【25-14】「AI時代」の科学教育はどう実施すべきか(その2)
呉葉凡(科技日報記者) 2025年09月08日
2023年、中国教育部(省)など18機関が共同で「新時代における小中高校科学教育の強化に関する意見」を発表し、科学教育を強化する取り組みを行い、教育・科学技術・人材における質の高い発展を一体的に推進することを提案した。それから2年、科学教育にはどのような優れた実践例があるのか。科学教育発展の「新たな原動力」をどう作り、科学教育に実効性を持たせるにはどうすればよいのか。複数の学校の校長がそれぞれの経験を共有した。
(その1 よりつづき)
北京市第八十中学の任煒東校長は、グループ運営による科学教育の実践経験を共有した。現在、同校の教育グループには10の小中高校があり、北京市通州区や密雲区、河北省雄安新区、雲南省昆明市、貴州省羅甸県などの学校にも支援している。任氏は、「教育グループの科学教育体系を構築するには、『文化・制度・デジタル化』の面で横方向の連携を行い、科学教育の共通認識を形成するとともに、関連する制度保障を整備し、科学教育のスマートエコプラットフォームを構築する必要がある。同時に縦方向の連携も図り、学校間の連携・接続を着実に行うべきだ」と語った。
任氏は、「当校はまたグループ内でのプロジェクト型学習の研修も行い、教師への指導を提供している。最近、第八十中学教育グループ課程開発センターは国際的な小中高校における工学技術教育をテーマに、少年工学院STEMコースの研修を実施した」と紹介。第八十中学棗営分校の教員である張媛媛氏は、「この研修で、従来の科学教育の限界を痛感した。学んだことを授業に活かし、より面白いプロジェクトをデザインして、生徒の総合力を育成し、グループ全体の科学教育を発展させたい」と述べた。
協働による人材育成:あらゆる力を動員する
教育部(省)など17機関は昨年末、共同で「家庭・学校・社会協働による人材育成『教育連携体』実施案」を打ち出した。「教育連携体」とは、小中高生の健全な成長を目標に、学校を中心とし、地域を主体とし、資源を懸け橋として、家庭・学校・社会の効果的な協働を促す作業スタイルだ。シンポジウムで複数の専門家は、科学教育において、この「家庭・学校・社会協働育成」の役割を十分に発揮すべきであり、学校の拠点を充実させると同時に、社会の力を動員して社会全体を「授業の場」にするべきだと指摘した。
北京市海淀区教育科学研究院の呉穎恵院長は同区での実践経験について、「テクノロジー企業や研究チームが寄付、看板設置、命名などの形で、学校の天文台や気象観測所などの教育施設や場所を建設している。また、海淀区では院士(アカデミー会員)などのハイレベル人材を招き、科学講演会、科学週間、科学祭、科学キャンプなどの公益活動に参加してもらっている。さらに、科学館、児童活動センター、博物館などの科学教育施設に対し、小中高生に無料開放するよう指導・奨励している」と紹介した。
北京市第一〇一中学の熊永昌校長は、同校が近年、複数の研究機関と連携し、人材育成拠点を共同で設立したことを紹介した。そして、「今年3月には、清華大学電子工学系と『物理実験の大学・中学・高校連携・接続育成』活動を実施した。以前には騰訊(テンセント)と協力し、大規模AIモデルの科学技術英才研修キャンプを開催したこともある」と説明した。
広東省広州市黄埔区教育研究院の陸優君院長は、学習の各段階における科学教育協働モデルを紹介した。
幼児教育段階では、黄埔区は家庭と幼稚園の協働による教育課程を構築し、保護者と幼児が一緒に科学教育活動に参加することで、幼児が自ら手を動かす中で科学の魅力を体験できるようにしている。小学校の段階においては、区内の豊富な科学教育資源を活用し、施設と学校の協働による教育課程を構築し、科学教育を地域内の専門施設・拠点などの科学技術資源と結びつけ、生徒に幅広い科学探究の空間を提供している。中学校の段階においては、教育部「基礎教育カリキュラム改革実験エリア」や「広東省小中高校AI応用試験エリア」の優位性を活かし、デジタル・スマート協働による教育カリキュラム群を構築し、デジタル技術を活用したインタラクティブで場面型の授業を開発している。高校の段階においては、卓越した革新人材の育成に焦点を当て、研究と創造を連動させた教育カリキュラム群を構築し、大学や研究機関と協力し、プロジェクト型学習で生徒を革新実験室に導き、大学・高校のダブルメンター体制で科学探究と実践を行い、将来の研究活動の基礎を築いている。
陸氏は、「次のステップとして、黄埔区は引き続き科学教育カリキュラム群を『原動力』として、教育・科学技術・人材育成の体制と仕組みの一体的改革を推進していく」と述べた。
※本稿は、科技日報「人工智能时代,科学教育这样开展」(2025年7月30日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。