【24-16】「新しいタイプの研究型大学」深圳理工大学の設立が承認(その2)
羅雲鵬(科技日報記者) 2024年08月23日
中国教育部(省)はこのほど、深圳理工大学の設立を承認した。「教育部による深圳理工大学の設立同意に関する書簡」には「深圳理工大学は新しいタイプの研究型大学として位置づけられ、基礎的および先端的な科学技術研究に注力し、卓越したイノベーション人材を育成する」と明記されている。「新しいタイプの研究型大学」とあるが、いったいどんな点が「新しい」のだろうか。
(その1 よりつづき)
学際的アプローチで専門を設立
新しいタイプの研究型大学である深圳理工大学は「理工大学」という名前だが、理学院や工学院などは設置されていない。
深圳理工大学準備弁公室主任を務める中国科学院深圳先進技術研究院(以下、「深圳先進院」)イノベーション・起業研究院の樊建平院長は「深圳理工大学の専門設立は、国のニーズと共鳴している。例えば、バイオ医学工学院は、国際的視野を持ち、産業の発展ニーズを満たすイノベーション型総合人材を育成し、ハイエンド医療機器の国産化を推進する計画だ。また、薬学院はイノベーション力と起業精神を備えた一流の複合型人材を育成し、オリジナルの新薬を開発することを目指している」と説明した。
そして、「各学院の専門設置も独自性がある。例えば、生命健康学院には、生物学部、神経生物学部、スマート学際的科学センター、メンタルヘルス・公衆衛生学部の4学部が設置され、主に脳科学関連の人材育成を行っている。各専門の学生は数学や物理、化学、生物、工学など複数の科目を学ぶ必要があり、これによって学科の学際的融合が促進され、学生のイノベーション能力が高まり、特色ある人材育成の道が切り開かれる」と述べた。
樊氏はまた「大学は今後、深宇宙学院や深海学院、未来医学院、商業テクノロジー学院なども設置する予定だ」と明らかにした。
大学では図書館の書籍の並べ方にも学際的な特徴が反映されている。図書館では「1つの書架に2つの学科」という書籍配置方法が採用された。これは、書架の一つの面に一つの学科の書籍を本のタイトル順に並べ、反対の面には別の学科の書籍が並べるもので、例えば、数学の書籍と体育の書籍が一つの書架の両面に並べられている。その理由について、深圳理工大学準備弁公室の趙偉副主任は「異なる専門的なバックグラウンドを持つ学生らが出会い、共に研究成果を生みだす機会を作りたい」と説明した。
統計によると、同大学では既に院士(アカデミー会員)14人、国家レベル人材88人を含むハイレベルの教員陣が集結している。
「三院一体」の人材育成モデル
人材育成の面を見ると、深圳理工大学は、深圳先進院の育成体系を導入し、「書院、学院、研究院」が連携する人材育成モデルを形成している。
このうち学院は、学科知識を中心とした教育を展開する。また研究院は、科学研究プラットフォームと産業リソースを活用して、実践的な教育の支援を提供する。書院は、学生の総合的な資質向上に重点を置いている。
同大学には既に「曙光書院」と「袁庚書院」の二つの書院が設立されている。書院は、学部生の学術指導教員、業界の指導教員、補助指導教員からなる「3指導教員制」を採用し、中国の国情や大学の実情に合った革新的な現代型宿泊式書院制度を作り上げることを目指している。
趙氏によると、同大学は学生の個性化を支援するため、「コース別育成」という教育体系を構築した。具体的には、1年次は書院を拠点としたリベラルアーツ教育が行われ、学生は3つの異なるタイプの研究室にローテーションで通うことになる。2年次に専門が確定し、3年次には「学術コース、工学コース、起業コース」に分かれて育成が行われる。4年次には研究の実践、業界インターンシップ、イノベーション・起業などが実施される。
趙氏は「学生は週4日講義を受け、1日は研究室で研究を行う。そして、学術教育と素養教育の2種類の成績表をもらうことになる」と紹介した。
樊氏は「将来的には、寮の一つの部屋に異なる学院や専攻の学生が住むようになる。異なる学院や専攻の教員も、同じフロアやオフィスで交流できるようする。また、補助指導教員と学生が同じ場所で生活を共にすることで、学術指導教員や業界指導教員の指導の下、教員と学生がリソースを補完し合い、プロジェクトチームを立ち上げ、さらには企業の『ひな型』を構築することも可能になるだろう」と語った。
※本稿は、科技日報「蹚出新型研究型大学实践特色路」(2024年6月19日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。