日中の教育最前線
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【19-13】試験の「指揮棒」撤廃、受験に対する考え方に変化も

2019年12月20日 陳曦

 教育部(省)はこのほど「中学校学業水準試験出題活動の強化に関する意見(関于加強初中学業水平考試命題工作的意見)」を通達した。中学校の学業水準試験綱要を撤廃し、義務教育カリキュラム標準を厳守し出題するよう求め、標準以外の出題を禁止した。すでに中国の高校段階の試験綱要も撤廃されたため、これは中国の中学卒業試験と大学入学試験の試験綱要がなくなることを意味する。

 中学卒業試験の試験綱要の撤廃については、多くの人が懸念している。多くの保護者は「試験綱要をなくすならば、今後どのような試験が行われるのか」「試験綱要がなければ、教科書のすべてが重点になり、学生の負担がより大きくなるのではないか」「今後試験が難しくなることはないだろうか。最高の教育資源を取得するために、より多くの時間・気力・金銭を費やすべきか」などの疑問を抱いている。試験綱要はこれまで、試験の「指揮棒」とされてきた。この具体的な方針が失われ、多くの保護者が戸惑っている。

 素質教育の推進は、教育改革・発展の戦略的テーマだ。ここ数年義務教育のバランスの取れた発展、小中学生の学業の負担軽減といった教育改革が推進されている。中学卒業試験と大学入学試験の試験綱要撤廃は、一連の改革の一環に過ぎない。表面的に見ると、カリキュラム標準に基づく教育、学習内容に基づく試験内容、開放的で総合的な問題の割合の上昇、標準以外の問題作成を行わないことなどを実現する措置に過ぎない。実際には改革の裏側には、どのような人を育て、どのように人を育てるかという重大な問題がある。

 これまで一部の学校における教育、家庭における教育は、子供に言うことを聞かせることを重視しており、子供の革新的なアイデアへの後押しが不足し、機械的な暗記と反復練習が教育の2つの柱だった。学生の革新的な考え方、あるいは一部の個性的なアイデアは往々にして埋もれてしまっていた。教育改革が実現すべきは、学生の全面的な発展の促進であり、積極的に模索しようとする学生の革新力、問題解決の実践能力を高めることだ。

 試験綱要の撤廃は、すべての学生にとって公平になる。従来のように知識を無理やり暗記する方法に変化が生じ、今後の試験は学生の総合的な素質への重視を強め、記憶力を試す問題を減らし、試験の点数だけで優秀かどうかを決めるのではなく、学生の全面的な発展を重視する。こうすることでこれまでの詰め込み教育の弊害をなくし、学生の総合的な素養を育む重要な方向転換を促す。

 中学卒業試験の試験綱要を撤廃することで、学校・教員・教育・試験などのしかるべき調整が必要になる。多くの保護者も、これまでの詰め込み教育による惰性的な考え方を変えるべきだ。子供にとって最初の、そして一生涯の教師である保護者は、教育改革の大きな流れを前にして、恐れるべきではなく、流れに乗り積極的に改革に対応し、試験の点数ではなく、教育により人を育むことへの変化のきっかけをつかむべきだ。教育は受動的に言うことを聞く「ボルト」を育てるだけではなく、革新を続け社会の進歩を促す「歯車」も育てるべきだ。


※本稿は、科技日報「考試"指揮棒"没了,応試思維也得変変」(2019年12月12日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。