日中トピック
トップ  > コラム&リポート>  日中トピック >  【08-03】振り返れば二十年~何故中国と付き合い続けてきたか~

【08-03】振り返れば二十年~何故中国と付き合い続けてきたか~

今井 寛(筑波大学大学院教授・中国総合研究センター特任フェロー)  2008年3月20日

 はじめて中国へ駐在員として赴任してから、今年で早二十年となる。北京での生活は2年余りだったのだが、その後も濃淡あるものの中国とは継続して付き合ってきた。私はいわゆる熱い「中国大好き人間」ではなく、どちらかと言えばフラットな視点で彼の国を眺めるように心がけている。そんな人間が何故中国と長く付き合ってこれたのか、この機会に考えてみることにした。

日中関係という縁

 初めて中国を訪問するという人に、中国について時々アドバイスすることがあるが、いつも最後は次の言葉で締めくくる。

 「日中関係とは言わば大きな渦のようなもの。一度これに関われば必ず巻き込まれ、その後もずーと関係が続いていきますよ」

 互いの好みを越えて離れようとしても離れられない関係を腐れ縁と呼ぶのであれば、親しみも込めてつい「そうだよね」とうなずきたくなる。世界的に見ても両国はともに影響力が強く、地理的にも近い。古くから多くの人が行ったり来たりしている。

 実際私の周囲の人を見ていると、中国に関わった人は、大抵はその後も関係が続いている。プライベートで行って後で出張する人もいれば、その逆もいる。更に今中国は発展に次ぐ発展期にある。渦巻きの中に入ってくる人は、年々増加している。

 このことは日本人だけでなく中国人も同様のようで、一度「中日関係」に関わると、その後も両国を行ったり来たりすることになる。

 日中関係とは、選択するものではない。空気を吸うようにしっかりとそこに在る事実そのものである。

話し方

 自分は分かり易く率直に話すこといつも心がけている。人と人とのコミュニケーションは、スムーズであるのに超したことはない。

 このような姿勢は、中国人とコミュニケーションをとる時も大切だと思う。日本人と中国人との間に生じる誤解やトラブルは、意思疎通がとれていない時、疑 心暗鬼になることから、しばしば起きるのではないか。経験的に見ても、分かり易く率直に話す姿勢は、中国人に好まれるようだ。

知的な刺激

 中国を訪れると、日本とは違う様々な新鮮な体験ができる。

 例えば中国で飛行機に乗る時、以前は出発地でしか飛行機の切符を購入することはできなかった。このため、旅行社を通さず純粋に個人旅行をする人は、行っ た先で大変な苦労をしてチケットを入手しなくてはならず、日本はオンラインシステムがあるのでどこからでも予約が可能なんだと再確認したことがあった。

 もちろん現在は日本から中国国内線の航空券を予約・購入できるが、3年前には中国国内便でこんな経験もした。その日私の乗った機は順調に飛行していたの だが、到着地を目前にして突如出発地へ引き返したのだ。こんなことは日本でもあるかもしれないが、不思議だったのはその原因が全く知らされなかったことだ (中国人同行者も確認したが不明)。結局元の空港で深夜まで待ち、お開きになった後は近くの安宿へ運ばれ、改めて翌朝の便に乗ったが、日本だと必ず原因が 公表されるケースである(その上で航空会社は平謝り!)。乗客達もそれが当然だと考えると思うが、こんな体験をすると日本と中国のどっちが「当然」なの か、すぐには断定できなくなる。

 北京オリンピックをにらんで徐々に改善されていくと思うが、とにかく中国と関わると多彩な見聞ができ、結果として自分が属する社会や日常生活の常識が必ずしも普遍的なものではないことに気づかせられる。

 中国以外でも、アメリカでも、ヨーロッパでも、アフリカでも、中東でもどこの国に行っても、日本と異なる社会を体験できる。でも、やはり中国が最もイン パクトが強いのではないか。全く違う環境で日本とは異なる体験をしても「日本と違うからそういうこともありうるんだね」で終わってしまうかもしれない。で も他方中国と日本は、少なくとも見た目は似ている。中国人の外見は日本人と似ているし、街を歩けば漢字の看板があふれている。そして「結構同じか」と感じ た頃に、バシッと「違うよ!」と現実を突きつけられる。この方が心の準備もなく、強烈な印象として残るのだろう。

 仕事の面でも参考になることが多い。

 私は研究所や大学等の科学技術人材や組織のマネージメントについて調査を行っているが、ここ二十年来の中国科学院や大学等の研究組織の改革はドラス ティックである。日本だとなかなか進まない改革がどんどん進行して、むしろ「行き過ぎか」と反省する段階に達している部分もある。

 このように伸び盛りの社会を実際に眼で見て体感することは、良きにつけ悪きにつけ勉強になるし、何より知的な刺激が大きいのである。

 以上二十年を振り返ってきた。これからも私は中国とつき会い続けていくのだと思う。