【24-11】華南理工大学、ソフトマター科学のハイレベル人材を育成(その1)
葉 青(科技日報記者) 余錦婷(科技日報通信員) 2024年06月26日
華南理工大学先端ソフトマター学院での研究教育の様子。(画像提供:華南理工大学)
中国教育部(省)がこのほど発表した「2024年普通大学学部専攻科目リスト」には、24の新しい専攻が追加されている。そのうちの一つがソフトマター科学・工学で、華南理工大学が中国で初めてその設置を申請した。
ソフトマターとは何か? なぜ、ソフトマター科学・工学専攻を設置する必要があるのか? 関連専攻の人材はどのようにして育成されるのか? こうした疑問の答えを得るべく、華南理工大学を取材した。
専攻は幅広い分野に及ぶ
「ソフトマター」という概念は、ノーベル物理学賞受賞者であるピエール=ジル・ド・ジェンヌ氏が1991年に初めて打ち出したものだ。
華南理工大学先端ソフトマター学院の王林格副院長は「ソフトマターとは、固体と理想流体の中間状態であり、ソフト凝縮物質とも呼ばれている。これらの物質は通常、巨大分子または分子の大きな集合で、ポリマーや液晶、生体系物質などが含まれるがこれらに限らない。ソフトマターが関係する学科分野は物理や化学、生物、材料など幅広い」と説明した。
ソフトマターは、ここ20年ほどで誕生した新たな科学分野として、国際学術界から非常に注目されている。世界の多くの著名大学・研究機関が相次いでソフトマター研究室や研究センターを設立し、研究チームが急速に増え、研究成果が次々と生まれている。
従来のようなマクロからミクロ、簡単から複雑へと進む科学分析方法などとは異なり、ソフトマターの科学研究は全体性をより強調しており、各種古典的学問分野の相互補完性を活用して、マルチスペース、マルチタイムスケール上の構造、運動の多様性を研究し、物質システムの複雑性、不安定性、非平衡性の考察に注力している。
王氏は「ソフトマターの産業分野における応用拡大や、新エネルギー、新型ディスプレイといった製品の性能改善は、ソフトマター科学の発展と新材料のサポートが必要不可欠だ。ソフトマター科学・工学専攻は、新興産業や時代の必要性によって誕生した」と紹介した。
さらに「以前は、異なる学科や応用ツールに基づいて専門を分けていた。しかし、時代の発展に伴い、このようなスタイルでは、基礎理論と革新的材料の実践をうまく結び合わせることが難しくなり、最先端の革新的技術の発展ニーズを満たすことができなくなってきた。ソフトマター科学の発展を加速させるために、学際的科学研究を展開し、学科間の融合を促進するというのが必然的な流れとなっている」との見解を述べた。
ソフトマター科学・工学専攻は、新興の学際的学科として、統一された科学的観念を通じて、異なる構造や機能を持つ材料またはシステムの共通性を認識することで、科学や工学の進歩を促すことが目標となっている。具体的に言えば、同専攻は新材料や新エネルギー、生命・健康、情報技術、先端設備、航空宇宙テクノロジー、カーボンニュートラル、量子情報などの先端分野に及んでおり、関連産業と業界のニーズを基礎として、ソフトマターの設計・合成、マルチスケール構造の調整、機能・スマート先進材料開発の科学基礎・材料工学化技術について、将来を見据えた研究と技術革新を展開することを目指している。
王氏は「同専攻は、国や業界の発展動向をしっかりとキャッチアップし、国家重要戦略と粤港澳大湾区(広東・香港・マカオ・グレーターベイエリア)の経済発展に合わせて、現在と将来のテクノロジー発展ニーズを満たす材料系専攻人材を育成する」と明らかにした。
(その2 へつづく)
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※本稿は、科技日報「华南理工大学:培养软物质科学高水平人才」(2024年5月8日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。