【24-12】華南理工大学、ソフトマター科学のハイレベル人材を育成(その2)
葉 青(科技日報記者) 余錦婷(科技日報通信員) 2024年06月27日
ソフトマターとは何か? なぜ、ソフトマター科学・工学専攻を設置する必要があるのか? 関連専攻の人材はどのようにして育成されるのか? こうした疑問の答えを得るべく、華南理工大学を取材した。
(その1 よりつづき)
人材のポテンシャルを喚起
ソフトマター科学・工学は、華南理工大学が今年新設した学部専攻であるが、同大学はすでに2016年に華南ソフトマター科学・技術高等研究院を設立していた。
2018年には先端ソフトマター学院を設立。華南理工大学広州国際キャンパスの第1弾として建設された新工学系学院の一つとなった。
2023年、ソフトマター学科を基盤とする華南理工大学の「高分子科学」学科が、2023 U.S.NEWS世界大学学科ランキングでトップとなった。
華南理工大学先端ソフトマター学院の王林格副院長は「当学院は、活気あるグローバル化したハイレベルな教育・研究チームが集まっており、教員11人の研究成果が『サイエンス』や『ネイチャー』などの科学誌に掲載されてきた。当学院は世界ランキング100位以内に入る複数の著名大学と密接に協力し、資源を投入して人材育成を支援している」と強調した。
華南理工大学博士課程生の李幸晗さんは「豊富な資源とグローバル化された人材育成スタイルが、先端ソフトマター学院の博士課程で学ぶことにした理由の一つだ。指導教員と共に、単成分巨大界面活性剤の自己組織化による規則正しいメソポーラス材料の調製という研究に従事している。その成果は業界のトップレベルのジャーナルに掲載された」と語った。
華南理工大学の先端ソフトマター学院に新設されたソフトマター科学・工学専攻は、世界でも先進的な「モジュール化」教育理念に基づき、「厚い基盤、高い素質、力強いイノベーション」というスタイルで、理系と工学系を結び付けてハイレベル人材を育成する。同専攻は今後、教員全員が指導教員となる人材育成プログラムを実施し、根源育成、追跡育成、フルプロセス育成を強化すると同時に、「すべての授業を英語で実施」「模範クラス」「学院と書院の融合教育」など複数のスタイルを採用し、現地でのグローバル化を実現する。
光造形3Dプリンターや熱溶解積層方式3Dプリンター、エレクトロスピニング装置、デスクトップ型走査電子顕微鏡、紫外線・可視光線分光器など、華南理工大学・先端ソフトマター学院の学部生向け「創研智造工坊」には、各種大・中型機器がずらりと並び、学生が使用できるようになっている。
同学院の文韜教授は「当学院の専門実践教育システムは非常に整備されている。重要な科学研究成果の一部を応用プロジェクトとして、学部生の模索的実験に転化することで、多くの革新的な実験や実践カリキュラムを開発し、学生にイノベーション意識や自立的探究心、複雑な工学的問題の解決能力が備わるよう育成している。先端ソフトマター学院の大学院生育成システムを基盤として学部・修士課程・博士課程の一貫教育計画を実施し、学部生の中から科学研究のポテンシャルを秘めた予備人材を選抜、育成している」と説明した。
発展の見通しは明るい
ソフトマター科学・工学専攻に入学するためには、どのような素質と条件を満たす必要があるのだろうか? 王氏は「ソフトマター科学のさらなる発展には、基礎研究の支えが不可欠だ。そのため、基礎学科の知識がしっかりとしている学生は、この専攻で学ぶのに特に適している」と述べた。
今年、華南理工大学ソフトマター科学・工学専攻は、「総合評価」での学生募集に属し、上海市、江蘇省、浙江省、山東省、広東省から学生を募集する。
王氏によると、第3学期から約30人を選抜して「グローバル化全授業英語モデルクラス」で学ばせる。クラスの上位80%の学生は校内で進学する時に、推薦進学できる資格を得ることになるという。
先端ソフトマター学院の2019年度学部生である許昕さんは、大学1年の時に研究グループに入り、課題研究に取り組んだ。そして、大学4年の時に、筆頭著者として科学研究成果を記した論文が国際的ジャーナル「Giant」に掲載された。その成果はセラミックナノファイバー増強多孔質セラミックモノリス材料を調製する新たな方法を示している。その優秀な成績が評価され、許さんは、東京工業大学の全額奨学金を獲得し、現在その博士課程で学んでいる。
王氏によると、華南理工大学ソフトマター科学・工学専攻は、学部、修士課程、博士課程、ポストドクターの一貫した人材育成システムを構築している。学生は卒業後、同大学大学院への進学か、世界トップレベルの大学への進学、科学研究機関での研究を選ぶことができる。また、同専攻の学部卒業生はダブルカーボン(CO2排出量ピークアウト・カーボンニュートラル)や材料科学、エネルギー科学、生命科学、電子情報、ナノテクノロジーといった先端科学分野において、技術研究や商品開発などに従事することもできるという。
王氏は「現代産業における複雑な工程と総合的な性能要求が、新材料や新エネルギー分野の学際的な発展を推進し続けている。当学院は重要プロジェクトに合わせて、学生に対する科学研究訓練を実施しており、学生研究プロジェクトを発足し、国家レベルの学科コンテストと融合させることで、学生に対して良好なイノベーション・起業のトレーニングができるようにしている。また、企業の研究開発者を講義に招いたり、学生のためにさらに多くの実践カリキュラムを設置する計画もある。ソフトマター科学・工学は明るい発展の見通しを持っており、当学院は国や粤港澳大湾区のために、さらに多くの重責を担える人材を育成していきたい」と語った。
関連リンク
※本稿は、科技日報「华南理工大学:培养软物质科学高水平人才」(2024年5月8日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。