【24-21】一流科学ジャーナルを作るには一流編集者の育成が必要(その1)
畢文婷(科技日報記者) 2024年11月15日
2024年度中国科学技術協会・科学ジャーナル第2弾プロジェクトの申請が始まった。申請できるプロジェクトには、人材育成などに関するコンバージド・メディアによる発信も含まれている。このほど開かれた第19回中国科学ジャーナル発展フォーラムでは、中国科技部(省)新たな質の生産力促進センターの邢懐浜主任が「世界一流の科学ジャーナルを作り上げるためには、ハイレベルな科学ジャーナル出版人材の育成を加速させなければならない」と語った。
「中国科学ジャーナル発展青書(2023)」の統計によると、2022年末の時点で、中国の科学ジャーナルは計5163種類、ジャーナル従事者は3万6974人だった。計算するとジャーナル1種類当たり、スタッフが7人しかいないことになる。つまり、ジャーナルの原稿依頼・原稿審査、編集・校正、ニューメディアによる発信、マーケティング・発行といった全ての作業を7人でこなさなければということだ。これほど膨大な量の作業をしながら、どのように方向性を定めて、自分のスキルを高め、さらにジャーナルのレベルを高めてジャーナル全体の発展を推進していくのか。多くのジャーナル関係者はこの問題に頭を悩ませている。
キャリアポジショニングの見極め
自分自身のポジショニングを見極めることで、ジャーナル関係者はさらに成長することができる。
「ジャーナルを発行している出版社に入社してから、何に取り組めばいいのか」。「中国激光」雑誌社の楊蕾総経理は、新入社員によくそう聞かれるという。楊氏は「長所を伸ばし、特定のスキルに特化したスペシャリストを育成したいと思っている。当社は若者に、いろんなキャリアアップの道を提供している。若者は自分自身の好みや長所に合わせて選択できる」と説明する。
有科期刊出版(北京)では、各編集者は入社当初から自分専用のキャリアアップファイルを持っているという。同社の銭九紅総編集長によると、そのファイルの内容には編集者自身に対する期待も含まれ、それを作成することで仕事に取り組む意欲を一層刺激している。
ジャーナル「石油掘削技術」の曹耐編集者は「オールラウンダーになるのがキャリアプラン」という。第5回科学ジャーナル若手編集コンテストに参加した曹氏は、編集スキルに磨きをかけ課題をマスターしたほか、人工知能(AI)をジャーナルの作成にどのように役立てることができるかについても研究した。そして、最終的に同コンテストで優勝した。
優勝した曹氏は、石油・天然ガスをテーマにしたジャーナル分野でトップレベルの編集者となった。曹氏は「主管部門が支援を強化してくれるようになって、まず若手編集委員チームを立ち上げた。それは以前からずっとしたいことだった」と話した。
50年の歴史を誇るジャーナルに新しい活力を注入するべく、曹氏は積極的に視野を広げている。自分がまだ知らないことがたくさんあることに気付き、さらに新しい分野の勉強にも打ち込むようになったという。
国際的な視野を広げる
中国の科学ジャーナルのレベルは高まり続けており、ニューメディアのジャーナル発行理念と国際的な視野を持つ一流ジャーナルの人材ニーズも高まり続けている。2019年、中国科学技術協会や財政部(省)、教育部、科技部、国家新聞出版署、中国科学院、中国工程院などが共同で実施する中国科学ジャーナル卓越行動計画(以下「卓越計画」)が始動し、中国が世界一流の科学ジャーナルを作り上げるために強力な原動力を注入している。
「卓越計画」はここ5年、累計で科学ジャーナル438種の育成を支援してきた。うち100種以上は、ジャーナル国際学科ランキングでQ1(上位25%)に入っている。「卓越計画」は人材構築を強化するべく、若手人材支援プロジェクトを設置し、一流編集人材の育成を推進する役割を果たしている。
若手人材プロジェクトの支援の下、「中国科学院院刊」の責任編集者を務める張帆氏は、ジャーナルと科学者のコミュニケーションの方法を革新した。張氏率いるチームは、若手科学者と対話するシリーズ動画「科学の対話・若手は話す」を制作し、若手科学者の研究経験、学問探求エピソード、日常生活などを紹介し、科学者に対する多くの人の固定観念を打破した。
その後、定期的な動画プロジェクト「院刊の視点」が誕生した。張氏によると、これは「論文を映像化する試み」で、このシリーズの「姿を変える山・川:黄土高原が千年前の生態に戻った謎」の再生回数は10万回を超えた。
(その2 へつづく)
※本稿は、科技日報「打造一流科技期刊需培养一流编辑」(2024年9月26日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。