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【21-02】大学生ボランティアが青少年に科学普及の「ディナー」を提供

2021年03月09日 兪慧友(科技日報記者)、張悦(科技日報特派員)

 フォーミュラ、3Dプリンター、ドローン......中南大学機械電気工程学院(湖南省長沙市)の実験室では、こうしたテクノロジースタイルのハードウェアと興味深い科学実験のソフトウェアを組み合わせて、好奇心と想像力と知的探究心に満ちた青少年たちに科学普及の「ディナー」を提供している。

 子どもたちに科学普及の「ディナー」を提供する「シェフ」は、同学院の麓園青年ボランティアサービスステーションに所属する学生ボランティアたちだ。

 同サービスステーションは40年の歴史があり、たくさんの学生ボランティアが「科学の空を見守る」などの科学的素養を高める活動を通じて、子どもたちの科学的素養を育てる役割を喜んで買って出ている。

 中南大学機械電気工程学院党委員会の黄凱副書記は、「青年科学研究者が青少年の科学普及事業のために尽力するのは、大いに意義のあることだと思う」と述べた。

子どもたちを連れて「科学の門」をくぐる

 中南大学機械電気工程学院には豊富なテクノロジー資源がある。ここには中国工程院の鍾掘院士をはじめとする高水準の専門家チームがあり、トップレベルの科学研究設備がそろい、さらに各種の非常にレベルの高い科学研究イノベーションの成果もある。しかしこれらは、中学・高校段階の青少年にとってみれば「壁の向こうの遠い世界のこと」だった。

 そこで、同学院は大学の「壁」を打ち破り、オープンな態度で、周囲の中高の青少年たちを大学に招き、先端の実験室に迎え入れ、彼らに「科学の門」の中へと一歩足を踏み出させた。

 子どもたちはフォーミュラ実験室では、スポーツカーの設計原理を学び、スポーツカーの製作に参加する。3Dプリンター作業室では、プリンター技術を学び、3D模型を設計する。イノベーション・起業センターでは、研究成果を見学し、起業の物語に耳を傾ける。科学普及読書コーナーでは、科学普及サロン活動に参加し、科学者たちと対面で交流する......

 同大の正門をくぐると、子どもたちは工夫を凝らして設計された、生き生きとした興味深い実験をいろいろ体験できる。子どもたちの心の奥深くには、科学技術の種がそっとまかれる。

 黄副書記は、「青少年のいるところならどこでも、私たちの科学普及活動の活動場所になる」と話した。

 より多くの子どもたちが科学普及教育を受けられるようにするため、同学院はキャンパスの内と外、オンラインとオフラインが協同し連携する「1+N」科学普及の場を構築し、団地や子どもたちの託児教室、小中高校、テクノロジー企業などで科学普及活動を展開し、親しみやすい科学体験活動を通じて、青少年に科学の魅力を伝えている。

 オンラインでは、オンライン科学普及カリキュラムを開発し、オリジナルの興味深い実験動画を公開し、ネットのライブ配信によるライブ公開講義も実施する。

 博才陽光実験小学校の科学技術教員の肖超興さんは、「こうした活動を通じて、科学の授業に対する生徒の興味が高まった。うちの生徒は長沙市の科学技術コンテストでよい成績を収めただけでなく、成果実用化会で成果を披露するよう推薦された」と述べ、同学院の科学普及活動を評価した。

「必要に応じて注文」オーダーメイドの科学普及指導

 このほか、同学院は「プライベードオーダー」サービスも提供する――個々人に合わせてカリキュラムを組み、必要に応じてプランを打ち出し、青少年それぞれに合わせて「サイエンスセット」を作り、そして「自宅まで配達」している。

 サービスステーション所属の学生ボランティアは、中南大学の11学院・18専攻の学生で、専門・学科ごとに得意分野を生かし、学際的融合を通じて、実に多様な「サイエンスメニュー」を作り出し、青少年が「必要に応じて注文」できるようにしている。

 同ステーションの朱璜ステーション長は取材に対し、「サービスステーションは青少年のニーズを踏まえ、毎週80人の学生ボランティアを青少年の自宅へ派遣している。青少年のために『正確に状況を把握』し、学習の不足点に基づき指導するほか、自分の専門で学ぶ内容と結びつけて、科学の教養を高める指導を行っている。たとえば物理を専攻する学生ボランティアなら、逆さコップの実験をして、子どもたちに大気圧の知識を伝える。生物専攻なら、子どもたちを連れて標本採集や自然との交流を行う......」。

 これまでに同ステーションは2,000人を超える学生ボランティアを青少年の自宅に派遣し、サービス提供時間は8,000時間を超えた。

 1滴、1滴の水が、やがて集まり、いつか大河になる。黄副書記は、「私たちは科学研究と人材育成の使命を担うと同時に、社会サービスおよび文化の伝承・イノベーションの重責もしっかり担わなければならない」と述べた。


※本稿は、科技日報「高校志願者為青少年提供科普"大餐"」(2021年1月14日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。