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【23-19】若手テクノロジー人材のポテンシャルをどう活性化させるのか(その1)

劉 垠(科技日報記者) 2023年12月12日

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トウモロコシの根元の成長具合をチェックする若手科学研究者。(撮影:張楠)

 35歳を過ぎた科学研究者も、さらなる高みを目指せるのだろうか? 若手研究者は、どのようにして学術活動と事務的な活動のバランスを取り、重要な科学技術の課題を果敢に担うことができるのだろうか?

 中国共産党中央弁公庁と国務院弁公庁が打ち出した「若手テクノロジー人材の育成・活用を一層強化するための若干の措置」(以下「措置」)が、こうした若手研究者の悩みを解決するかもしれない。措置では、若手科学研究者の科学研究以外の負担軽減に言及し、研究者が国の重要な科学技術の課題や政策決定・コンサルティングにおいて、中心的役割を果たすよう奨励している。

 中国科技部(省)科技人材交流開発サービスセンターの副主任で研究員の陳宝明氏は「今回発表された『措置』は注目点が非常に多く、実務的な措置を数多く打ち出している。例えば、社会に出て間もない若手テクノロジー人材に対するサポート、国家テクノロジー計画プロジェクトにおける若手テクノロジー人材の積極活用、若手テクノロジー人材に対する国家テクノロジー関連政策と国際テクノロジー協力への参加奨励などがある」と説明した。

 これについて、中国科学技術発展戦略研究院の研究員である石長恵氏は「『措置』は無駄がなく充実しており、特に印象深い点が2つある。1つ目は若手テクノロジー人材に対するサポートが強化されている点。例えば、国家自然科学基金が若手科学研究者をサポートするプロジェクトの割合を45%以上に維持していることがある。2つ目は、若手テクノロジー人材が政策決定・コンサルティングにおいて役割を果たすことを打ち出している点で、例えば、各レベルの学会が若手専門委員会を設立し、イノベーション思考や能力を備えた若手テクノロジー人材が中国のテクノロジー発展に対する意見や提案を出し、知恵を提供できるようにしていることだ」と賛同を示した。

30代で「頭角を現す」のが一般化

 衛星測位システム「北斗」や月探査、火星探査といった重要な戦略的科学技術プロジェクトの多くのプロジェクトチームは、メンバーの平均年齢が30代となっており、この点は注目に値する。人工知能(AI)や情報通信といった新興産業の分野でも、優秀な若手テクノロジー人材がすでに技術イノベーションの担い手になっている。

 では、若手科学研究者が30代で「頭角を現す」というのが今後、一般化するのだろうか?

 陳氏は「このこと自体が一般化した現象を示すものだ。航空・宇宙分野は注目度が高く、同分野の若手人材が目立っているのは比較的わかりやすいが、実際には他の科学研究分野においても、若手テクノロジー人材が中心的な役割を果たしたり、主役となることは決して目新しいことではない」と語った。

 中国科学技術協会のデータによると、2019年末時点で39歳以下の若手テクノロジー人材が全体の73.9%を占めている。これは、若手テクノロジー人材が既に中国のテクノロジー人材チームの中心層になっていることを表している。

 石氏は「私が所属する研究チームの試算によると、今後10年以上にわたり、中国では若手テクノロジー人材が主力となり、テクノロジー人材の恩恵を受ける時期になるだろう。テクノロジー人材の恩恵をさらに活用するために、若手テクノロジー人材へのさらなる支援を行う必要がある。『負担軽減行動3.0』に基づき、『措置』では政策支援をさらに強化するとともに、より多くの画期的な措置を打ち出しており、今後、中国の若手テクノロジー人材の育成において重要な推進的役割を果たすだろう」と見解を述べた。

 このほか、「措置」における若手テクノロジー人材の定義も、科学研究の実情やテクノロジー人材の成長パターンに合致したものとなっている。

「措置」の制定に専門家として携わった陳氏は「今の若手科学研究者は基本的に博士号もしくは博士研究員の経験があり、年齢は30代が多い。そのため、今回制定された政策は、45歳以下の層をカバーしているほか、キャリアがさまざまな段階の若手テクノロジー人材にターゲットを絞ったサポートが提供されている」と紹介した。

「措置」では「若手テクノロジー人材が政策決定・コンサルティングおいて、重要な役割を果たすようにしなければならない。例えば、国家テクノロジー計画(特別プロジェクト、基金など)のプロジェクトガイドライン制定専門家グループやテクノロジー計画プロジェクト、人材計画、テクノロジー奨励などの評価・審査を担当する専門家グループのほか、科学研究機関やテクノロジーイノベーション拠点などの成果評価を担当する専門家グループでは、45歳以下の若手テクノロジー人材の割合は原則として3分の1を下回ってはならない」と強調している。

 これについて陳氏は「45歳以下の若手テクノロジー人材は既に、ある程度の科学研究の経験を積んでおり、一定の成果も上げ、それぞれの分野で頭角を現し始めている。そのイノベーションやクリエイトの活力を引き出し、彼らがテクノロジーに関する政策決定やコンサルティングで重要な役割を果たすというのは、ちょうどいい時期だ」と説明した。

その2 へ続く)


※本稿は、科技日報「全方位多角度激发青年科技人才潜力」(2023年9月25日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。