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【19-11】湖南省「周光召クラス」を開設―基礎研究領域の「人材プール」を構築

2019年10月21日 俞慧友(科技日報記者)、鄒永星、潘啓沅(科技日報特派員)

 湖南省科技庁、湖南光召科学技術基金会、中国科学院理論物理研究所、湖南師範大学が共同で開催する「厚徳載物、求真創新[1]」光召フォーラムがこのほど開幕した。フォーラムでは、基礎研究人材の基礎力を強化し、基礎学科のハイレベル人材の育成・選抜をサポートするべく、湖南師範大学と中国科学院理論物理研究所が、科学と教育の融合と協同イノベーションを通じて、学部生を対象とした物理基礎研究を行う「周光召クラス」を共同で開設し、学部の段階で、ハイレベルのイノベーション・起業人材を育成する新スタイルを試みることを発表した。

 湖南師範大学物理・電子科学学院には、国家重点学科の「理論物理」、教育部(省)重点実験室の「低次元量子の構造とコントロール」、教育部イノベーションチームの「量子効果とその応用」などの国家級プラットフォームや多くの分野の省級重点プラットフォームがある。同学院はこれまでに、中国科学院・中国工程院の院士4人、国家傑出青年科学基金の受給者14人を輩出してきた。

 同学院の唐東昇院長によると、「周光召クラス」を開設することで、同校と中国科学院が長期にわたり連携してハイレベル物理人材育成や基礎学科の優秀な学生育成などを実施する基礎ができるとしている。「周光召クラス」は現在、主に、量子光学・量子情報、凝縮物質物理、重力・宇宙学、場の量子・粒子物理の4つの分野を基礎に、「学業指導教官制」を採用し、国家級人材と省部級人材を、1∶1の比率で、学業指導教官、科学研究指導教官、生活指導教官に配置している。カリキュラム計画においては、物理学中心のカリキュラムを深化させるほか、専門の実験、イノベーション・模索実験、課外科学研究実践など、実践を強化している。その他、材料物理の序論、マイクロ電子の概論などを盛り込むなど学科間カリキュラムを重視し、「プロジェクト制カリキュラム」を実施し、場の量子論の序論などのフロントカリキュラムを打ち出し、大学院生の選択科目の教育モジュールを増やした。さらに、冬休みや夏休み期間中、優秀な学生は中国科学院理論物理研究所、物理研究所、高エネルギー物理研究所、米国ヒューストン大学などに遊学できるよう企画し、優秀な学生が世界最先端の科学研究に触れ、国際的な一流学術グループに溶け込めるようサポートしている。

「周光召クラス」は、理系の学生から約30人を毎年新入生として選出し、ハイレベルの精錬された育成を実施し、将来、物理基礎研究の学界で活躍できる研究者の「人材プール」を構築したい考えだ。年度審査制と動向管理を実施し、「光召奨学金」を設置して、優秀な学生をサポートする。その他、湖南光召科学技術基金会は、特別に「光召イノベーション賞」を設置し、イノベーションにおける成果を出した「周光召クラス」の学生に授与する計画だ。

 周光召氏は、中国の核兵器プログラムに従事し大きな成果を収めた理論物理学者で、中国科学院の院士であり、湖南科学界に大きな影響を与えてきた。1996年、湖南省は「光召科学技術賞」を設置し、同省のために傑出した貢献をした科学研究者に同賞を授与してきた。受賞者はこれまでに62人を数え、うち18人が受賞後、中国科学院、中国工程院の院士に選ばれた。そのため、同賞は「湖南省の院士インキュベーター」と呼ばれている。


[1] 「人徳を高く保って物事を成し遂げ、イノベーションを追求する」の意。


※本稿は、科技日報「"周光召班"湖南開班 打造基礎領域"人才池"」(2019年10月10日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。