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【26-02】生成AIをどう扱うか 清華大学などが利用基準を明確化(その2)

荊暁青(科技日報記者) 2026年01月20日

清華大学や上海交通大学、復旦大学、北京科技大学、中国伝媒大学など複数の大学が、AI活用に関する規定を相次いで打ち出し、教員・学生が責任ある形でAIを利用するためのルールと禁止事項を示している。

その1 よりつづき)

基盤を固め、依存から使いこなしへ

 清華大学教育学院の補助研究員である于済凡氏は、「複数の大学がAI教育応用の規範を打ち出したことは出発点に過ぎず、今後は白書や宣言といった形の文書、あるいは政府当局による統一的な指導原則が示される可能性もある。こうした理念が具体的な教育実践に落とし込まれる過程では、漏斗状の分布を示すと見られている。すなわち、表層では教育における基本的なコンテンツ生成や補助的な質疑応答といった基礎的応用、中層では教員・AI・学生の協働による新たな授業形態の設計、深層では教育の全過程にAIが組み込まれることで起こる破壊的な変革へと向かう構図だ」と語る。

 教員・学生の思考の束縛を取り除き、AIの使い方について率直に議論することが、AIを教育に融合させる重要な前提となる。

 北京大学教育学院の賈積有教授のAI教育授業では、異なる学問分野の学生が日常的にAI教育の実践に取り組んでいる。AIツールを用いた文献分析や文法修正、ツールごとの適合場面の比較などを通じ、実践の中で技術の境界を把握している。また、北京大学では2週間に1度、AIと教育融合に関するサロンを開催し、希望する教員が実践経験を共有し、応用の道筋を議論することで、学際的な経験共有の仕組みを形成している。

 変革の最小単位は、一つの課題設計の調整から始まる。AI時代には、絵画やデザインの手法が根本的に変化し、誰もがデザイナーになれるかのような状況が生まれている。作品の差別化をいかに示すかは、清華大学美術学院の陳楠教授が向き合う課題であり、多くの学問分野に共通する教育上の課題でもある。これを解決するため、陳氏はオリジナルデザイン能力の訓練を教育の中核に据え、課題演習では独自要素を基盤にAIを取り入れた派生的な共同創造を行うよう学生を指導している。

 清華大学の一部のプログラミング科目では、教員が学生に対し、AIを活用した通常より高難度のプログラミング課題に挑むことを求めている。学生はAIが採用したデータ構造の論理や最適化の余地を分析し、報告書を作成する必要がある。この過程において、学生は「AI出力への依存」から「AIツールの使いこなし」への転換を迫られる。賈氏は、「AIは研究、学習、創作において無視できない新たな力だ。基礎的な知識と技能を身につけることが、AIを活用する前提であり、基盤を固めてこそ、技術はより大きな価値を発揮する」と語った。

(参考記事)清華大学、スマート教育プラットフォームを構築

荊暁青(科技日報記者)

 大学の教員や学生がAIを科学的に活用する上での核心は、標準化された枠組みの中で、技術が教育の質的向上と研究のブレイクスルーに寄与することにある。

 現在、清華大学では教育学院、計算機科学・技術学部、教務処などが学際的チームを組み、MAIC教育マルチAIエージェントプラットフォームを基盤として、AI教育の道筋を模索している。

 MAIC教育マルチAIエージェントプラットフォームは、大規模言語モデルを基盤とし、教員、補助教員、学生など複数のAIエージェントを備え、高い臨場感と設定可能な学習環境を構築している。このプラットフォーム上で展開されるマルチAIエージェント協同授業では、人間の教員が新たな授業の「指揮者」へと役割を転換する。AI教師が知識を正確に伝え、性格設定の異なるAI学生が教室の雰囲気を活性化し深い議論に参加し、AI補助教員が学習規律の管理とプロセスのフィードバックを担う。計算機科学・技術学部の劉知遠副教授はこのプラットフォームを活用し、「汎用AIへの道」という科目を開講。「AIがAIを教える」モデルを通じて、学生にAI利用の価値と境界を実践的に理解させている。

 現在、同プラットフォームの登録者数は8万人を超え、国家スマート教育プラットフォームに公開されて半年余りで、すでに300人以上の教員がアカウントを開設しており、教員配置の偏りという課題の緩和にもつながっているという。

 教育支援プラットフォームの構築だけでなく、AIは学生育成プロセス全体の強化においても大きな可能性を秘めている。

 清華大学学生学習・発展指導センター副主任の陳世鎏氏は、「当センターが『清小搭+AIエージェント広場』を基盤に、スマート人材育成の新たなモデルを構築している。一方で、『清小搭』は清華大学が全学の教員・学生のために開発した多機能スマート学習パートナーとして、学内専用知識ベースに接続し、学業評価、成長レポート、研究指導教員のマッチングなど『一人一人に合わせた』個別サービスを提供している。他方で、清華大学はAIエージェントコンテストを開催し、共同構築プラットフォームを整備することで、教員・学生のみならず学内各部門の参加を促している」と説明した。

 同大学教育学院の補助研究員でMAIC教育マルチAIエージェントプラットフォーム開発責任者の于済凡氏は、「AIを活用した教育実践の探求には、全方位・全プロセス型のAI人材育成エコシステムの構築が必要だ。AIの支援によって、地域や学校間の教育資源格差は徐々に縮小し、すべての学生が異なる教育段階や授業の前後・最中といった各段階で、自身のニーズに合った個別化された学習環境を得られるようになるだろう」との見方を示した。


※本稿は、科技日報「多所高校为人工智能亮起"红绿灯"」(2025年12月10日付)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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