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【24-23】中国のスマホメーカーが自動車市場に参入する理由は?(その1)

呉葉凡(科技日報実習記者) 2024年05月17日

小米(シャオミ)が発売した電気自動車「SU7」。

 中国のスマートフォンメーカー「小米(シャオミ)」傘下の「小米汽車」がこのほど、電気自動車(EV)を発売し、人々の注目を集めている。自動車とスマホは一見、全く無縁のように感じるかもしれないが、今ではスマホメーカーが自動車市場に、自動車メーカーがスマホ市場へと、業界の垣根を超えて参入するケースが相次いでおり、市場のトレンドとなっている。

 中国の市場では、一部の新エネ車メーカーが独自開発したスマホを発表し、スマホメーカーもさまざまな形で自動車業界に参入している。「小米」のように自社ブランドのEVを生産するスタイルのほか、「華為(ファーウェイ)」のように自動車メーカーと提携して、スマートドライブシステムを開発するという方式もある。

 では、スマホメーカーが続々と自動車業界に参入するようになったのは、どうしてだろう? また、スマホメーカーの動きは、自動車業界にどんな変化をもたらすことになるのだろうか?

技術・市場・ユーザーがスマホメーカーの自動車市場参入を後押し

 筆者が情報を整理したところ、主要スマホメーカーの大半が自動車関連事業を計画したことがあるという。一部のメーカーは途中で撤退したものの、小米汽車が大きな注目を集めたことにより、今後さらに多くの企業が参入することになるだろう。北京市社会科学院の王鵬副研究員は、「スマホメーカーが自動車業界に参入しているのは、技術、市場、ユーザーの3者による推進の結果だ」と分析した。

 自動車製造業は通常、技術面のハードルが高い業界と見られている。化石燃料車の場合、エンジン、トランスミッション、シャーシーがコアパーツで、それらの研究開発は難易度や技術的ハードルが高く、業界の垣根を超えた参入は非常に難しかった。一方、EVは、バッテリー、モーター、電気制御システムが中核となっており、部品の数は化石燃料車より大幅に減少し、全体の製造における難易度も化石燃料車よりある程度低くなっている。王氏は「これにより、スマホメーカーが自動車業界に参入する機会が開かれた」と分析した。

 市場で巻き起こる大きな追い風の力も無視することはできない。王氏は「スマートEV市場は大きな成長の余地があると見られており、たくさんのスマホメーカーがそのチャンスを掴みたいと考えている」と述べた。4月10日に開かれた中国汽車工業協会の情報発表会によると、今年1~3月における中国の新エネ車生産台数は前年同期比28.2%増の211万5000台、販売台数は31.8%増の209万台で、市場占有率は31.1%に達した。中国ではここ数年、新エネ車の発展を促す複数の政策が打ち出されている。技術、政策、消費のトレンドなど複数の要因が重なり、消費者の間でスマートEVの人気が高まり、市場も持続的に拡大していく見込みだ。こうしたことが、スマホメーカーが自動車業界に参入する追い風となっているのだ。

 また、ユーザー視点から見ると、スマホメーカーは既に強固なブランドとユーザーの基盤を築き上げており、このことがスマートEV市場への迅速な参入と一定の地位構築に役立っている。現在、多くの中国国産スマホブランドには数多くの「忠実なファン」が存在するが、これらのブランドによるスマートEVへの参入は、こうした人々の期待に応えるものと言えるだろう。

その2 へつづく)


※本稿は、科技日報「手机厂商为何纷纷下场造车」(2024年4月15日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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