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【24-18】国家科学研究機関への支援メカニズムの整備を(その2)

阿儒涵(中国科学院科技戦略諮問研究院研究員) 2024年09月10日

複雑で変化の多い国際情勢や、強国建設・民族復興などの中心的任務の全面的な推進、および2035年までに科技強国を建設するという戦略的目標に直面する中で、中国の国家科学研究機関の支援メカニズムには、資金投入ルートの多様性と断片化、資金の内部配置に対する機関の独自決定権が限られていること、資金投入効果を評価するメカニズムが十分整備されていないことなどの問題が依然として存在しており、さらなる整備が必要となっている。

その1 よりつづき)

重要な要素から資金投入効果を高める

 新たな時代において、新型挙国体制の強みをより良く発揮させ、国家科学研究機関の戦略的科学技術力を十分に発揮させるためには、資金投入メカニズム、研究者の報酬配分メカニズム、および資金投入効果の評価メカニズムなどから着手し、支援メカニズムを整備することで、資金投入効果を高めることができる。

 第一に、国家科学研究機関の組織化されたメカニズムと連携した資金投入メカニズムを構築することである。そして、資金投入ルートを簡素化し、国際的指向性を持つ競争などの資金投入メカニズムの経験を参考にし、現在は競争で獲得する必要がある一部のプロジェクト資金を、直接委託の形で、研究条件を満たし、能力を備えている国家科学研究機関に割り当てる。これにより、機関の安定した支援経費の割合を高めることができる。このような経費の割合を高めることは、経費配分における機関の主体性を効果的に発揮させることができ、組織化された研究活動のための資金的基盤をしっかりと確立し、機関内部の経費配分や評価メカニズムに関する問題を解決するための条件を整えることができる。

 第二に、研究者が安心して研究に専念できる報酬・奨励メカニズムを構築することである。国家科学研究機関の研究者の報酬において主要部分を占める業績給は、主にプロジェクトの間接費用や業績のインセンティブから出ている。この問題を解決するために、研究院(所)の報酬制度改革試行事業を活用し、業績給の補償ルートを拡大し、基本給と役職給が報酬全体に占める割合を高める。

 第三に、予算実績評価を糸口とした国家科学研究機関の資金投入効果評価システムを構築することである。現在は、国家科学研究機関の予算実績評価において、1つの事に対して繰り返し評価が行われている問題や、資金投入効率と投入効果の評価が不足している問題がある。これらを解決するために、予算実績管理の改革要求を確実かつ全面的に実行し、テクノロジー予算実績評価の3E(efficacy、efficiency、effectiveness)理論に基づき、現行の各種科学技術評価の結果を統合し、資金投入効率と効果の評価を重点とした新たな予算実績評価システムを構築し、国家科学研究機関の資金投入効果の問題を解決する。


※本稿は、科技日報「多措并举完善国家科研机构资助机制」(2024年8月7日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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