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【20-014】いつも通り訪れた春―中国新型コロナ防疫リポート(7)

2020年07月02日

楊保志

楊保志(風生水起);広東省科技庁科技交流合作処副調研員

河南省潢川県出身。入学試験に合格し軍事学校に入学。26年間、軍務に就き大江南北を転戦し、その足跡は祖国の大好河山に広くおよび、新彊、甘粛、広東、広西、海南などの地域で銃を操作し弾を投擲した。メディア、組織、宣伝、人事などに関する業務に長年従事し、2013年末、広東省の業務に転じた。発表した作品は『人民日報』『光明日報』『中国青年報』『検査日報』『紀検監察報』『法制日報』『解放軍報』『中国民航報』などの中央メディアの文芸・学術欄に、また各地方紙、各軍関連紙軍兵種報紙にも掲載され、『新華文摘』『西部文学』『朔方』などの雑誌や、ラジオ、文学雑誌にも採用され、"中国新聞賞"文芸・学術欄銀賞、銅賞をそれぞれ受賞し、作品数は500篇に迫る。かつては発表を目的に筆を執っていたが、現在は純粋に「自分の楽しみ」のためとしている。

 春の訪れの足並みが新型コロナウイルスの流行で遅くなることはなかった。広州は元々「花の都市」で、四季を通じて、いろんな木々が花を咲かせ、一年中、多くの観光客で賑わう。では、新型コロナウイルスが流行した今年は、広州にはいつもと違う春が訪れるのだろうか?

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真っ赤な花を咲かせる広州を代表する樹木・キワタ

 今年の立春は2月4日。春節(旧正月、今年は1月25日)に合わせた連休が終わって間もなくキワタが開花し始め、続いて、キリシマツツジ、ハクモクレン、スイレンなどが続々と花を咲かせた。広州では一年を通じて四季折々の花を見ることができる。その頃、政府職員が出勤していたほかは、一般企業の従業員や事業機関の職員も自宅待機して、外出は控えるように指示されていた。1~2日、巣ごもりするならまだしも、1週間となると外に出たくなるものだ。そして、2~3週間ともなると、もっと遠くへ行きたくなる。

 ある日本人の友人に「春節期間中、広州はロックダウンしたと聞いたが、本当か?」と聞かれたので、「していない。広州以外からの流入症例が最も多い時も、広州はロックダウンしなかった」と答えた。

 またその友人に、「新型コロナウイルス感染拡大がとても深刻だったのに、こんなに早く外に出て怖くないのか?」と聞かれたので、「怖いと言えば怖いが、マスクの着用や手洗い励行をするし、消毒液を随時携帯し、公共の物に触れない、路線バスの利用はなるべく控える、帰宅後はすぐに服を洗濯するなど必要な予防策を講じている」と答えた。

 科学的な予防策や政府の対応、加えて理性に基づいた認識、それに窓の外に見える春への憧れが、思い切って大自然に向かう最大の原動力になったのだ。

 新型コロナの流行中も、私の家族は週末になると、いつも外出していた。始めの頃は、家の近所や珠江のほとり、花城広場などに行き、その後、一般開放されている公園へ行くようになり、さらに、車で広州の周辺の地域にも行くようになった。とにかく、広々とした所や人の少ない場所、鄙びた場所などに行き、新型コロナウイルス感染者がいる所へは行かなかった。

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(左上)広州市孫中山記念堂の庭で花を咲かせるキワタの木 (右上)広州中山記念堂の敷地で例年通り花を咲かせるペチュニア、ブーゲンビリア (左下)広州華南植物園の池で花を咲かせるヒツジグサ (中央下)広州華南植物園内で花を咲かせるツツジの木 (右下)広州天河公園内で花を咲かせるキバナノウゼンの木

 「花の都市」と呼ばれるだけあり、広州の人々は公園に行くのが大好きだ。新型コロナの流行中、安心して公園に来てもらおうと、多くの公園が感染防止対策を講じていたので、人々も安心して公園に行くことができた。広州越秀区政府が管理する公園を例にすると、各公園の管理当局が関連の対策を講じた。その例をいくつか紹介しよう。

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(左上)広州二沙島公園で見頃を迎えたヒメビジョザクラの花 (右上)広州二沙島公園で花を咲かせるヒエンソウ (左下)広州の至る所でひときわ目を引く花を咲かせるハナズオウを見ることができる (右下)美しい花を咲かせるハナズオウの前でマスクをして撮影した写真を見ると特殊な春だったことが分かる

環境面:公共の場の出入口やトイレには十分な数のハンドソープが置かれ、トイレの水道の水がきちんと出るように管理された。公共のものや人が触る場所などの洗浄、消毒を強化し、風通しを良くしていた。

入園者:各公園の入口でサーモガンを使って、発熱している人をその場で発見し、入園を禁じ、さらに病院に行くよう忠告していた。入園後、マスクを外し、忠告に従わない人は、公園から退出を求められた。また、パトロールを強化し、公園内で人がたくさん集まったり、広場ダンスをしたりすることがないよう厳しく目を光らせていた。

日常の消毒:清掃をメインにして、補助的に予防性の消毒を加え、消毒が過度になることがないように注意していた。トイレの洗面台、ドアノブ、電話機、スイッチ、ポットの取っ手、洗面器、便座など、人がよく触る所の表面は、塩素を含む消毒剤で拭き、30分してから、水拭きしていた。

 私たち家族はたくさんの公園に行った。公園内にはたくさんの公共の場があり、特にトイレには、ハンドソープや消毒液が常に用意され、断水やトイレットペーパー切れになっているところはなかった。そして、全てのトイレに清掃員がいて、清掃を行い、全体的に衛生的な状態が保たれていた。

 こうしたことは、政府が周到な対策を講じていることを裏付けていると同時に、政府が規定を厳格に実行しており、しっかりと監督していることもわかる。また一方で、新型コロナの流行中、多くの市民の民度が大きく向上し、特に衛生習慣が大きく改善したことをも物語っている。

 政府は毎日、新型コロナに関する最新情報を発表している。4月12日を例にすると、4月13日0時の時点で、広州で報告された、広州以外からの流入症例が119人、それに関連した症例が15人いた。退院者数は累計で96人、病院で治療を受けている人は38人だった。また、広州現地の感染者数は348人で、退院者数は累計で345人、死者は1人、現在病院で治療を受ける人は2人だった。

 新型コロナの情報を見ると、当時、広州の感染者数は主に流入症例で、現地症例は非常に少なかったことが分かる。そのため、私たちは心配せずに公園に遊びに行くことができたのだ。加えて、科学的な予防策が講じられ、良い衛生習慣が根付いている上、政府がウイルスの拡散を封じ込めることができると信じていた。総じて言うと、「春はとても近くまで来ていたのに対して、ウイルスは遠い存在になっていた」。

 公園では、主に運動をしていた。バトミントンをしたり、散歩をしたり、ジョギングをしたり、サイクリングをしたり、科学の実験をしたりし、春の訪れを満喫することができた。

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(左上、中央上)公園でサイクリング (左下)3家族でバトミントン大会 (中央下)自転車をネット代わりにしてバトミントン、(右)空に向かってジャンプ

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(左上)武術・太極八卦掌の練習をする男の子たち (左下)珠江のほとりでストリートミュージシャンの歌を聞こうと人が集まっている。集まってはいけないと言われていないの? (右)ドローンを飛ばして科学の知識を勉強

 2月4日は、二十四節気の一番目・立春で、雨水、啓蟄、春分、清明と続き、そうした節気は全て春と関係があり、厳密に言えば、その期間はずっと春で、5月5日の立夏までの約3ヶ月間春は続く。

 新型コロナの流行中、子供たちは朝から晩まで「巣ごもり」し、オンラインで授業を受けていた。そして、そばにいてくれる大人もいなかったため、外に出て遊ぶことが本当に必要だった。そのため、週末や祝祭日になるたびに、私たちは子供を連れて外出し、遊びに行った。最初は家の近くで遊び、少しずつ遠くへ行くようになった。

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(左上)広東省江門市にある野池で釣り (上中央)広東省肇慶市西江のほとりで (左下)広東省仏山市の民宿で釣り (下中央)広東省仏山市北江でサイクリング(右)広東省の順徳市にある水郷の川で船をこぐ

 4月27日、広州市の中学・高校が登校を再開し、5月18日には小学校が登校を再開した。遅れを取り戻すために勉強が忙しくなったため、今後、子供たちが外に出て大自然の景色を楽しめる時間は、新型コロナウイルス流行中よりも、逆に少なくなってしまうだろう。子供たちには、今年のいつもとはちょっと違う春をずっと心に刻んでおいてほしい。

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新型コロナの流行が起きているとは思えないほど渋滞する広州市内。