【25-04】都市地下空間の有効活用に向けて(その2)
沈 唯(科技日報記者) 2025年01月23日
都市の地下空間は規模が巨大で、特別な機能や環境的条件を備えているほか、開発・利用に必要な技術が少しずつ成熟しており、開発の価値やポテンシャルを軽視することはできない。地下空間は領土、領空、領海に次ぐ『4番目の国土』という見方もある。
(その1 よりつづき)
現在の都市地下空間の詳しい状況を理解するうえで、テクノロジーは重要な役割を果たす。北京建築大学北京都市保護・再生研究院のチーフプランナーで、教授レベルシニアエンジニアである張帆氏は「都市地下空間のセンサス調査を実施する際、取得したデータを体系的に3Dデータプラットフォームに統合することができる。例えば、浙江省杭州市が構築した都市情報モデル(CIM)基礎プラットフォームは、地上と地下、屋内と屋外を一体化した空間データを通じて、杭州市の都市デジタルモデルを構築し、直感的で可視化された全空間一体化3Dデジタルベースを形成している」と説明する。
地質調査の面では、科学研究の関係部門も地下空間の状況を探査するための新たな技術や手段を積極的に開発している。都市地下空間を開発する際には、現地の地質構造を十分考慮する必要がある。地質構造が比較的安定していて地下空間の建設に適している都市がある。その一方で、海沿いや川沿いにある都市は、土壌の含水率が高く、砂質土の液状化などの状況が存在しているため、地下空間の建設を広範囲で展開するのが難しく、コストが高くなる。
また、都市の地下空間の計画、建設は現地の習慣や気候などの要素の影響も受ける。例えば、冬の寒さが厳しい黒竜江省ハルビン市は、そのような気候に対応し、現地住民の生活の需要を満たすため、非常に早くから成熟した地下空間体系が作り出された。
張氏は「中国は南北や東西で地域の差が大きい。地下空間開発に必要な資金は地上よりもはるかに多いため、各地の実際の条件や需要に合わせ、その土地の事情に適した措置を講じ、総合的に検討する必要がある。一部の超大型都市は、土地資源が少なく、地上の交通が混雑しているため、地下空間開発のコストパフォーマンスが高くなる。このような状況下では、地質条件が良ければ、体系的に計画を立て、都市全体の地下空間を効率的に利用することができる。一方、ニーズが高くない都市は、規定に基づき、地下の避難施設や共同溝などを設置すれば良い。機能性地下空間の開発は、能力に合わせて実施すべきだ」と指摘した。
都市の再開発では「中身」も重視を
中国の都市発展は既に、新規建設と再開発を同時に重視する段階に入っており、都市再開発の重要度がますます増している。張氏は「都市の再開発は『うわべ』だけでなく、『中身』も伴わなければならない。もし、地上の高層ビルがとても華やかなで、都市の庭園もとても美しく見えても、地下空間が乱雑な状態であれば、それは持続可能ではない。都市の再開発は地上と地下を一体化すべきであって、各方面は都市の地下空間計画に対する意識を高め、地下空間を都市再開発計画に組み込む必要がある」と強調した。
中国の国土空間計画は全体計画、詳細計画、関連する特別計画の3種類に分けることができる。地下空間計画は、特別計画類に属する。ただ、一部の都市は、関連する特別計画を制定していない。多くの都市の地下空間開発は、商業エリアやオフィスビル、地下鉄などのプロジェクトに頼っていて、体系的で統一された計画が不足している。
華中科技大学建築・都市計画学院の董賀軒教授は「今後の都市地下空間の開発・利用は、地下・地上の一体化、グリーン化、体系化に向かって発展し、深度地下空間の開発・利用へと次第に舵が切られるだろう。一方で、都市地下空間の開発・利用の先端化、スマート化、グリーン化、融合化発展を推進するためには、政府による主導、テクノロジーによる牽引、法律・法規による保証、公益活動による促進といった、多方面の力を合わせることが必要だ」と分析する。
都市地下空間の大半は現在、断片化した形で存在しており、地下の鉄道交通がネットワーク化しているのを除けば、他の機能性地下空間はネットワーク化していない。張氏は、「地下空間を貫通させ、SF映画のような地下都市を築き上げることができれば、全体的な空間利用効率が大幅に高まる。今後は、異常気象への対応という面でも、地下空間は重要な役割を果たすようになる」と語った。
※本稿は、科技日報「让城市地下空间用得上、用得好」(2024年11月7日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。