【25-03】都市地下空間の有効活用に向けて(その1)
沈 唯(科技日報記者) 2025年01月22日

北京地下鉄の新宮駅構内にある古都が描かれた天井。(撮影:李欣)
中国自然資源部(省)はこのほど、都市地下空間の合理的な開発・利用を統一的に計画し、地下空間資源のポテンシャルを引き出すことを目的とした「都市地下空間開発・利用推進の模索に関する指導的意見」を発表した。同意見は、計画による主導、供給メカニズムの最適化、財産権保護の強化、モニタリング・監督・管理の改善などの点について、都市地下空間の開発・利用における政策体系を構築・整備し、都市地下空間資源の配置の最適化と効率的な利用を促進するよう求めている。
北京建築大学北京都市保護・再生研究院のチーフプランナーで、教授レベルシニアエンジニアである張帆氏は科技日報の取材に対し「指導的意見の発表は、都市地下空間の計画的な開発に対する意識を高め、断片化した都市地下空間を統合・利用し、体系的で一体化した発展構造を作り出す上でプラスになる」との見方を示した。
利用のポテンシャルが大きい「4番目の国土」
都市の地下空間は、地下鉄やトンネル、連絡通路といった「地下交通空間」、地下に敷設された水道管や電線・通信ケーブル、ガス管、共同溝を埋設する「都市施設収容空間」、地下商業施設や地下駐車場、地下避難施設といった「建築空間」の3つに分類することができる。
張氏は「中国では都市の地下交通空間と都市施設収容空間において開発の見通しが明るい。近年、中国の複数の都市で地下の鉄道交通が急速に発展しており、地上の交通混雑が大幅に緩和し、都市の交通環境が改善している」と自らの見解を述べた。
華中科技大学建築・都市計画学院の董賀軒教授は「都市の地下空間は規模が巨大で、特別な機能や環境的条件を備えているほか、開発・利用に必要な技術が少しずつ成熟しており、開発の価値やポテンシャルを軽視することはできない。地下空間は領土、領空、領海に次ぐ『4番目の国土』という見方もある。そのような見方の主な根拠となっているのが、地下空間の開発が秘める巨大なポテンシャルであり、明るい見通しでもある」と指摘した。
強靭性や安全性という視点から考えると、地下空間には独特の強みがある。例えば、大半の自然災害の影響を受けず、安定性がより高い。省エネ・温室効果ガス排出削減という視点から考えると、地下環境は冬は暖かく、夏は涼しい。張氏は「多くの地域では、夏の暑い時期に、市民らに涼しい場所を提供するために、遊休防空壕を一般開放している。そのような用途で使われる防空壕は、天然の低炭素・省エネ建築物となり、空調設備がなくても非常に涼しい。多くの大型計算能力設備も、地下や山の洞窟に設置されて稼働している。このような場所は環境条件が安定しており、エネルギー消費量を効果的に削減できる。空間設計という視点から考えると、都市地下空間を十分に開発すると、国土の空間利用効率を大幅に高めることができる」と説明した。
張氏によると、都市の地下空間は非常に貴重な資源だ。中国は国土が広いものの、人口が多く、都市の建設用地が少ない。1億2000万ヘクタールという耕作地のレッドラインと、生態系保全のレッドラインを確実に守る上で、都市地下空間資源の開発・利用には非常に重要な意義があるという。
地下空間の実際の状況把握が必要
都市地下空間の計画における統一的な指導を強化するべく、指導的意見は、都市地下空間資源の総合調査・評価を行い、関連する国土空間計画の制定を推進し、都市の地上・地下空間の複合利用を模索するよう求めている。
張氏は「現在、多くの都市は地下空間の状況をはっきりと把握していない。そのため、まず、地下の状況をはっきりさせてから計画について検討する必要がある。都市の地下空間の全体的な調査と計画を確実に行うためには、既存の地下空間をしっかりと把握し、自然のバックグラウンド条件もしっかりと認識する必要がある」と指摘した。
(その2 へつづく)
※本稿は、科技日報「让城市地下空间用得上、用得好」(2024年11月7日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。