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【19-04】産業界と教育界の融合を深化させ「生産企業」を「学習工場」に

2019年5月17日 劉園園(科技日報記者)

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CNC旋盤を見て、ネジの加工技術を学ぶ四川省巴中市南江県小河職業中学機械科の学生

 企業は市場の主体であると同時に、産業界と教育界の融合を深化させ、職業教育と高等教育を実施、または実施に参加する重要な主体となる必要もある。

 中国国家発展・改革委員会はこのほど、教育部(省)と共同で「産教(産業界と教育界)融合型企業建設実施弁法(試行)」(以下、「実施弁法」)を発表し、職業教育と育成体系を整備し、産業界と教育界の融合、大学と企業の連携を深化させ、企業が技術・技能型人材の育成やヒューマンリソース開発における主体的役割を十分に発揮できるよう取り組んでいる。

 なぜ、「産教融合型企業」を構築する必要があるのだろうか? そしてなぜ、構築しなければならないのだろうか? またどのような問題に注意しなければならないのだろうか? こうした問題について、専門家に意見を聞いた。

すでに確立されている産教融合型企業育成の基礎

「産教融合型企業」について、「実施弁法」はその詳細な定義を示している。

「実施弁法」が規定する産教融合型企業とは、産業界と教育界の融合、大学と企業の連携に深く関わり、職業院校や高等学校などの運営、改革の深化などにおいて重要な主体的役割を果たし、その行為が規範化されており、効果が顕著で、大きな社会的価値を生み出し、技術・技能型人材育成の質向上や魅力、競争力の強化などの点で、牽引的役割を果たしている企業を指す。

 国家発展・改革委員会と教育部の関係責任者は、「『産教融合』の深化は、中国共産党第19回全国代表大会(第19回党大会)の報告で明確にされている重大な改革任務」と説明する。「教育の現代化推進加速実施案(2018--2022年)」や「国家職業教育改革実施案」、「産教融合の深化に関する若干の意見」などは、いずれも産教融合の深化と産教融合型企業の構築に関する業務計画を制定している。「国家職業教育改革実施案」は、「2022年までに、企業の職業教育参加に対する積極性を大きく向上させ、幾万もの産教融合型企業を育成する」と明記している。

 南京工程学院の鄭鋒副院長は取材に対して、「現状を見ると、中国の産教融合は、大学の人材や科学技術研究成果の供給水準、産教融合の体制・メカニズムなど、どの面を見ても、向上の余地が大いにある」とし、「現在、中国大学科学研究評価体系は、論文や特許、プロジェクト、受賞など、計量化しやすい指標を重視しすぎているという問題がまだ本質的に解決できておらず、大学の技術の供給と産業の需要にずれが生じる原因になっている。また、大卒者が産業や企業の需要を満たすことができないという問題も依然として際立っており、多くの大企業や特大企業は自分で育成センターなどを設置するなどして解決することができるが、中小企業にその能力はない」との見方を示す。

 楽観視できるのは、産教融合型企業の構築や育成業務を展開するためのしっかりとした産業的基礎が中国にはすでにあるという点だ。統計によると、2017年の時点で、中国の一定規模以上の工業企業(年売上高2000万元以上の企業)数は37万2,700社で、うち、大・中型工業企業が5万8,900社。その他、生産性サービス業と社会性サービス業の企業が数万社ある。

 鄭副院長は、「大学、特に応用型大学を見ると、産業資源のサポートがなければ、高い品質の発展を遂げることは非常に難しい。社会全体から見ても、大学と産業界の融合は、イノベーション型国家建設の重要な支えとなり、非常に重要な戦略的意義がある」と説明する。

大学と企業のウィンウィン実現がカギ

 鄭副院長は、「産教融合型企業構築の大きな意義は誰の目にも明らかで、どのように構築し、どのように実際の効果を確保するかがカギとなる。産教融合のためには、産業界と教育界がウィンウィンの関係になり、特に、実際に参加する企業がそこから益を得ることができるようにしなければならない」と指摘する。

「実施弁法」によると、産教融合型企業の構築は、政府の指導、企業は自由参加で、平等に優れたものを選び、まず構築してから認可する「先建后認」と動的な実施という基本原則に基づいて展開される。国家発展・改革委員会と教育部は関連当局と共同で、産教融合型企業構築業務の政策の統一した計画制定と組織管理、監督実施を担当する。

「実施弁法」は、産教融合型企業を構築、育成する基本条件6項目を列挙している。国家発展・改革委員会と教育部の関係責任者は、「それら基本条件は、大まかに2つの分野に分けることができる。1つは企業が職業学校を運営したり、主要な運営者としてそれを運営したりし、教育機関と企業が連合して学生を募集し育成する現代学徒制、学歴証書+職業技能の等級証書制度の試験ポイントとしてのミッションを受け入れることができ、学生を受け入れて大規模で、規範化された実習、実地訓練を展開できるなど、比較的整った教育機能や教育要素を提供できるという分野だ。もう1つは、企業が大学と実質的な提携を展開し、大学と企業の運命共同体の構築と形成を推進し、資本や技術、知識、施設、管理などの要素への資金投入を拡大し、設備の寄付や必要に応じた人材の育成、実地訓練拠点の共同建設、知的財産権の共有などを通して、学校運営の主体としての役割を果たすなどの分野だ」と説明する。

 加えて、「実施弁法」は、「製造業モデル転換と高度化を積極的に推進する優良企業や現代農業、スマート製造、ハイエンド設備、新世代情報技術、バイオ医薬、省エネ・エコ、新エネルギー、新材料など需要が高い産業の分野の企業、シルバー、家事代行、託児所、健康などの社会分野におけるリーディングカンパニーなどを重点的に構築し、育成しなければならない。また、国の重大戦略に大きく貢献し、技術・技能型人材の需要が非常に高く、ヒューマンリソースへの投資を積極的の拡大し、成長のポテンシャルが大きく、社会責任を果たす点で際立っている企業を優先的に考慮していく」としている。

 鄭副院長は、「人材育成と産学研連携の資源不足の問題のほか、卒業生の就職や科学技術研究成果の応用などの問題を解決できるため、大学側は企業と連携することを強く望んでいる。企業がどれほど深く参加するかが、産教融合が成功できるかのカギとなっている。産教融合型企業の構築のために、税収や政府資金などのサポート政策による誘導のメリットを十分に発揮させ、企業がこのプロジェクトに参加したいと思うように導かなければならない」と指摘する。

 構築・育成・認可された産教融合型企業は、一定のサポート政策を受けることができるという点は良い知らせと言えるだろう。国家発展・改革委員会と教育部の関係責任者によると、産教融合型企業構築情報備蓄バンクに盛り込まれた企業は、省級政府が必要に応じて国の企業が職業教育に参加するようサポートする各種優待政策を実施し、定期的に、追跡サービス、アフターサービスを実行し、既に打ち出されている各種政策を確実に実施しなければならない。産教融合型企業の認証目録に名を連ねている企業には、国が規定に基づいて「金融+財政+土地+信用」の奨励を提供する。

市場と政府の関係のバランスを重視

「実施弁法」は、産教融合型企業の構築、育成業務において、政府と市場の役割の境界を合理的に設置することをある程度考慮している。

 国家発展・改革委員会と教育部の関係責任者は、「企業は市場の主体であると同時に、産教融合を深化し、職業教育、高等教育を運営し、または運営に参加する主要な主体とならなければならない。『実施弁法』の制定において、市場が資源配置における決定的役割を果たすようにしながら、政府もその役割をきっちり果たすことができるようにして、市場と政府の関係のつり合いを取ることを重視している。また、マクロ政策が誘導的役割を果たすようにしながら、省政府のローカライズド・マネジメント統一計画の分野のメリットを発揮させるようにして、中央政府と地方政府の関係のつり合いを取ることも重視している」と説明する。

 そして「『実施弁法』は、平等で、自由参加で、あまねく恩恵という原則を堅持し、構築、育成の条件を明確に挙げ、規定、条件をクリアしている企業は積極的に申請するように奨励している。入口ではターゲットを絞ったサポートは行わず、中国国内で登記、発足した全ての企業に対して、所有制の性質を持つかにかかわらず、同等に対応し、あまねく恩恵のある政策サポートを提供することで、各種市場主体に平等に権利、機会、規則を与え、産教融合政策のカバー範囲を広げる」と説明する。

 このほかにも「実施弁法」は、政策による奨励のターゲットを絞り、産教融合型企業のユニット型奨励対策の制定を検討し、企業が資金を投じて、職業教育を実施し、学生を受け入れて実習、実地訓練を行い、教師を受け入れて実践経験を積むことができるようにし、企業との一歩踏み込んだ提携を展開し、産教融合実地訓練拠点を設置するなどの実際の業務と繋がりを持たせ、認証を企業の「身分」や「格付け」として結び付けることで奨励政策を固定化しないとしている。また、年度報告制度を構築し、動的な認証を実施することで、企業に対して教育に対する資金投入を継続的に拡大するよう奨励する。

 鄭副院長は、「産教融合型企業の構築の過程で、応用型大学が、産業の発展を支えるという重要な役割や産業融合に積極的に参加する熱意、差し迫った需要を一層重視し、それが産教融合に身を投じるよう、さらに多くの優待条件を作り出し、高等教育のバランスの取れた発展を推進しなければならない」と指摘する。


※本稿は、科技日報「深化産教融合 把"生産企業"変"学習工廠」(2019年4月24日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。