【22-11】中国のマクロ経済政策の動向(その1)
2022年07月19日
田中 修(たなか おさむ)氏 :ジェトロ・アジア経済研究所 上席主任調査研究員 拓殖大学大学院経済学研究科客員教授
略歴
1958年東京に生まれる。1982年東京大学法学部卒業、大蔵省入省。1996年から2000年まで在中国日本国大使館経済部に1等書記官・参事官として勤務。帰国後、財務省主計局主計官、信州大学経済学部教授、内閣府参事官、財務総合政策研究所副所長、税務大学校長を歴任。現在、財務総合政策研究所特別研究官(中国研究交流顧問)。2018年12月~ジェトロ・アジア経済研究所上席主任調査研究員。2019年4月~拓殖大学大学院経済学研究科客員教授。学術博士(東京大学)
主な著書
- 「日本人と資本主義の精神」(ちくま新書)
- 「スミス、ケインズからピケティまで 世界を読み解く経済思想の授業」(日本実業出版社)
- 「2011~2015年の中国経済―第12次5ヵ年計画を読む―」(蒼蒼社)
- 「検証 現代中国の経済政策決定-近づく改革開放路線の臨界点-」
(日本経済新聞出版社、2008年アジア・太平洋賞特別賞受賞) - 「中国第10次5ヵ年計画-中国経済をどう読むか?-」(蒼蒼社)
- 『2020年に挑む中国-超大国のゆくえ―』(共著、文眞堂)
- 「中国経済はどう変わったか」(共著、国際書院)
- 「中国ビジネスを理解する」(共著、中央経済社)
- 「中国資本市場の現状と課題」(共著、財経詳報社)
- 「中国は、いま」(共著、岩波新書)
- 「国際金融危機後の中国経済」(共著、勁草書房)
- 「中国経済のマクロ分析」(共著、日本経済新聞出版社)
- 「中国の経済構造改革」(共著、日本経済新聞出版社)
はじめに
3月の全人代は、2022年のマクロ政策の基本方針を決定したが、その直前2月のロシアによるウクライナ侵攻、全人代直後からの上海・吉林での新型コロナのリバウンド・都市封鎖は、マクロ経済政策の見直しを余儀なくさせた。本稿では、経済安定包括的政策措置決定にまで至る国務院・党中央の動向と、マクロ経済政策担当官庁の記者会見からみた本措置のマクロ経済政策の主要内容を紹介する。
1.四半期別成長率の推移
2022年7月16日発表時点での、四半期別前年同期比成長率の推移は、表のとおりである。
(注)( )は2019年同期からの2年平均成長率 | ||||
年 度 | 1-3月期 | 4-6月期 | 7-9月期 | 10-12月期 |
2019 | 6.3 | 6.0 | 5.9 | 5.8 |
2020 | -6.9 | 3.1 | 4.8 | 6.4 |
2021 | 18.3 (4.9) |
7.9 (5.5) |
4.9 (4.9) |
4.0 (5.2) |
2022 | 4.8 | 0.4 |
中国の四半期別成長率は、先進国の前期比成長率を採用せず、前年同期比成長率を採用している。この前年同期比成長率は、前年の経済の状況に成長率が左右される。2020年1-3月期の中国経済は新型コロナの流行で大きく落ち込み、4-6月期に景気対策が決定され関連予算が承認されると、7-9月期、10-12月期の経済は大きく回復した。この反動で、21年1-3月期の前年同期比成長率は不自然に高くなり、その後は、前年のベースがせり上がっていくので、4-6月期、7-9月期、10-12月期の成長率は急速に減速していく恰好になっている。
このため、国家統計局は別途2019年から2年平均の成長率を公表した。2年平均は、2020年の成長の急速な低下、21年の急速な回復をならした形となっており、これがコロナ流行前の19年のレベルに達していれば、経済はコロナ前の水準に達したことになるからである。
これでみると、4-6月期の2年平均成長率は5.5%とかなり高い伸びとなっていたが、7-9月期は4.9%に減速している。これは、この時期に長江流域・河南省の洪水・冠水、江蘇省・湖南省等でのコロナのリバウンド、石炭・電力不足、世界的な半導体不足、国際一次産品価格の上昇等が重なり、経済に一定のダメージを与えたためである。政府の迅速な対応により10-12月期の成長率は回復し、22年1-2月期も好調を保っていた。しかし、ロシア・ウクライナ紛争の長期化、コロナの大がかりなリバウンド・都市封鎖が工業・サービス業・消費に大きなダメージを与え、3月とりわけ4月の経済は大きく悪化した。22年1-3月期の成長率は4.8%と、5%を割り込む結果となったのである。
2.当初のマクロ経済政策
(1)2022年の成長率目標
3月5日、全人代が開催され、李克強総理が政府活動報告(以下「報告」)を行った。
報告は、中国経済が、①需要の収縮、②供給へのダメージ、③予想(市場の将来予測)の弱気化の三重の圧力に直面しているという厳しい認識を示した。
この厳しい環境の中で、多くのエコノミストは22年のGDP成長率目標を5%前後と予想していたが、報告では5.5%前後と定められた。報告は、「経済成長の予期目標の設定では、①主として雇用の安定・民生の保障・リスクの防止のニーズを考慮し、②ここ2年間の平均経済成長率(5.1%)及び第14次5ヵ年計画の目標要求とリンクさせている。これは、高いベースの上での中高速成長であり、主動的な姿勢を体現し、艱難辛苦の努力を払ってこそ実現できるものである」としている。
さきほど見たように、21年4-6月期の2年平均成長率は5.5%であり、この勢いを回復できれば、5.5%前後の目標は達成可能と考えたのであろう。また、第14次5ヵ年計画には成長率目標は定められていないが、2035年に2020年のGDPを倍増するには年平均約4.7%の成長が必要であり、成長率が趨勢的に低下していることを考慮すると、最初の5年は5.5%程度の成長を確保しておきたいという願望もあるのだろう。しかし、その実現が決して容易でないことは、「艱難辛苦の努力を払ってこそ実現できる」という表現に示されている。
(2)マクロ経済政策の基本方向
積極的財政政策は、昨年の「効果を高め、精確性・持続可能性を更に重視しなければならない」と、より持続可能性を重視する方向になっている。穏健な金融政策は、「柔軟・適度とし、流動性の合理的な充足を維持しなければならない」とされた。雇用政策は、「質を高め、力を加えなければならない」と、質を重視する方向になっている。
また、「政策の力発揮を適切に前倒す」とされたが、これは、地方政府特別債の発行・中央予算内の投資を前倒して、1-3月のインフラ投資の量を確保するとともに、中央から地方への移転支出を前倒して、末端政府の基本民生・賃金・運営を保障すること、増値税の仕入税額控除留保分の還付を前倒して企業のキャッシュフローを確保することを意味していると考えられる。
また、2022年は第20回党大会という、極めて重大な政治イベントがあるため、マクロ経済政策は「穏」(安定・穏健)の字が第一とされた。
(3)積極的財政政策
22年の財政赤字の対GDP比率を2.8%前後(21年目標は3.2%前後)とした。報告は、「これは財政の持続可能性の増強に有益である」と、財政の持続可能性を前年以上に重視している。財政部は、EUの財政健全基準を参考にしており、財政赤字の対GDP比率を3%以内に抑えることを健全の目安としている。2.8%に引き下げたのは、財政の追加出動の余地を確保するためであろう。
他方で、財政支出の規模については、人民銀行からの納付金、予算安定調節基金からの繰入れ等により、21年度より2兆元増やした。また、この増やした財政支出については、より多く末端政府に下方移転させ、企業支援・基本民生に重点的に用いる旨を明らかにしている。
公共投資については、中央の予算内投資を21年より300億元増やし、6400億元とした。地方のインフラ投資の財源となる地方政府特別債については、21年と同額の3.65兆元としている。これに加え、21年からの地方政府特別債資金の繰り越し分、約1.2兆元が、公共投資の財源となる。
また、22年の減税・費用引下げ政策の目玉は、仕入れ税額控除留保分の還付約1.5兆元である。これは、仕入れに係る増値税額が売上に係る増値税額を上回っている間は、増値税還付が発生するため、税還付を留保していたものを、企業のキャッシュフロー確保のため早めに還付するものである。これに製造業、小型・零細企業、個人事業者向けの減税を加え、税還付・減税の総額は約2.5兆元とされた。
(4)穏健な金融政策
2つの実体経済に直接到達する金融政策手段(①小型・零細企業向けインクルーシブファイナンスの元本償還・利払い猶予、②小型・零細企業向け無担保インクルーシブファイナンス)が21年12月末に終了したため、引き続き小型・零細企業向けインクルーシブファイナンスと無担保貸出、これまで貸出を受けられなかった中小・零細企業への最初の貸出を推進するとしている。
(5)雇用優先政策
失業・労災保険料の引下げ等の段階的な雇用安定政策を引き続き執行し、リストラをせず、リストラが少ない企業に対し、雇用安定のための失業保険料還付政策を引き続き実施し、中小・零細企業への還付割合を顕著に高めることとした。
また、2022年は大学卒業生が1000万人を超えるため、彼らに就業・起業への指導・政策支援と切れ目ないサポートを強化しなければならないとしている。
さらに、1000億元の失業保険基金を使用して職業訓練を支援し、製造業の質の高い発展に至急必要な人材の育成を加速することも盛り込んでいる。
3.経済下振れへの国務院の対応
(1)国務院常務会議(4月6日)
経済の現状につき、世界経済の回復の鈍化、グローバルな食糧・エネルギー価格の上昇、国内でコロナの多発、中小・零細企業等の困難の増大、経済循環の停滞等の内外環境の複雑性・不確定性が激化しており、あるものは予想を超え、新たな下振れ圧力が一層増大している、との厳しい認識を示した。
このため、「政府活動報告」措置の実施に急いで取り組み、ものによっては前倒しで実施してもよいとしている。
財政面では、飲食、小売、観光、民間航空、道路・水運・鉄道輸送の年金・失業・労災保険料納付の一時猶予、中小・零細企業への雇用安定目的の失業保険料還付割合の引上げ等が決定された。
金融面では、「三農」支援、小型・零細企業支援再貸出の増額、製造業向け中長期貸出の伸びの加速、科学技術イノベーション・包摂的高齢者介護(養老)特別再貸出の新設等が決定されている。
(2)国務院常務会議(5月11日)
4月の経済の新たな下振れ圧力は一層増大しているとし、①財政・金融政策は雇用を優先する、②食糧の生産量・供給を確保し、物価の安定を確保する、③エネルギーの正常な供給を確保する、④年金保険料の納付猶予政策の範囲拡大・実施期限延長措置を早急に検討する、⑤地方が中小・零細企業、個人工商事業者の水道・電気・ガス等の料金に対して補助を与えるよう指導する等の措置が決定された。
(3)国務院常務会議(5月23日)
経済の基盤をしっかり安定させるため、6方面、33項目の包括的政策措置を実施することが決定された。政策措置の全体像と、この会議で主要政策とされたものは、以下のとおりである。
これに基づき、①各地方・各部門は緊迫感を増強し、実施にしっかり取り組まなければならない、②関係部門は、包括措置をできるだけ速やかに項目ごとに細分化して公布・実施しなければならない、③国務院は地方に対して、経済を安定させる措置の進行監査を実施し、地方政府は地方の実際に適合した経済安定政策の打出しに早急に取り組まなければならない、とされた。
経済安定包括的政策措置の全体像と主要政策
(1)財政政策
1)増値税の控除留保分税還付を一層強化する。
更に多くの業種で既存・新規増加分の仕入控除留保分を全額税還付し、税還付を1400億元余り増やし、年間の税還付・減税総量を2.64兆元とする。
2)財政支出の進度を加速する。
3)地方政府特別債の発行・使用を加速して支援範囲を拡大する。
今年の特別債は、8月末までに基本的に完全使用し、新しいタイプのインフラ等に支援範囲を拡大する。
4)政府融資信用保証等の政策をうまく用いる。
国家融資信用保証基金の再保証提携業務を新たに1兆元以上増やす。
5)政府調達による中小企業支援を強化する。
6)社会保険料の納付を猶予する政策の実施を拡大する。
中小・零細企業、個人工商事業者、5つの特殊困難業種の年金等3項目の社会保険料納付猶予政策を年末まで延長し、範囲をその他特殊困難業種に拡大して、今年3200億元の納付猶予を見込む。
7)事業安定支援を強化する。
失業保険の雇用継続研修補助を全ての困難保険加入企業に拡大する。
中小・零細企業が大学卒業生を受け入れた場合は、事業拡大補助等の支援を増やす。
(2)マネー・金融政策
8)中小・零細企業、個人工商事業者、トラック運転手ローン、及びコロナの影響を受けた個人住宅・消費者ローン等について元本償還・利払い猶予を実施する。
自動車中央(管轄)企業が実行した900億元の商用トラックローンについては、銀行・企業が連携して半年元本償還・利払いを延期しなければならない。
9)小型・零細企業向けインクルーシブファイナンス支援を強化する。
今年の小型・零細企業向けインクルーシブファイナンス支援手段の金額と支援割合を2倍にする。
10)実質貸出金利の安定の中での引下げを引き続き推進する。
11)資本市場での資金調達の効率を高める。
プラットフォーム企業の法・ルールに則った国内外での上場を推進する。
12)インフラ建設・重大プロジェクトへの金融機関の支援を強化する。
(3)投資安定・消費促進等の政策
13)論証が成熟したいくらかの水利プロジェクトを早急に推進する。
14)交通インフラ投資を早急に推進する。
3000億元の鉄道建設債の発行を支援する。
新たな農村道路の建設・改造を始動する。
15)土地の事情に応じて都市共同溝建設を引き続き推進する。
16)民間投資を安定・拡大する。
17)プラットフォーム経済の規範的で健全な発展を促進する。
18)自動車・家電等の大口消費を安定的に増やす。
自動車の購入制限を緩和し、一部の乗用車の購入税徴収を一時的に600億元削減する。
(4)食糧・エネルギーの安全保障政策
19)健全な食糧収益保障等の政策を整備する。
20)安全・クリーン・効率の高い利用を確保する前提の下で、石炭の質の優れた生産能力を秩序立てて稼働する。
地方の石炭生産量の責任を徹底させ、炭鉱の生産能力増加の審査政策を調整し、供給保障のための指定炭鉱の申請手続の処理を加速する。
21)いくらかのエネルギープロジェクトの実施を早急に推進する。
いくらかの水力発電・石炭火力発電等のエネルギープロジェクトを再着工する。
22)石炭備蓄の能力・水準を高める。
23)原油等のエネルギー・資源備蓄能力を強化する。
(5)産業チェーン・サプライチェーンの安定保障政策
24)市場主体の水道・電気・ネット等の使用コストを引き下げる。
25)市場主体の家屋家賃の一時減免を推進する。
26)民間航空等のコロナの影響がかなり大きい業種・企業の困難緩和への支援を強化する。
民間航空向け緊急貸出を1500億元増やし、航空業の2000億元の債券発行を支援する。
旅客の国内線・国際線の便数を秩序立てて増やし、外国企業従職員の往来に便宜を図る措置を制定する。
27)企業の操業再開・フル生産政策を最適化する。
「ホワイトリスト」の企業へのサービスを整備する。
28)交通・物流の円滑保障政策を整備する。
貨物輸送の円滑を保障し、コロナのリスクが低い地域の通行制限を廃止し、不合理な高さ制限の規定・料金徴収を一律廃止する。
旅客・貨物輸送の運転手等の異なる土地でのPCR検査について、地元と同待遇の無料政策を享受させる。
29)物流中枢・物流企業への支援を統一的に強化する。
30)重大外資プロジェクトを早急に推進し、外資を積極的に吸収する。
(6)基本民生保障政策
31)住宅公的積立金への一時支援政策を実施する。
32)農業からの移転人口と農村労働力の就業・起業支援政策を整備する。
仕事を与えて金銭援助に代える施策を強化する。
33)社会民生の最低ライン保障措置を整備する。
情況を見ながら適時、社会救済・保障基準を物価上昇とリンク・連動させるメカニズムを始動する。
失業保障、最低生活保障、困窮大衆の救済等の政策をしっかり行う。
(4)全国経済大基盤安定テレビ電話会議(5月25日)
10万人が動員され、李克強総理が重要講話を行った。彼は経済の現状について、「3月とりわけ4月以降、雇用・工業生産・電力使用・貨物輸送等の指標が顕著に低迷し、一部の方面と特定の範囲で2020年のコロナの深刻なダメージの時よりも困難が大きい」とし、「今は、年間の経済動向を決定づけるカギとなる節目にあり、最適の時をしっかり捉え、経済の正常な軌道への再回復推進に努力しなければならない」という厳しい認識を示した。
そして「市場主体の困難緩和支援、雇用の安定・拡大等の政策で、打ち出せるものは全て打ち出さなければならない」と、地方に号令をかけたのである。
この会議は、以下の点で内外から注目された。
第一に、この会議は国務院の単独開催で、10万人が大動員されたことである。これまでも、2008年、四川大地震の発生から1カ月がたった6月に、中央・地方責任者会議が臨時開催され、経済政策の方向性が議論されたことがあった。しかし、これは党中央と国務院の共催であり、毎年12月に開催される中央経済工作会議も党中央・国務院の共催となっている。ところが、この会議は国務院の単独開催で、李克強総理の独り舞台となっており、経済政策を今は李克強総理が主導していることが内外に明らかとなった。
第二に、この会議で李克強総理が、経済の現状が2020年より悪いとの認識を示したことである。3月・4月の景気の急速な悪化は、徹底した「ゼロコロナ政策」による上海の都市封鎖であることは、誰もが分かっており、彼がこの会議で「ゼロコロナ」に全く言及しなかったことも、李克強総理と習近平総書記の温度差を窺わせるものであった。
(5)その他の李克強総理の動き
①国務院常務会議
上記の国務院常務会議は、経済政策の方針を議論したものであるが、これ以外の会議でも、経済のテコ入れを図る政策が次々に決定された。会議の日付と主たるテーマは、以下のとおりである。これらの政策を集大成したものが、経済安定包括的政策措置といえよう。
3月29日 有効な投資の拡大
4月13日 消費の促進、対外貿易の平穏な発展の促進、実体経済への金融支援(預金準備率引下げを含む)
これに基づき、人民銀行は4月25日、預金準備率を0.25ポイント引下げた。
4月20日 食糧安全保障、エネルギー安全保障
4月27日 雇用の安定、交通・物流の円滑化
5月5日 中小・零細企業、個人工商事業者の困難緩和支援、対外貿易の安定保障・質向上
5月11日 困窮大学卒業生の国家奨学金の利息免除・元本償還猶予、既存資産の活性化・民間投資拡大
6月1日 経済安定包括的政策措置の実施加速、困窮大衆への支援強化、
6月8日 市場主体(中小・零細企業、個人事業者等)の事業安定による雇用保障、対外貿易・外資の安定
6月15日 民間投資の支援、中小・零細企業の事業安定、企業に対する規定違反の費用徴収の取締り
6月22日 食糧生産の安定、自動車消費の支援
6月29日 有効な投資の拡大、仕事の付与による金銭給付代替
7月13日 雇用の安定・拡大、グリーン・スマート家電の消費支援
②座談会・会議
3月23日 農業農村部座談会
4月7日 専門家・企業家座談会
4月11日 一部地方政府主要責任者座談会
5月7日 全国雇用安定政策テレビ電話会議
5月18日 東・中・西部、東北地方12省政府責任者座談会
5月19日 中国国際貿易促進委員会創立70周年座談会
5月26日 全国「三夏」(夏の収穫・種まき・肥培管理)生産活動推進テレビ電話会議
6月6日 交通運輸部座談会
6月27日 民生部・人力資源社会保障部座談会
7月7日 東南沿海省政府主要責任者座談会
7月12日 専門家・企業家座談会
この中で、注目されたのは、中国国際貿易促進委員会創立70周年座談会である。これには中国駐在の米国・英国・韓国・EU・日本等の商工関係者が招待されたが、その場で李克強総理はゼロコロナ政策について出席者に理解を求めず、「企業の生産・経営を停止させてはならない。我々は引き続き皆さんの幅広い懸念に対して、遭遇する問題の解決に力を入れ、更に優れたサポートを提供する」と述べたのである。これも、前述の全国経済大基盤安定テレビ電話会議と同様、習近平総書記との温度差を感じさせるものであった。
また、専門家・企業家座談会は、これまで習近平総書記も開催していたが、今回は李克強総理に委ねられた形となっている。これも、経済政策の主導権が現在李克強総理に移っていることを象徴するものであった。この時期、党政治局常務委員会も開催されていたが、議題は専らコロナ対策だったのである。あたかも、コロナ対策は習近平総書記、経済対策は李克強総理と、責任の分担関係が成立しているようにみえた。
(その2 へつづく)