 国家重大科技基础设施建设中长期规划(2012--2030年)

8. 国家重大科技基础设施建设"十三五"规划

9. 通信产业网2020年4月20日"国家发改委首次明确"新基建"范围"