【20-05】大学初のブロックチェーン専門課程開設―知識・実践の教育に取り組む
2020年7月02日 陶玉祥(科技日報記者)、盛利
教育部(省)はこのほど、2019年度普通大学学部専門課程登録・許認可結果を公表し、2019年に成都信息工程大学が申請した「ブロックチェーン工学(080917T)」専門課程が新たに設置を認可されたことが明らかになった。「ブロックチェーン工学」学部専門課程が設置されるのは、これが全国で初となる。
同大学の「ブロックチェーン工学」専門課程関連責任者は取材に対し、「この専門課程は、コンピューターサイエンス・技術の基礎知識や、ブロックチェーン技術基本理論、ブロックチェーンプロジェクト開発方法を理解し、ブロックチェーンシステム設計・実現能力、ブロックチェーンプロジェクト管理・実施能力、実際の応用環境下でのシステム構想・設計・実施・稼働能力を備え、将来的にブロックチェーンプロジェクトシステム設計開発やブロックチェーンプロジェクト管理、ブロックチェーンシステムサービスなどの分野において革新的で中心となる役割を果たせる応用型ハイレベル専門人材を育成することを目的としている」と述べた。
複数学科を跨いだ内容、コンピューター知識が基礎
ブロックチェーンのキーとなる技術はさまざまなコンピューター技術の新型応用モデル革新の結果であり、分散型計算用ストレージやポイント・ツー・ポイント伝送ネットワーク、暗号化アルゴリズム、コンセンサスアルゴリズム、スマートコントラクトなどが含まれ、関わる学科の分野が数多いため、関連する専門課程科目のカリキュラム設計においても、複数学科を跨ぎ、融合させることが欠かせない。
成都信息工程大学ブロックチェーン専門課程の関連責任者によると、ブロックチェーンはコンピューターサイエンス・技術、ソフトウェア工学、サイバーセキュリティ、情報・通信工学、データサイエンスとビッグデータ技術、スマートサイエンス・技術など複数の学科専門課程の理論や技術と関わっており、同専門課程の育成プランを練る際には、学科を横断し、融合させることに特に注意したという。
育成プランによれば、この専門課程にはコンピューター学科基礎知識カリキュラム、ブロックチェーン中核技術関連専門課程基礎カリキュラム、ブロックチェーン専門課程独自カリキュラム、ブロックチェーン業界応用カリキュラムの4つのカリキュラムが設けられている。
成都信息工程大学ブロックチェーン専門課程の責任者は、「もともと複数の専門課程に分散していたカリキュラムをブロックチェーン工学専門課程に統合し、コンピューター学科基礎知識カリキュラムとブロックチェーン中核技術関連専門課程基礎カリキュラムを設置した」と説明する。この責任者によると、コンピューター学科基礎知識カリキュラムには、オペレーションシステムやデータ構造・アルゴリズム、プログラミング、データベースシステム、コンピューターネットワーク、ソフトウェア工学などが含まれ、ブロックチェーン中核技術関連専門課程基礎カリキュラムには、暗号学や分散型システムとストレージ、情報セキュリティ、P2P(ピア・ツー・ピア)ネットワーク、分散合意アルゴリズムなどが含まれるという。
また、ブロックチェーン工学専門課程独自カリキュラムは新たに開設したもので、ブロックチェーン原理やコンセンサスアルゴリズム開発、スマートコントラクト開発、ブロックチェーン応用開発、ブロックチェーンアルゴリズム、ブロックチェーンプラットフォーム開発、ブロックチェーン仮想マシンなどが含まれる。さらに、ブロックチェーンのベースとなる技術だけでなく、ブロックチェーンアーキテクチャーや業界応用開発も分かる複合型ハイレベル専門人材を育成するため、企業と連携してブロックチェーン業界応用カリキュラムも開設した。これには金融やサプライチェーン管理、公共サービス、医療、教育・雇用なども含まれているという。
産学が連携し、業界ニーズとマッチング
近年、政府から業界に至るまで、ブロックチェーン技術と応用の発展を非常に重視しており、工業情報化部や中国通信研究院、騰訊(テンセント)、求人サイトの智聯などが、ブロックチェーン技術やブロックチェーン業界応用、ブロックチェーン人材ニーズに関する白書を相次いで発表し、それぞれブロックチェーン技術、ブロックチェーン応用、人材ニーズの現状と発展見通しについて分析を行った。
全国初となる「ブロックチェーン工学」専門課程には、多くの面で参考にできる経験上のモデルケースがなく、どのように教学資源を配置して社会の人材育成ニーズに応えるかが、検討しなければならない問題となった。
同専門課程の責任者は、「本校は中国で初めて『ブロックチェーン工学』専門課程を設置した大学だが、コーネル大学やマサチューセッツ工科大学、スタンフォード大学、清華大学、北京大学を含む多くの国内外の大学は早くからブロックチェーン関連カリキュラムや実験室を開設している」と述べた。この責任者によると、国内外ブロックチェーン教育の先行者の経験と、産業・業界専門家、同大学の既存関連専門課程の専門家のアドバイスが、この専門課程を立ち上げるうえで重要な参考となったという。
成都信息工程大学は長きにわたってIT人材の育成に焦点を当ててきた。同大学ブロックチェーン工学専門課程の責任者によると、大学は様々な専門課程から多くの講師陣を集め、優れた実験計器設備を蓄積し、学科の専門課程をサポートするうえで確かな基礎を打ち固めてきたという。
同責任者は、「講師陣の構成がより豊富で、校内の各学科の専任講師もいれば、研究機関や業界企業との兼任講師もいる。特に業界企業から講師を招いた実践的な教学指導により力を入れている」と強調した。
同責任者は、「ブロックチェーン工学専門課程の設置は、新たな科学技術革命と産業変革が地方大学の人材育成に対して突き付けているニーズと挑戦に主体的に対応し、国と地域の産業発展戦略に奉仕する重要措置だ」と話す。また同時に「同専門課程では、新たな工科の設置を重要な足掛かりに、経済ベルトや都市群、産業チェーン配置と緊密に連携し、地域経済社会が産業競争力を高め、発展の新たな原動力を結集するために人材とインテリジェンスの面でのサポートを提供し、より多くの新たな産業・技術・経済分野における応用型・複合型・革新型の高資質人材の育成を加速するうえで重要な探求すべき価値と参考となる意義を持っている」とも同責任者はアピールした。
※本稿は、科技日報「首箇区塊鏈本科専業来了,既教知識也教実操」(2020年3月27日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。