『縁遇恩師 ―藤嶋研から飛び立った中国の英才たち―』後記
中国総合研究交流センター(CRCC)を設立して11年。その間ずっと、藤嶋先生のご指導を仰ぎ、東京理科大学学長にご就任になるまでは、CRC(現CRCC)の センター長として直接のご指導を頂きました。
藤嶋先生は、東京大学大学院時代、光触媒を発見、研究を継続、大きな成果をあげられた日本で最も著名な研究者であります。光触媒は日本中、世界中で研究されていますが、その成果は、多くの製品となり、日 本経済、世界の経済に貢献されています。東大教授退任後、神奈川科学アカデミー理事長、東京理科大学学長を務められ、研究指導者として、また経営者として卓越した能力を発揮され、日本、世界の学術界、教 育界に多大な功績を挙げられています。
内外から数々の著名な賞を受けられ、国内では、紫綬褒章、文化功労章、そして、本年度、日本国内最高の栄誉、文化勲章を天皇陛下から、授与されました。また、毎年、ノーベル賞発表の時期になると、受 賞有力候補者として新聞紙面などをにぎわしています。
藤嶋先生は、東大教授時代から、中国からの留学生を育て、子供のように可愛がり、心配し、大変なご苦労をされ、その成長を楽しみにされてきました。私も、何度かその場面に遭遇し、藤嶋先生の偉業をしり、心 から尊敬してきました。
中国人のお弟子さんを支援するために、中国で続けてこられたシンポジウム。私も、何回か参加させて頂きましたが、日本からも、百人近い参加者が集まります。中 国からの参加者を含めると大規模なシンポジウムでした。学術的にも、中国のお弟子さんたちにとって大いに力づけられたことと思いますが、ご家族や、孫弟子さんたちも参加、藤嶋先生の明るいお人柄も相まって、フ ァミリーパーティのようでした。日本のお父さんを迎えて、嬉しくてしようがない人たちの…。
このパーティが最後になるのを機に、先生のご苦労とご功績を少しでもご紹介できたらと、CRCC米山春子参事役に、本にまとめるようお願いしました。藤嶋先生得が真心を持ってお弟子さん達に貢献し、お 弟子さん達が心から感謝し、藤嶋先生を慕う原稿を拝見して、涙が出ました。
当座の生活費用を用立てる、研究と生活がうまくいくように、東大近くや神奈川にアパートを建てる、手続きのために大使館に出向く、ご自宅に招く、等々愛情にあふれた細かい配慮の数々が紹介されています。そ して中国で研究活動を続け、活躍できるように、積極的に帰国を促し、機材を送り、訪問し、激励する努力を続けられる様子も。
さらに陳萍先生や劉忠範先生など、藤嶋先生の精神を見習い、後輩中国人研究者を献身的にサポートする姿も感動的です。
このシンポジウムもお弟子さんたちにとっては、さぞ、心強い支援だったと思います。まだ、貧しく、若く、地位が低かったお弟子さんたちのために、日本から、大 挙して優秀な研究者や企業の人たちを引き連れての参加。中国お弟子さんにとっては、藤嶋先生の愛情と努力を、さぞ、心強く再確認し、感謝されたことと思います。この最後のシンポジウムを、日 本政府が讃えお祝いするように、藤嶋先生は日本最高の栄誉、文化勲章を授与されました。
中国のお弟子さんたちは、3人の科学院院士を含め、中国のみならず、世界のリーダーに育っています。藤嶋先生とお弟子さんたちの人生は、ハッピーエンディング!
藤嶋先生の長年のご努力、お弟子さんたちの長年のご努力に、心からのお祝いを申し上げ、これからもますます発展されますよう祈念申し上げます。