【20-10】AIクラウドプラットフォームが教育・科学研究の「デジタルブレイン」に
2020年10月29日 陳 曦(科技日報記者)、趙 暉、郭道鵬(科技日報特派員)
講師が紹介したケースは非常に高いハッシュレートが必要で、コンピューターの能力が追い付かない場合はどうすればよいのか? AI(人工知能)モデルには大量のデータのサポートが必要で、伝送速度が遅いという問題をどのように解決すれば良いのだろう? ダウンロードしたソフトと互換性がなく、実験が継続できない場合はどうすればよいのか? AI時代の教育や科学研究には新たな課題が山積みだ。そこで、天津大学はAIクラウドプラットフォームの建設に着手し、カリキュラムをスマート調整し、教育・科学研究に「デジタルブレイン」を導入している。
中国政府の次世代人工知能建設の全体計画に合わせて設立された天津大学知能・コンピューティング学部は、天津大学コグニティブ・コンピューティング、データサイエンス、スマート技術・応用などの、先端専門分野の優位性を誇るリソースを集結させている。同学部は人工知能を、日常の授業に取り入れ、CPU、GPUリソースプールを集中的に建設して、学部に所属するコンピューター学院、ソフトウェア学院、サイバーセキュリティ学院、人工知能学院に、統一したハッシュレートプラットフォームである天津大学人工知能科学研究クラウドプラットフォームを提供している。
同プラットフォームは、高性能コンピュータクラスターやGPUクラスター、仮想化クラスター、クラウドプラットフォームを一つにしている。1万ギガバイト(GB)の高速光ファイバーと連結した場合、高性能コンピュータクラスターは、バッチ・モードの科学研究計算を、GPUクラスターはAI推論と演算の科学研究計算をサポートすることができ、クラウドプラットフォームの仮想マシンは初期段階のデバッグおよび小規模な実験授業に用いられるなど、プロジェクトの全ての計算のニーズを満たすことができる。
天津大学知能・コンピューティング学部の王建栄教授は、「私の読唇術の研究を行うにあたり、以前は実験室のメモリーに限りがあったために、500GB以上のデータの多くを泣く泣く消去していたほか、ファイルのアップロードなも何回かに分けて行うしかなかった。しかし、AIプラットフォームを活用できるようになり、大きなファイルをアップロードする時も、帯域幅やストレージの制限がなくなったため、500GBのデータも2時間ほどでアップロードできるようになった」と述べた。
王教授はまた「実験室にはたくさんの高性能GPUカードがあるものの、必要としている学生が多く、トレーニングモデルがあまりにも遅いため、一度の実験を終わらせるのに1週間ぐらいかかっていた。しかし、AIプラットフォームを使ってトレーニングをするようになり、かなりスピードアップし、同じ反復計算の実験ならわずか1~2日で完了できるようになった。モデルの最適化に大いに役立っている」と説明する。
さらに「以前なら、モデルの中間結果をチェックするためには、画像をサーバからローカルにコピーしなければ見ることができなかった。しかし、AIプラットフォームなら、リアルタイムでモデルの結果をチェックすることができる」とも述べている。
このAIクラウドプラットフォームは、学生たちの間で大好評となっている。
「大学3、4年生や毎日実験室にこもりっぱなしの大学院生にとって、実験環境と科学研究プロジェクトの推進は密接に関係している。自分でダウンロードしたオープンソースソフトウェアを使うと、往々にしてプラグインに依存する、システムに互換性がないなどの問題に直面する。同学部の人工知能科学研究クラウドプラットフォームには、ディープラーニングのトレーニング・推論、ビッグデータマイニング、科学技術計算基礎ソフトウェア環境、GPUをサポートできるタスクスケジュールシステムなどがあり、学生らに、業界とマッチした実験環境を提供することができる。このほか、リソースジャンルも豊富で、異なる学院・学部、学校の学生たちのニーズを満たすことができる。直接フレームワーク上でトレーニングをすることも、基礎アーキテクチャに深く入ることもできる」と王教授は説明する。
人工知能科学研究クラウドのバックアップの下、知能・コンピューティング学部では国の重要なテクノロジー特定プロジェクトや国家自然基金、省部級以上の各種プロジェクトなどをスムーズに展開することができるだけでなく、産学研の実用化を一層推進し、大学と企業が連携する先端科学研究、プロジェクトなどもスムーズに進めることができている。
AIクラウドプラットフォームは、同学部内の人工知能、ビッグデータ処理・解析、高性能コンピューティングなどの関連の授業・実験、科学研究を全面的に下支えしている上、プロフェッショナルな運営を通して、クラウドインフラリソースの拡張を実現し、他の学院・学部のサポートも行っている。
※本稿は、科技日報「AI雲平台 為教育科研装上数字大脳」(2020年10月9日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。