【24-15】「新しいタイプの研究型大学」深圳理工大学の設立が承認(その1)
羅雲鵬(科技日報記者) 2024年08月22日
2024年6月、深圳理工大学で開催されたキャンパスオープンデーのイベントに参加した学生と保護者。(画像提供:深圳理工大学)
約6年に及ぶ準備期間を経て、中国教育部(省)はこのほど、深圳理工大学の設立を承認した。「教育部による深圳理工大学の設立同意に関する書簡」には「深圳理工大学は新しいタイプの研究型大学として位置づけられ、基礎的および先端的な科学技術研究に注力し、卓越したイノベーション人材を育成する」と明記されている。
「新しいタイプの研究型大学」とあるが、いったいどんな点が「新しい」のだろうか。同大学では、学科の配置や育成モデル、管理体制などが一新される予定だ。
深圳理工大学準備弁公室主任を務める中国科学院深圳先進技術研究院(以下、「深圳先進院」)イノベーション・起業研究院の樊建平院長は「私たちは深圳で先駆的な取り組みを行い、『新しいタイプの研究型大学』を設立した。これにより、中国の高等教育発展の新たな道を切り開いていきたい」と語った。
産業と教育が融合した大学
深圳理工大学は、深圳市光明区新湖街道に位置し、キャンパスの総敷地面積は約80ヘクタールに及ぶ。メインキャンパス第1期として20万平方メートル以上の建物が完成して引き渡され、2024年に入学する学部1期生の学習環境が整った。
樊氏によると、中国を含む多くの国が現在、理工系大学の建設と発展を非常に重視している。これは、理工系大学が国の産業発展や総合的な実力と密接に関連しているからだ。
深圳理工大学は現在、深圳市の重点産業クラスターに焦点を合わせ、まず、生命健康学院、合成生物学院、コンピューターサイエンス・制御工学院、バイオ医学工学院、材料科学・エネルギー工学院、薬学院、計算能力・マイクロエレクトロニクス学院の7つの専門学院を設置。粤港澳大湾区(広東・香港・マカオ・グレーターベイエリア)の発展に貢献する人材の育成を目指していく。
樊氏は深圳先進院でも創設院長を務めた経験がある。深圳先進院は十数年間にわたり、樊氏が筆頭となって、中国を代表する新型科学研究機関として「産学研」(企業・大学・研究機関)の協力メカニズムを持続的に革新し、企業との「横向プロジェクト(大学・研究機関が業界・企業と協力して行うプロジェクト)」を約1200件実施した。業界との協力額は15億元(1元=約21円)以上で、インキュベーションした企業は累計2000社近くに達した。
深圳理工大学は、深圳先進院の人材や研究、産業などのリソースを活用して準備、建設された。樊氏は「深圳理工大学は生まれながらにして産業と教育の融合、科学と教育の融合という遺伝子を持っている」と語った。
そして、「科学研究プラットフォームは、大学の学科の発展と育成における重要な基盤であり、テクノロジーイノベーションの重要な源だ。大学はこれらのプラットフォームを活用して研究プロジェクトを申請し、重要な研究成果を生みだすことができる。また、学生はこれらのプラットフォームを通じて、早期から科学研究に触れ、研究・イノベーション能力を高める機会を得ることができる」と説明した。
同大学は今後、深圳先進院と協力を深め、優位性を補完し合いながら、ハイレベル人材の「人員双聘(複数の役職を兼任する)」制度を模索する。また、同大学の教授と研究院の研究者500人以上が協力し、国が求める優秀なイノベーション人材を育成していく。
(その2 へつづく)
※本稿は、科技日報「蹚出新型研究型大学实践特色路」(2024年6月19日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。