【24-22】一流科学ジャーナルを作るには一流編集者の育成が必要(その2)
畢文婷(科技日報記者) 2024年11月18日
(その1 よりつづき)
世界一流の科学ジャーナルを作り上げるためには、編集者が、国際的な視野を持ち、イノベーションの最先端により敏感にならなければならない。
「90後(1990年代生まれ)」の郭宸孜氏は、ジャーナル界の若い「ベテラン」で、現在Light学術出版センターの副主任を務めている。郭氏は「卓越計画」の若手人材支援プロジェクトで、「サイエンス」誌と提携する中国のジャーナル「Research」の実地研修を選び、Light学術出版センターと提携するシュプリンガー・ネイチャーと意見交換をし、今後の発展の道を探っている。
郭氏は「研修を通して、小さくてもハイクオリティで、強いブランドクラスターを作り上げるという信念がより強くなった。ジャーナル群が連携し、影響力が強い学術活動を実施し、プラットフォームや科学者のグループを作り、国際的な影響力を強化する過程で、単独のジャーナルが『孤軍奮闘』という苦境を避けなければならない」と語った。
Light学術出版センターには、郭氏のような若手編集者がたくさんいる。Lightの創始者である中国科学院長春光学精密機械・物理研究所二級研究員の白雨虹氏は「Lightは全て人間本位で進めている。人を集め、皆の知恵を集結し、皆で力を合わせる。そうすれば、小さくて分散し、弱いものを集めて道を開き、小さくてもクオリティが高く、強いものになれる」と指摘した。
「卓越計画」の若手人材支援プロジェクトや若手編集コンテストなどが、中国の科学ジャーナルの編集者に世界に目を向けたプラットフォームを提供して、無名の彼らが舞台の中央に立てるようにし、一流ジャーナルを作り上げるために貢献している。
リーディング人材の育成
第19回中国科学ジャーナル発展フォーラムで中国科技部(省)新たな質の生産力促進センターの邢懐浜主任は、「総合的に見れば、中国は一流ジャーナルを作り上げるために、急速に進歩しており、一流ジャーナルのハードルを越えたジャーナルも少数ながら存在する。ただ、ほとんどのジャーナルは依然として追走段階にある。中国のジャーナルの共同繁栄を実現するカギは『人』だ」と語った。
リーディング人材は、世界トップレベルの科学ジャーナルを作り上げるためにカギとなる存在だ。中国科学技術協会・学会サービスセンターの研究では、ハイレベル科学者がジャーナル発行において十分に役割を果たすことができておらず、ハイレベル出版管理人材や融合発展人材の不足が深刻であることが分かっている。そのため、ジャーナル発行激励・抑制メカニズムを構築し、育成と誘致を両立しながら進め、国際的な競争力を備えたリーディング人材を育成する必要がある。
「Journal of Magnesium and Alloys」の編集長を務める重慶大学教授で、中国工程院院士(アカデミー会員)の潘復生氏は「編集者はジャーナルが成長する過程において最も重要で基礎となる存在だ。素養や能力が高い科学ジャーナル編集者が不足すれば、中国のジャーナルは期待している発展のレベルには到達できないだろう」と指摘する。
そして「ジャーナル編集者をさらに重要なポジションに押し上げるためには、編集者の育成を重視し、ポスト・待遇、キャリアアップのポテンシャル、ルートなどの面で、ジャーナル編集者が希望を持てるようにする必要がある」と語った。
潘氏はさらに、国際ジャーナルを出版する編集者の育成を強化するよう提案した。
邢氏は、ジャーナル編集者を国の人材計画に組み込み、育成・トレーニング体系、職階の認定方法を最適化し、彼らにさらに多くの指導や奨励を提供し、ジャーナル編集者の達成感や自己肯定感を高めるよう提案した。
ジャーナル管理者は、ジャーナルの出版・運営における中核的な存在だ。中国の出版機関の大半は、小さくて分散している単独発行の経営スタイルで、科学ジャーナルの指導者や管理者の人数こそ多いものの、ハイレベルな複合型管理人材の不足が深刻で、管理の効果が低い状態となっている。科学ジャーナル若手編集コンテストは、単純な編集技術コンテストから、科学編集者、技術編集者、デジタル編集者、運営者などを含む、総合業務コンテストへと発展している。「卓越計画」は優秀なジャーナル管理者の成功例と編集交流を増やし、ジャーナル管理者を発展させようとしている。
関係部門は今後、さまざまな方法でジャーナル発行人材を育成し、リーディング人材やプロ編集者、複合型人材などの育成にさらなる支援を提供する。そうすることで、ジャーナル発行に携わる人が、積極的に視野を広げ、一流ジャーナルの先進的な運営経験に学び、真の意味で「人材によるジャーナルの発展」を実現するよう指導する計画だ。
※本稿は、科技日報「打造一流科技期刊需培养一流编辑」(2024年9月26日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。