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【21-01】帰国希望の海外留学者を多元的な取り組みで「人材誘致」

2021年01月18日 葉 青(科技日報記者)

2020中国留学者広州科学技術交流会で協力プロジェクトは3,800件以上

 海外から帰国したばかりの梁騰博士は、鵬城実験室ネットワーク通信研究センターを選択した。梁さんは記者に対し、「帰国を選んだのは自分の将来的な発展を考えたところが大きい。自分が研究している方向性はネットワークで、問題駆動型の研究分野。中国のインターネット産業は発展が速く、大量の応用シーンが出現している。科学研究にとって非常にいい環境だ」と語った。

 12月18日から19日にかけて、教育部(省)、欧米同学会(中国留学者親睦会)、広州市人民政府が共催し、北京や天津、上海、重慶など29都市(機関)が協力した2020年中国海外人材交流大会及び第22回中国留学者広州科学技術交流会(以下「海交会」)が、メイン会場である広州でオフライン開催された。

 2020年、中国は国内の大循環を主体とし、国内と国際的な2つの循環「双循環」が相互に促進する新発展構造の構築を加速した。新たな発展情勢を前に、海交会は人材の「双循環」の場になることに力を注いだ。統計によると、今回の海交会には、英国や米国など31ヶ国・地域から5,000人以上の海外人材が参加した。オフライン開催となったメイン会場には、全国から88都市の政府代表団、550の大学や科学研究院・研究所、科学技術企業が出展・参加し、調印に至った協力プロジェクトは3,800件以上となり、協力関係締結や除幕式、発表など50件を超える一連のイベントが行われた。

 オーストラリアから帰国した王さんは、海交会の会場に着くとすぐに広州市黄埔区と広州開発区のブースに行き、スタッフと交流し始めた。「中国が青年の起業を支援する最新政策と、海外のプロジェクトがどのように国内で事業化されているのかを知りたかった」と王さん。さらに、「以前からこの区はバイオ医薬産業がとても発展していると思っていたので、税収や賃貸料などの面の情報について詳しく聞きに来た。将来自分のプロジェクトをここで実現できることを期待している」と語った。

 新型コロナウイルス感染症という特殊な状況を前にして、海交会は「オフラインのメイン会場+オンラインによる広範囲コミュニケーション+海外サブ会場」という開催モデルを採用。米国のサンフランシスコ・ベイエリア、日本の東京ベイエリアなどの海外地区では、9ヶ所の海外サブ会場でイベントを行った。3,300人以上の海外人材が、オンラインとオフラインの形式で3,500件近くのプロジェクトに参加を申し込んだ。また、全国の多くの省・市の科学研究機関や大学、企業が2万以上のポストについて人材を募集した。

 出展企業である広州麦侖情報科学技術有限公司の責任者は筆者に対し、「2020年は新型コロナウイルス感染症という特殊な状況を経験して、ますます多くの海外人材が帰国を希望している。求人側である我々企業は、より多くの優秀な人材を獲得することを望んでいる。人工知能(AI)産業の発展がさらに加速するにつれて、企業はアルゴリズム研究、ソフトウェア・アードウェア開発、製品設計面の優秀な人材を差し迫って必要としている」と語った。

 中国科学院院士で琶洲実験室主任の徐宗本氏は自ら琶洲実験室のブースに立ち、「ここには優れた人材が集まっている。いずれも院士や優れた科学者だ。ここでは実力者が勝負し、制度がフレキシブルで成果を出すことができ、サービスが行き届いていて働き甲斐がある」とPRした。

 会場では、企業が有能な海外人材を切に求めているだけでなく、科学研究院・研究所も世界に向けて広く優秀な人材を募集していた。鵬城実験室の鄒鵬常務副主任は、「我々は5Gや6G、光通信などの通信人材に注目している。しかも人材の募集人数は制限していない」と明かした。求人の方向性から見ると、鵬城実験室はネットワーク通信、サイバーセキュリティ、AI方面の人材を差し迫って必要としているようだ。

 帰国して就職したいという多くの海外人材のニーズを満たすために、今回の海交会では市場化されたイベント開催メカニズムを通じて、各市場主体の多元的な参加を働きかけ、企業436社の求人数は2万9,475人に上った。独自の魅力ある海外人材交流の場を構築するという面では、今年新たに金博賞コンテストを導入。金博賞コンテストは、国内で初となる、国が支援し、民間が発起・実施する科学技術イノベーションのトップレベル・コンテストだ。

 中国科学院院士、復旦大学常務副校長の金力氏は、「政府は、政策によるリード、情報発信、制度保障の3つの方向から、プラットフォームの連携、プロジェクトの連携、海外人材の連携などの取り組みをしっかりと行い、ターゲットを絞った競争力ある人材サービス保障を帰国起業者に提供するべきだ」と提言している。


※本稿は、科技日報「海帰渇望帰国 国内多元投入"引才"」(2020年12月21日付3面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。