【22-03】定点観測シリーズ 中国の宇宙開発動向(その19)参考資料
2022年04月28日 辻野 照久(元宇宙航空研究開発機構国際部参事)
(中国の宇宙開発動向(その19)よりつづき)
2021年版中国宇宙白書(仮訳)
目次
はじめに
1.宇宙強国を総合的に構築する新しい旅を開始
(1)開発目的
(2)開発ビジョン
(3)開発の原則
2.宇宙技術と宇宙システムの開発
(1)宇宙輸送システム
(2)宇宙インフラ
(3)有人宇宙飛行
(4)深宇宙探査
(5)射場と管制
(6)新技術試験
(7)宇宙環境ガバナンス
3.宇宙応用産業の育成と拡大
(1)衛星公共サービス
(2)宇宙応用産業
4.宇宙科学探査と宇宙科学研究の展開
(1)宇宙科学探査
(2)宇宙環境での科学実験
5.宇宙ガバナンス近代化の推進
(1)宇宙イノベーション能力の継続的向上
(2)宇宙産業の基本的な能力の強化
(3)宇宙応用産業の発展加速
(4)商業宇宙開発の奨励及び指導
(5)法の支配の下での宇宙産業建設の積極的推進
(6)高レベルの宇宙人材チームの構築
(7)宇宙科学普及教育と宇宙文化建設の精力的実施
6.宇宙における国際協力の新しいパターンの構築
(1)基本政策
(2)主要な進展
(3)今後の協力の重点
おわりに
はじめに
習近平総書記は、「広大な宇宙を探検し、宇宙産業を発展させ、宇宙強国を構築することは、宇宙の夢を絶え間なく追求することである」と指摘した。
2016年以来、中国宇宙事業は革新と開発の「追い越し車線(快车道)」に入った。宇宙インフラストラクチャ(訳注:地球観測・航行測位・通信放送の3ミッションの総称)の構築は着実に進んでいる。北斗全球衛星ナビゲーションシステムが完成し、高解像度の地球観測システムが基本的に完成し、衛星通信と放送サービスの機能が着実に強化され月探査プロジェクトの「三歩走(繞・落・回の3つのステップ)」が成功裏に完了し、中国の宇宙ステーションの建設が開始された。「天問1号」は地球-月システムから惑星間探査への飛躍を達成し、世界中の注目を集める輝かしい成果を達成した。
今後5年間で、中国宇宙事業は新しい開発段階に基づいて、新しい開発コンセプトを実装し、新しい開発パターンを構築し、高品質の開発要件に従って、宇宙科学・宇宙技術・宇宙応用の全面的な開発を推進し、宇宙強国の全面的な建設を開始し、国家の大局的な発展への従事・宇宙空間での活動における人類の運命共同体の構築及び人類文明の進歩の促進にさらに大きな貢献をしていく。
本白書は、2016年以降の中国の宇宙活動の主な進捗状況及び今後5年間の主な課題を紹介し、国際社会における中国の宇宙産業の理解をさらに深めることを目的として発行した。
1.宇宙強国を総合的に構築する新しい旅を開始
(1)開発目的
宇宙を探索し、地球と宇宙の理解を深め、宇宙を平和的に利用し、宇宙の安全を維持し宇宙の分野で人類の未来を共有するコミュニティの構築を促進し、すべての人類に利益をもたらし、経済建設・科学技術の発展・国家安全保障及び社会的進歩他の側面のニーズを満たすために、国民全体の科学的および文化的な素質を向上させ、国家の権益を保護し、国家の総合国力を増強する。
(2)開発ビジョン
宇宙の力を全面的に構築し、宇宙の科学的認知能力・自由に宇宙に進出する能力・宇宙を高い効率で利用する能力及び効果的に宇宙を管理する能力を向上させ続け、国家安全保障擁護者・科学技術で自立した強いリーダー・質の高い経済社会的発展の促進者・宇宙空間の科学的統治の提唱者及び人間文明発展の開拓者となり、社会主義の近代化強国の建設及び人類の平和と発展のための高尚な事業に積極的に貢献する。
(3)開発の原則
中国は国家の全体的な開発戦略に従って宇宙産業を発展させ、イノベーションとリーダーシップ・協調と高効率・平和的な開発・協力と共益の原則を堅持し、高品質の宇宙開発を推進する。
①イノベーションとリーダーシップ
宇宙産業の発展における革新の中核的立場を堅持し、宇宙分野で強力な国家戦略的科学技術力を構築し、主要な宇宙科学技術プロジェクトを実施し、独自主導の科学技術革新を強化し、生態系の持続可能なイノベーション、製品化のプロセスを加速し、宇宙の自主発展能力と安全な発展能力を継続的に向上させる。
②協調と高効率
システムの概念を堅持し、新しい国家体制の利点をより有効に発揮し、すべての関係機関が秩序正しく宇宙開発に参加するように導き、宇宙活動の展開を科学的に調整し、宇宙科学・宇宙応用を推進するための宇宙技術の役割を強化し、壮大な新しいモデルと新しい業務形態を育成し、宇宙開発の品質効果と全体的な有効性を向上させる。
③平和的な開発
宇宙空間の平和利用を常に守り、宇宙空間の兵器化・戦場化及び宇宙軍備競争に反対し、宇宙資源を合理的に開発して利用し、宇宙環境を効果的に保護し、平和で清潔な宇宙空間を維持し、宇宙活動により全人類に利益をもたらす。
④協力と共益
独立と開かれた協力の組み合わせを遵守し、高度な国際交流と協力を深め、宇宙技術と製品の世界的な公共サービスを拡大し、人類が直面する主要な課題の解決に積極的に参加し、国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の目標の達成を支援する宇宙分野での開発と人類の未来を共有するコミュニティの構築を促進する。
2.宇宙技術と宇宙システムの開発
世界の科学技術フロンティアと国家の重要な戦略的ニーズに直面している中国宇宙事業は、主要な核心技術の研究と応用を加速し、宇宙技術とシステムを精力的に開発し、宇宙輸送・宇宙探査・宇宙利用及び宇宙管理の能力を全体的に向上させ、持続可能な宇宙開発を促進する。
(1)宇宙輸送システム
2016年以降、2021年12月の時点で合計207回の打上げミッションが完了し、そのうち長征シリーズのロケットは183回の打上げを行い、打上げの総数は400回を超えた。長征シリーズのロケットは、無毒、無公害、モジュール式、インテリジェントの方向にアップグレードされた。初飛行では、環境収容力は増加し続けました。ロケットの多様な打上げサービス能力が新たなレベルに到達した。「長征11号」は海上での商業応用衛星の打上げに成功し、「捷龍1号」、「快舟1A号」、「双曲線1号」、「穀神星1号」などの商用ロケットの打上げにも成功した。再使用可能なロケットの飛行実証試験テストも成功した。
今後5年間、中国は宇宙輸送システムの総合的な性能を改善し、ロケットのアップグレードを加速し続ける。打上げロケットのシリーズ機種の開発を促進し、次世代の有人打上げロケットと高推力の固体ロケットを開発し、大型ロケットの開発を加速する。宇宙輸送システムの再使用のための主要技術の研究と実証および検証を継続して実施する。飛行指向の打上げのニーズを満たすために、発展型のロケットエンジン、複合動力、上段用などの技術を開発し、多様で便利な宇宙輸送能力を開拓する。
(2)宇宙インフラ
①地球観測衛星システム
高解像度地球観測システムの宇宙ベースの部分は基本的に完成し、地球観測は高空間分解能、高時間分解能、高スペクトル分解能の時代に入った。地上観測事業サービスの総合力が大幅に向上し、「資源3-03」衛星、「環境2A 」・「環境2B」衛星、高解像度マルチモード統合画像衛星、ハイパースペクトル観測衛星、多くの商用リモートセンシング衛星が首尾よく打ち上げられた。海洋観測は、世界の海域を多要素、多スケール、高解像度で連続的にカバーすることを実現し、「海洋1C」・「海洋1D」衛星と「海洋2B」・「海洋2C」・「海洋2D」衛星の打上げに成功した。大気のグローバル化、洗練された包括的な観測機能が飛躍的に進歩し、新世代の静止気象衛星「風雲4A」・「風雲4B」衛星の打上げに成功し、全天候型の洗練された連続的な大気の3次元包括的な検出を実現した。「風雲3D」「風雲3E」衛星は、午前・午後・早朝・夕方のビジネスネットワーク観測能力を形成した。また、「一帯一路」に沿った国と地域に衛星監視サービスを提供するため、「風雲2H」衛星の打上げに成功した。リモートセンシング衛星地上システムはさらに改良されており、基本的には衛星リモートセンシングデータのグローバル受信、高速処理、運用サービスが可能である。
②衛星通信放送システム
固定通信放送衛星システムの構築は着実に進展し、カバレッジエリア・通信容量の性能はさらに向上した。「中星6C」や「中星9B」などの衛星が、テレビ放送サービスの継続的かつ安定したサポートのために成功裏に打ち上げられた。「中星16」・「APStar6D」の打上げに成功し、衛星の通信容量が50Gbpsに達し、中国の衛星通信は「ハイスループット」時代に入った。メッセージングやデータなどの移動体通信サービス機能を有する移動体通信放送衛星システムは徐々に改良され、「天通1-02号」・「天通1-03号」衛星の打上げに成功し、「天通1-01号」衛星とともに運用されている。データ中継衛星システムの構築は新たなアップグレードの段階に入り、「天鏈1-05」衛星と「天鏈2-01」衛星の打上げに成功し、全体的な性能が大幅に向上した。衛星通信および放送地上システムは継続的に改善され、衛星通信放送・インターネット接続・モノのインターネット(IoT)及び宇宙と地球のグローバルな統合をカバーする情報サービス機能を形成している。
③航行測位衛星システム
北斗3型衛星30機の打上げが完了し、航行測位システムが完成し運用を開始した。北斗システムには、測位・ナビゲーション・タイミング(PNT)の他に、グローバルショートメッセージ通信・地域ショートメッセージ通信・国際捜索救助・衛星ベースの補強システム・地上ベースの補強システム・正確なシングルポイント測位など7種類のサービス機能があり、そのサービス性能は世界最高水準に達している。
今後5年間、中国は国家の宇宙インフラを改善し続け、リモートセンシング・通信・ナビゲーション衛星融合技術の開発を促進し、ユビキタス通信・正確な時空間及び全方位の空間情報サービス能力を加速する。静止軌道からのマイクロ波探査衛星・新世代の海洋水色衛星・陸域生態系炭素監測衛星及び大気環境監視用衛星を開発し、デュアルアンテナXバンド干渉合成開口レーダー・陸域水資源及びその他の衛星技術を開発して、包括的および効率的な全球地球観測とデータ取得能力を形成する。高軌道と低軌道の協調を備えた衛星通信システムの構築を促進し、新しい通信衛星技術の検証と商用利用を実施し、第2世代のデータ中継衛星システムを構築する。次世代の北斗衛星ナビゲーションシステムのナビゲーション通信の統合や低軌道の強化など、綿密な研究と技術革新を実行し、よりユビキタスで、より統合された、よりインテリジェントな全国的な包括的な測位・ナビゲーション・タイミングシステムの構築を促進する。衛星リモートセンシング・通信及び航行測位の地上システムの改善を継続する。
(3)有人宇宙飛行
「天舟1号」貨物輸送船は打上げに成功し、「天宮2号」宇宙実験室とのランデブー・ドッキングに成功し、貨物輸送や軌道上での推進剤の補充などの主要技術の習得を突破し、有人宇宙飛行の第2段階を達成し、プロジェクトは無事に終了した。「天和」コアモジュールの打上げ成功は、中国の宇宙ステーションの建設が完全な実施段階に入ったことを示している。「天舟2号」・「天舟3号」貨物輸送船、「神舟12号」・「神舟13号」有人宇宙船は打上げに成功し、「天和」コアモジュールとすばやくドッキングして宇宙ステーションアセンブリを形成し、安定化された。 6人の宇宙飛行士が中国の宇宙ステーションに連続して駐留し、船外活動・船外オペレーション・軌道上保守・科学実験などのタスクを実行している。
今後5年間、中国は有人宇宙飛行プロジェクトを継続して実施し、「問天」実験モジュール、「夢天」実験モジュール、「巡天」宇宙望遠鏡、「神舟」有人宇宙船と「天舟」貨物補給船を打ち上げ、中国の宇宙ステーションを運用し、国家宇宙実験室を完成させ、長期の宇宙飛行士の居住・大規模な宇宙科学実験・宇宙ステーションのプラットフォームのメンテナンスなどを実施する。有人月面着陸計画の論証を深め、キー技術の研究開発を組織し、新世代の有人宇宙船を開発し、地球-月空間の有人探査と開発の基盤を強化する。
(4)深宇宙探査
①月探査プロジェクト
「嫦娥4号」探査機は「鵲橋」衛星を介して通信を中継し、月の裏側での宇宙船の軟着陸と走行調査を初めて達成した。「嫦娥5号」探査機は、中国で初めて地球外天体のサンプルリターンを達成し、1,731グラムの月サンプルを地球に戻すことに成功し、月探査の3段階の「周回・着陸・帰還」が成功裏に終了した。
②火星探査プロジェクト
「天問1号」火星探査機の打上げに成功し、火星の周回・着陸を達成し、「祝融号」火星ローバが探査を行い、火星に中国探査機の足跡を初めて残した。
今後5年間で、中国は引き続き月探査プロジェクトを実施し、「嫦娥6号」探査機の打上げ・月極域のサンプルリターンを完了し、「嫦娥7号」探査機の打上げ・月極域での高精度な着陸・永久影のクレーターでの跳躍探査を行い、「嫦娥8号」ミッションの主要な技術的ブレークスルーを完了し、関連国・国際機関・国際パートナーと共同で国際月面科学研究ステーションの建設を実施する。惑星探査プロジェクトの実施を継続し、小惑星探査機の打上げ・地球近傍小惑星のサンプリングとメインベルト彗星の探査を完了し、火星のサンプリングリターンや木星系の探査などの重要な技術的進歩を完了する。太陽系の縁辺探査などの実施方策を論証する。
(5)射場と管制
①宇宙射場
酒泉・太原・西昌の発射場の適応性の改造が完了した。酒泉発射場は液体ロケット用の商業発射場を新たに追加した。文昌宇宙発射場は商業応用の段階に入った。宇宙打上げパターンの組み合わせにより、有人宇宙船・宇宙ステーションモジュール・深宇宙探査機及び各種の衛星の多様な打上げニーズを満たすことができる。海上発射プラットフォームが利用に供され、中国の海上打上げロケットの空白を埋めた。
②宇宙管制
測定及び制御の通信機能は、地球月空間から惑星間空間への飛躍を達成し、宇宙ベースの測定および制御機能は継続的に強化され、中国の宇宙管制ネットワークの配置が一段と最適化された。安全と信頼性・迅速な応答性・柔軟な接続性・運用効率・幅広いサービスを備えた宇宙と地上の統合宇宙飛行管制の体系を形成した。管制システムは、「神舟」「天舟」シリーズの宇宙船・「天和」コアモジュール・「嫦娥」シリーズ月探査機及び「天問1号」火星探査機に代表される宇宙管制業務を正常に完了した。商用衛星の管制ステーションのネットワークが急速に発展している。
今後5年間で、中国は、宇宙製品の統一技術システムの強化に基づいて既存の宇宙発射場システムをさらに改善し、射場の共用化・集約化・インテリジェント化の建設を調整し、ミッションの適応性と信頼性を強化する。打上げサイトシステム、高密度で多様な打上げミッションのサポート能力を向上させるため、またさまざまな商業打上げのニーズを満たすために、商業打上げステーションと商業打上げサイトを構築する。既存の空間測定および制御システムの改善を継続し、組織モデルを最適化し、測定および制御技術と手段を革新し、空間ベースの測定および制御リソースを統合および使用する能力を強化し、グローバルカバレッジ・ユビキタス相互接続宇宙管制体系の構築を推進し、国家宇宙システムの運行管理を調整し、管理効率と使用効率を向上させる。月や火星などの深宇宙探査ミッションを確実に実施するために、強力な深宇宙測定および制御通信ネットワークを構築する。
(6)新技術試験
多数の新技術試験衛星の打上げに成功し、次世代通信衛星共通プラットフォーム・超高スループット通信ペイロード・Kaバンド広帯域通信・衛星と地上間の高速レーザー通信・新しい電気推進などの技術の試験と検証を実施した。
今後5年間で、中国は新技術の工学的応用に焦点を当て、衛星のインテリジェントな自主管理・宇宙往還機・新型宇宙動力・衛星の軌道上サービス及び保守・宇宙デブリの除去などの新技術の検証を行い、さらに宇宙分野の新材料・新デバイス・新製造技術の軌道上テスト検証により、技術の成熟度とエンジニアリング応用能力を向上させる。
(7)宇宙環境ガバナンス
宇宙デブリ監視ネットワークが形成され始め、基本データベースが継続的に改善され、衝突警告および宇宙イベントの感知と応答機能が徐々に向上され、軌道上の宇宙船の安全性が効果的に確保されている。宇宙活動のための国際的な宇宙デブリ低減ガイドラインや長期持続可能ガイドラインに従って、打上げロケットの最終段階の鈍化を完全に実施し、天宮2号などの宇宙機のミッションの最後に積極的な軌道離脱を成功裏に実施し、宇宙デブリの軽減に積極的に貢献した。地球近傍天体の捜索、追跡及びデータ分析は活発に進んでいる。宇宙天気保障業務システムは初期的な監視、早期警告及び予測機能を備えて確立されており、アプリケーションサービスの効果は継続的に拡大されている。
今後5年間で、中国は宇宙環境ガバナンスシステムの構築を推進する予定である。宇宙交通管理を強化し、宇宙デブリ監視施設、カタログデータベース及び早期警告サービスシステムを整備し、宇宙機の軌道上保守、衝突回避制御及び宇宙デブリ低減などの調整を行って、安全で安定した宇宙システムの秩序ある運用を確保する。防護部隊の編制を強化し、災害復旧、破壊に対し生き残る能力及び情報防護能力を向上させ、国家の宇宙活動、資産その他の利益のセキュリティを保護する。地球近傍小天体の防御システムの論証を行い、監視・目録作成・早期警告及び対応能力を向上させる。宇宙と地球を統合する宇宙天気監視システムを構築し、事業保障システムの継続的な整備を行い、厳しい宇宙天気イベントによる災害に効果的に対応する。
3.宇宙応用産業の育成と拡大
経済的および社会的発展の主要なニーズに直面して、中国宇宙事業は衛星公共福祉サービスと商業アプリケーションを強化し、宇宙技術の成果の移転と変革を加速し、宇宙アプリケーション産業の発展を促進し、宇宙開発の効率を改善する。
(1)衛星公共サービス
衛星応用業務サービス機能は大幅に強化され、資源環境と生態系保護・防災減災と緊急管理・天気予報と気候変動への対応・社会管理と公共サービス・都市化と地域協調開発・脱貧困対策などの方面において重要な役割を果たしており、宇宙はより良い生活を創造する。衛星リモートセンシングは、基本的に国および地方政府部門の業務への応用を実現し、100回以上の国内の大規模自然災害の緊急監視を実行し、中国および世界100か国以上の数万人のユーザーにサービスを提供し、累計で1億シーンを超えるデータを配布した。衛星通信放送は、中国の農村部や遠隔地の1億4000万世帯以上に衛星による直接テレビ放送サービスを提供し、500以上の携帯電話通信基地局にデータ転送を提供し、四川省涼山での激しい森林火災や河南省鄭州での激しい暴風雨などの災害救援において効率的な緊急通信サービスを提供した。北斗導航システムは、700万台以上の道路運用車両に安全保証サービスを提供し、4万隻以上の海上漁船に位置決めおよびショートメッセージ通信サービスを提供し、新型コロナ肺炎の流行予防のための物資輸送・人の流れの管理・病院の建設などで精密な位置情報を提供した。
今後5年間で、安全な中国・健康な中国・美しい中国・デジタル中国の建設を中心に、衛星応用とビジネス及び地域開発の緊密な統合を強化し、空間情報とビッグデータやモノのインターネットなどの新世代情報技術、陸・海の統合を深め、気象観測衛星データの総合応用、北斗導航+衛星通信+地上通信ネットワークを融合した統合アプリケーションインフラの構築を推進し、洗練された正確な運用サービス機能の改善を加速し、碳達峰(二酸化炭素の量を減らしていく)と碳中和(二酸化炭素の排出を減らす)・農村の振興・新しいタイプの都市化・調整された地域開発及び生態学的文明の建設をよりよくサポートするのに役立てる。
(2)宇宙応用産業
衛星応用の商業化の方向性はまだわからないが、政府・企業及び個人向けの応用市場は拡大を続けており、競争力のある民間宇宙企業が数多く出現し、大規模な産業化の発展パターンが形成されている。衛星リモートセンシングによる高精度マップ・全方位画像・データ加工、応用ソフトウェアなどの製品及びその他のサービスは、さまざまなユーザーのニーズをより適切に満たし、大衆の旅行・eコマース・農産物取引・災害損失評価と保険金請求・不動産登録などの分野で広く利用されている。衛星通信放送の商用サービス能力をさらに向上させ、4機の国内4K超高精細チャンネル放送衛星と100の番組を実現し、遠洋船・民間旅客機にインターネットアクセスサービスを提供するため「天通1」衛星移動通信システムの商業運用を実現した。衛星航法産業は急速に発展し、北斗対応チップモジュールの販売台数は1億台を超え、大量消費・共有経済・民生分野で広く利用されている。宇宙技術の成果は、伝統産業の変革とグレードアップを加速し、新エネルギー・新素材・グリーン環境保護などの新興産業やスマートシティ・スマート農業・無人運転などの新しいビジネス形態を後押しし、科学技術強国・製造強国・ネットワーク強国・交通強国を建設するために重要な貢献をしてきた。
今後5年間で、中国宇宙事業は、デジタル産業化・産業デジタル化の発展機会をしっかりと捉え、経済社会の発展と国民の多様なニーズに対し、宇宙の成果の転用と技術移転を増加させ、応用シナリオを充実させ、ビジネスモデルのイノベーションを行い、宇宙応用とデジタル経済の発展との深い融合を推進する。衛星リモートセンシング・衛星通信応用の幅と深さを拡大し、北斗産業化プロジェクトを実施し、さまざまなセクターの国民経済と大量消費に、より高度で経済的な高品質の製品と便利なサービスを提供する。宇宙旅行・宇宙での生物製薬・宇宙デブリ除去、宇宙試験サービスなどの新しい形態の宇宙経済を育成発展させ、宇宙産業の規模と効率を向上させる。
4.宇宙科学探査と宇宙科学研究の展開
宇宙の起源と進化、太陽系と人間との関係などの科学的トピックに焦点を当て、中国宇宙事業は宇宙科学計画を実証および実施し、宇宙科学探査および宇宙環境での科学実験を実施し、基礎理論を深める研究、および主要な宇宙科学研究の成果をインキュベートした。
(1)宇宙科学探査
①宇宙天文学
「悟空」暗黒物質粒子検出衛星は、宇宙線の電子、陽子、ヘリウムの核エネルギースペクトルの微細構造を取得した。 「慧眼」硬X線モジュレーション望遠鏡衛星は、宇宙磁場の測定とブラックホール連星の爆発過程のパノラマ観測を実現するために首尾よく打ち上げられた。「羲和」太陽探査科学技術実験衛星の打上げに成功し、Hɑバンドの異なる波長で複数の太陽スペクトル画像を取得した。
②月惑星科学
月の探査プロジェクトを利用して、月の地質と月面の浅い構造の包括的な探査を実施し、月のマグマ活動の年代測定、鉱物学の特徴、化学元素の分析において大きな成果を上げてきた。惑星探査プロジェクトによって、火星の表面構造、土壌および岩石の材料組成の分析を実行し、火星の地質学的進化の理解を深める。
③宇宙地球科学
「張衡1号」電磁監視試験衛星は、全球地磁気と電離層の現場データを取得し、全球地磁気参照モデルを構築した。世界の二酸化炭素モニタリング科学実験衛星は、高精度の世界の二酸化炭素分布図を取得しており、衛星データは世界と自由に共有されている。
④宇宙の基本的な物理学
「墨子」量子科学実験衛星を使用して、1,000kmスケールでの量子エンタングルメント(量子纠缠)分布と量子テレポーテーション実験を実施し、引力誘導量子エンタングルメントデコヒーレンス(退相干)実験を使用して、エンタングルメントベースの量子暗号鍵配送を1,000km単位の無中継で成功させた。「太極1号」と「天琴1号」の宇宙重力波検出試験衛星の打上げに成功した。
今後5年間で、中国は極端な宇宙・時空の波紋・太陽と地球のパノラマ・居住可能な惑星などの科学的テーマをめぐって、宇宙重力波検出衛星・アインシュタインプローブ・高度な宇宙ベースの太陽観測天文台・太陽風と磁気圏の相互作用のパノラマイメージング衛星・高精度地磁場測定衛星などを開発し、宇宙天文学・太陽地球物理学・月惑星科学・宇宙地球科学、宇宙基礎物理学などの領域で将来の探索と基礎研究を行い、より独創的な科学的成果を生み出し続けようとしている。
(2)宇宙環境での科学実験
「神舟」有人宇宙船、「天宮2号」宇宙実験室、「実践10号」微小重力実験衛星などを利用して、宇宙での哺乳類動物の細胞胚胎の生育を実現し、世界初の宇宙冷原子時計の軌道上宇宙検証を完了させ、微小重力下での粒子分離・微粉炭の燃焼・材料の調製のメカニズムの理解を深め、国際的に影響力のある多くの宇宙科学研究結果を生み出した。
今後5年間で、中国は「天宮」宇宙ステーション、「嫦娥」月探査機、「天問1号」火星探査機などの宇宙実験プラットフォームを利用して、宇宙環境下での生物学・ライフサイエンス・医学・材料などの実験と研究を行い、人類の基礎科学に対する理解を深め続ける。
5.宇宙ガバナンス近代化の推進
中国政府は、宇宙事業の発展のための政策と措置を積極的に策定し、さまざまな科学機関では宇宙活動の各プロジェクトを展開し、効果的な市場と有為な政府の役割を十分に発揮し、良好な開発環境を作り、質の高い宇宙開発事業を推進する。
(1)宇宙イノベーション能力の継続的改善
宇宙戦略の科学技術力を構築し、科学研究機関を主体とする独自のイノベーションの源泉を生み出し、産業界・学界・研究界を深く統合した健全な宇宙技術イノベーションシステムを確立し、宇宙技術イノベーション連盟を構築し、上流・中流・下流のコラボレーションと大中小の企業を統合したイノベーティブな開発パターンを形成する。
一連の重要な宇宙プロジェクト及び重要な科学技術プロジェクトの実施を推進し、宇宙科学技術の飛躍的な発展を促進し、国家の科学技術の全体的な飛躍を推進する。
宇宙科学技術の高峰を勇敢に登り、戦略的・基礎的・フロンティア的な科学研究と技術研究を展開し、宇宙分野における新世代の情報技術の統合アプリケーションを推進し、特にゲームチェンジング(顛覆性)の先端技術のプロジェクトへの応用を加速する。
宇宙技術の二次開発を強化し、宇宙の科学技術成果の転用と応用を推進し、国民経済の発展に波及効果をもたらす。
(2)宇宙産業の基本的な能力の強化
システムインテグレータ・専門の請負業者・市場サプライヤ及び公共サービス機関の整備を継続し、国民経済に根ざし、オープンな宇宙科学研究および生産組織システムに融合する。
産業構造とレイアウトを最適化し、研究開発と製造を強化し、打上げ業務を最適化し、応用サービスを拡大し、産業チェーンとサプライチェーンを強化する。
工業化と情報化の緊密な統合を加速し、インテリジェントな脈動生産ライン、インテリジェントなワークショップ、インテリジェントな研究所を構築し、宇宙産業の能力の変革とアップグレードを促進し続ける。
(3)宇宙応用産業の発展加速
衛星応用業界の開発ポリシーを整備し、公共の福祉と市場の需要を調整し、施設のリソース構築を統合し、データと製品の標準を統合し、共有と共有チャネルのブロックを解除し、標準化された製品とパーソナライズされたサービスで衛星応用サービスシステムを構築する。
衛星応用市場の開拓を加速し、さまざまな市場プレーヤーが衛星応用の付加価値製品を開発し、衛星応用モデルを革新し、「宇宙+(プラス)」産業エコロジーを育成し、宇宙における戦略的新興産業の開発加速をサポートする。
(4)商業宇宙開発の奨励及び指導
商業宇宙の急速な発展を促進するため、商業宇宙の開発のためのガイドラインを研究し策定する。商業宇宙製品およびサービスの政府調達の範囲を拡大し、主要な科学研究施および設備の商業宇宙企業への開放および共有を促進し、商業宇宙企業が主要な宇宙工学プロジェクトの開発への参加を支援し、ネガティブリストシステムを確立する宇宙活動のための市場アクセスのために、商業宇宙企業の秩序ある参入退出・公平な競争参加を確保する。
産業チェーンにおける商業宇宙の位置づけを最適化し、商業宇宙企業が衛星応用と宇宙技術移転に従事することを奨励および指導する。
(5)法の支配の下での宇宙産業建設の積極的推進
宇宙法の立法を加速し、宇宙法を核とした宇宙法制度を構築・整備し、宇宙における法の支配の構築を推進する。衛星測位規則を研究及び策定し、衛星航法活動の管理を標準化及び強化する。宇宙物体の登録に関する管理措置を改訂し、宇宙データの共有と使用の管理、および民間宇宙打上げライセンスの管理を引き続き標準化する。衛星周波数および軌道資源の管理に関する規則を調査及び策定し、衛星周波数および軌道資源の宣言、調整および登録を強化し、中国の衛星周波数および軌道資源の正当な権利と利益を保護し、宇宙事業の発展を助ける。
国際宇宙法の研究を強化し、宇宙空間の国際規則・国際電気通信連合(ITU)規則の策定に積極的に参加し、国際法に基づく宇宙空間の国際秩序を維持し、宇宙空間の公正・合理的なグローバルガバナンス体系の確立を推進する。
(6)高レベルの宇宙人材チームの構築
宇宙分野における世界の重要な人材センターとイノベーション高地の建設を加速し、人材育成の肥沃な土地を開拓し、人材チームの規模を拡大する。人材育成メカニズムを整備し、戦略的科学者・一流の科学技術人材・青年科学技術人材及びイノベーション隊列の構築を強化し、多数の優れたエンジニア・高素質の技術及び技能人材と優れた職人を訓練し、国際的なビジョンと社会的責任感を持った優れた起業家のグループを作る。人材交流メカニズムを整備し、宇宙人材の合理的な流れを規範し誘引する。人材インセンティブメカニズムを整備し、インセンティブサポートを増やす。宇宙専門分野の構築を強化し、宇宙の予備人材のチームを育成する。
(7)宇宙科学普及教育と宇宙文化建設の精力的実施
引き続き「中国宇宙の日」シリーズの活動を展開し、「世界宇宙週間」「全国科学技術活動週間」及び「天宮教室」などのプラットフォームを充分に駆使して、宇宙科学教育を強化し、宇宙知識を普及し、宇宙文化を伝え、「両弾一星」の精神と有人宇宙飛行の精神・月面探査の精神・新時代の北斗の精神を継承し、全国民、特に若者の熱意を刺激して、科学の提唱・未知の探求・全国民の科学文化の素養を向上させる。
主要な宇宙遺産の保護に尽力し、宇宙博物館・宇宙体験パークなどの科学教育基地の建設を引き続き推進する。宇宙をテーマにした文学および芸術作品の作成を奨励およびサポートし、宇宙文化の繁栄を促進する。
6.宇宙における国際協力の新しいパターンの構築
宇宙空間の平和的な探査・開発及び利用は、世界のすべての国が享受できる平等な権利である。中国は、世界のすべての国が協力して人類の未来を共有する運命共同体を構築し、平等相互利益・平和利用・包括的開発をベースに、宇宙における国際交流と協力の発展を深める。
(1)基本政策
中国政府は、宇宙における国際交流と協力を実施する上で、以下の基本政策を採用している。
①宇宙問題における国連の中心的役割を維持し、国連「月およびその他の天体を含む宇宙空間の探査および利用における国家の活動に関する原則に関する条約」に従い、関連する国連の原則・宣言・決議のガイドライン的な意義を重視し、外交に積極的に参加する。宇宙に関する国際規則の確立は、宇宙活動の長期的な持続可能な発展を促進する。
②宇宙科学・技術及び応用の分野での国際交流と協力を強化し、国際社会と協力して世界の公共財とサービスを提供し、共通の課題に対する人類の対応に貢献する。
③共通の目標に基づく宇宙協力の強化・「一帯一路」の建設に貢献する宇宙協力を強化し、宇宙開発の成果がルート沿いの国々、特に開発途上国に利益をもたらすようにする。
④アジア太平洋宇宙協力機構(APSCO)が重要な役割を果たすことを支援し、BRICS協力メカニズム、上海協力機構(SCO)の枠組み、およびG20協力メカニズムの下での宇宙協力を重視する。
⑤国内の科学研究機関・企業・高等教育機関・社会団体が、関連する政策や規制に従って、マルチレベル・マルチフォームの国際的な宇宙交流と協力を実施することを奨励および支援する。
(2)主要な進展
2016年以来、中国は19の国と地域および4つの国際組織と46の宇宙協力協定または了解覚書(MOU)に署名し、宇宙空間のグローバルガバナンスを積極的に推進し、二国間及び多国間協力メカニズムを利用して宇宙科学・宇宙技術及び宇宙応用の分野での国際協力は実り多い成果をもたらした。
A.宇宙空間のグローバルガバナンス
①国連の枠組みの下での宇宙活動の長期的な持続可能性・宇宙資源の開発と利用・宇宙での武力競争の防止に関する協議に参加し、宇宙探査や革新などの新しいトピックを共同で作成し、国連宇宙2030アジェンダの推進を継続した。
②国連宇宙ベースの災害管理および緊急対応のための情報プラットフォームの北京事務所の作業を支援し、国連グローバルナビゲーション衛星システムの国際委員会のさまざまな活動に深く参加し、宇宙ミッション計画諮問グループと国際小惑星警報ネットワークを構築した。
③APSCOのホスト国の役割を果たし、「APSCO2030の開発ビジョン」をサポートした。
④中国-ロシア宇宙協力小委員会のスペースデブリ作業グループや中米宇宙デブリおよび宇宙飛行安全専門家セミナーなどのメカニズムを利用して、宇宙デブリおよび宇宙空間の長期的な持続可能性の分野での交流を強化する宇宙活動を行った。
⑤国際電気通信連合(ITU)・地球観測衛星委員会(CEOS)・機関間宇宙デブリ調整委員会(IADC)、国際宇宙データシステム諮問委員会(CCSD)、国際宇宙探査協働グループ(ISECG)、宇宙機関間相互運用諮問グループ(IOAG)などの国際機関の活動を支援する委員会に参加した。
B.有人宇宙飛行
①「天宮2号」宇宙実験室を利用して欧州宇宙機関(ESA)と協力し、ガンマ線バースト偏光検出研究を実施し、フランスと協力して「神舟11号」有人ミッション中に微小重力環境での有人宇宙飛行研究を実施した。宇宙飛行士センターは欧州の宇宙飛行士と共同で洞窟訓練・海洋生物保護訓練を行った。
②中国宇宙ステーションのための宇宙科学国際協力実験プロジェクトの最初の項目の選択を完了し、宇宙科学実験・宇宙ステーションモジュールの開発に関してドイツ・イタリア・ロシアとの技術協力と交流を実施した。
C.北斗衛星測位システム
①米国の全球測位システム(GPS)、ロシアのGLONASSシステム、ヨーロッパのガリレオシステムを使用して、中国の北斗衛星ナビゲーションシステムの協調開発を促進し、兼容性と相互運用・監視と評価及び連合アプリケーションの分野での緊密な協力を促進した。
②北斗の国際標準化作業を推進し、民間航空・海事・国際捜索救助・移動体通信・国際電気標準会議(IEC)など、多くの国際機関の標準化体制に次々と参入した。
③北斗システムのグローバルサービスを推進し、アラブ連盟とアフリカ連合とそれぞれ北斗協力フォーラムメカニズムを確立し、チュニジアに最初の海外北斗センターを建設し、パキスタン・サウジアラビア・アルゼンチン・南アフリカ・アルジェリア・タイ及びその他の国と衛星航法協力を実施した。
D.深宇宙探査
①ロシアと共同で国際月面研究ステーションプログラムを立ち上げ、月と深宇宙探査のための中国とロシアの共同データセンターの建設を開始し、中国の「嫦娥7号」月極域探査ミッションとロシアの月資源1号(ルナレスルス)ミッションの共同実施を促進した。
②月探査プロジェクトの「嫦娥4号」ミッションを利用して、ロシア・欧州宇宙機関と工学技術協力を行い、スウェーデン・ドイツ・オランダ・サウジアラビアと科学ペイロード協力を行った。月探査プロジェクト「嫦娥6号」ミッションの国際協力を開始した。
③初の火星探査機「天問1号」ミッションを使用して、欧州宇宙機関との工学的および技術的協力を実施し、オーストリア・フランスとの科学ペイロード協力を実施した。米国との火星探査機軌道データ交換メカニズムを立ちあげた。小惑星探査ミッションのための国際ペイロード協力を開始した。
④欧州宇宙機関・アルゼンチン・ナミビア・パキスタンとの間で、月と深宇宙探査の分野で管制協力を行った。
E.宇宙技術
①中国-フランス海洋衛星(CFOSAT)・中伯地球資源衛星(CBERS 04A)・エチオピアリモートセンシング超小型衛星を共同開発して打ち上げ、アジア太平洋宇宙協力機構(APSCO)の大学生向け小型衛星(SSS)を打ち上げた。エジプト地球観測衛星2号の共同開発の推進を継続した。
②パキスタン地球観測衛星1号・ベネズエラ地球観測衛星2号・スーダン地球観測衛星1号・アルジェリア通信衛星1号の軌道上配備を完了した。
③サウジアラビア・パキスタン・アルゼンチン・ブラジル・カナダ・ルクセンブルグ等の国に衛星打上げサービスを提供した。
④ロシア・ウクライナ・ベラルーシ・アルゼンチン・パキスタン・ナイジェリア等の国々と宇宙製品に関する技術協力を実施した。
⑤発途上国の宇宙能力構築を支援した。エジプト・パキスタン・ナイジェリア等の国々と協力して、衛星開発インフラストラクチャを構築した。 「一帯一路」宇宙情報回廊の建設を推進し、中国の宇宙施設資源を開発途上国に開放した。
F.宇宙応用
①「風雲」気象衛星の国際的なユーザー向けに防災減災のための緊急保証メカニズムを確立した。中国気象衛星からのデータは121の国と地域で広く利用されている。
②BRICS諸国の地球観測衛星群の協力協定に署名した。欧州宇宙機関と協力して、地球観測衛星からのデータを交換する。中国-ASEAN衛星情報(海)サービスプラットフォームとリモートセンシング衛星データ共有サービスプラットフォームを構築する。ラオス・タイ・カンボジア・ミャンマー等の国々と共同でランカンメコン宇宙情報交流センターを建設した。
③ボリビア・インドネシア・ナミビア・タイ・南アフリカ等の国々と協力して、衛星データ受信ステーションを構築する。
④国際災害チャータのメカニズムに積極的に参加し、40に近い国で災害軽減のために約800シーンの衛星リモートセンシングデータを提供し、国際社会の能力を強化するために新たに増やした8機の衛星および衛星群を当番衛星及び衛星群として追加する。
⑤衛星緊急監視とサービスを積極的に展開し、15か国に対し17回の重大災害事故の緊急監視を起動し、アフガニスタンでの2018年の大干ばつ・2018年のラオスダム崩壊事故・2019年のモザンビーク台風などで被災した国の関係部門に観測プロダクツを提供した。
⑥「中国のグローバル指向統合地球観測システム(2016-2025)の10か年執行計画」を発表し、2020年に地球観測機構の当番議長を務め、グローバル統合地球観測システムの構築を推進した。
⑦国際宇宙気候観測(SCO)プラットフォームメカニズムに参加し、宇宙技術を使用して気候変動に対処する中国のベストプラクティスを促進し、国際的な宇宙気候観測協力を促進する。
G.宇宙科学
①スイス・イタリア・オーストリア・英国・日本その他の国々と共同で、「悟空」・「墨子」・「実践10号」・「慧眼」などの科学衛星に関する科学研究と実験を共同で実施する。
②中国とイタリアの電磁監視試験衛星を共同開発し、打上げに成功し、中欧の太陽風と磁気圏の相互作用パノラマ画像衛星(SMILE)・中仏天文衛星及び中伊の電磁監視の共同開発を引き続き推進した。衛星02衛星、イタリア、ドイツ、その他の国々と高度な宇宙ベースの衛星開発を実施する。太陽観測所・アインシュタインプローブ・拡張X線時間変動・偏光宇宙観測所などの科学衛星ペイロードの共同開発と校正を行う。
③中国とブラジルの宇宙天気合同研究所を利用して、南米の宇宙環境のための包括的な監視および研究プラットフォームを共同で構築する。
H.人材と学術交流
①国際宇宙航行連盟(IAF)・国際宇宙航行委員会(COSPAR)・国際宇宙航行アカデミー・国際宇宙法学会などの活動に参加し、世界宇宙探査大会・全球衛星測位システム委員会第13回大会・持続可能な開発に寄与する中国/国連宇宙会議・文昌国際航空宇宙フォーラム・珠海フォーラム・北斗規模応用国際サミット・風雲気象衛星国際ユーザー大会などを開催する。
②開発途上国の人材育成を支援する。国連アジア太平洋地域宇宙科学技術教育センター(中国)に委託して、60か国以上で1,000人近くの宇宙人材を育成し、一帯一路の宇宙イノベーション連盟と中露工科大学連盟を設立する。開発途上国向けの技術トレーニングコースなどのチャネルを通じて、リモートセンシングおよび測位方面での人材交流を促進する。
③国-EU宇宙科学シンポジウム・中国-EU宇宙科学技術協力対話・中国-EU「ドラゴン計画」などのチャネルを通じて、宇宙科学・リモートセンシング・測位における科学技術交流を促進する。
(3)今後の協力の重点
今後5年間で、中国はより積極的かつオープンな姿勢で二国間および多国間協力メカニズムを拡大し、以下の主要分野で広範な国際宇宙交流と協力を実施する。
A.宇宙空間のグローバルガバナンス
①国連の枠組みの下で、宇宙空間に関する国際規則の策定に積極的に参加し、宇宙空間活動の長期的な持続可能な開発が直面する課題に共同で取り組む。
②宇宙環境ガバナンス・地球近傍天体の監視と対応・惑星保護・宇宙交通管理・宇宙資源開発利用などの分野で、国際問題の議論とメカニズム構築に積極的に参加する。
③宇宙環境ガバナンス協力を実施し、宇宙危機管理と包括的ガバナンスの有効性を改善し、ロシア・米国等及びその他の国や関連する国際機関との宇宙ガバナンスに関する対話を支援し、アジア太平洋宇宙協力機構(APSCO)の宇宙科学観測プラットフォーム建設を推進する。
B.有人宇宙飛行
①中国宇宙ステーションを利用して、微小重力環境で宇宙天文観測・地球科学研究及び宇宙科学実験を行う。
②宇宙飛行士の共同選抜や訓練・共同飛行など、より幅広い国際協力を推進する。
C.北斗衛星測位システム
①国連全球衛星測位システムに関する国際委員会の関連活動に引き続き参加し、公正かつ合理的な衛星航行測位秩序の確立を促進する。
②北斗衛星測位システムとその他の衛星測位システム・衛星ベースの測位補強システムの互換性と相互運用の協力を積極的に促進し、全球衛星測位システムの兼容と共同利用を促進する。
③北斗衛星測位システムの応用協力と交流を重点的に促進し、北斗システムの成熟した応用ソリューションの共有及び各国の経済社会的発展に資する。
D.深宇宙探査
①国際的月科学研究ステーションの協力に重点を置き、プロジェクトのすべての段階・ミッションのすべてのレベルで国際月科学研究ステーションの論証と建設に参加する国際パートナーを歓迎する。
②小惑星・惑星間探査の分野での協力を拡大する。
E.宇宙技術
①衛星工学と技術協力を支援し、エジプト2号衛星の連合開発を完了し、中仏天文衛星・中伊電磁監視衛星02衛星を打ち上げ、中国ブラジル資源衛星(CBERS)シリーズ好景気の協力を推進する。
②宇宙管制支援協力を展開し、管制支援分野で欧州宇宙機関(ESA)との協力を継続し、地上局ネットワークの構築をさらに推進する。
③打上げサービスを含む商業宇宙における国際協力、衛星全体・衛星及び打上げロケットサブシステム・部品・電子デバイス・地上設備や施設などの製品の技術協力を支援する。パキスタンの通信衛星の開発、パキスタン宇宙センター・エジプト宇宙センターの建設における協力プロセスに重点を置いて推進する。
F.宇宙応用
①中国の気象衛星データのグローバルな適用を促進し、中国とフランスの海洋衛星データの世界気象衛星組織への開放を支援し、「張衡1号」電磁監視衛星データのグローバルな共有と科学応用を促進する。
②「一帯一路」宇宙情報回廊の建設を促進し、地球観測・航行測位・通信衛星の応用における協力を強化する。
③APSCOデータ共有サービスプラットフォームの構築を促進する。
④BRICS地球観測衛星コンステレーションの構築と応用を促進する。
⑤宇宙天気観測プラットフォームの建設と観測実施に参加する。
G.宇宙科学
①深宇宙探査プロジェクトに依存し、地球外のサンプルと検出データを使用して、宇宙環境・惑星の起源と進化などの分野で連合研究を実施する。国連を通じて「嫦娥4号」の科学データを国際社会に開放する。
②宇宙科学衛星の連合開発を推進し、暗黒物質粒子・太陽爆発活動とその影響・宇宙重力波などに重点を置いた宇宙科学の探索と研究を展開する。
H.才能と学術交流
①宇宙分野での人事交流と研修を実施する。
②ハイレベルな国際学術交流会議やフォーラムを開催する。
おわりに
今日の世界では、ますます多くの国が宇宙産業を重視し、精力的に発展させている。世界の宇宙産業は、人間社会の発展に重大かつ広範囲にわたる影響を与える、大きな発展と変革の新しい段階に入っている。
近代的社会主義国を全面的に構築するという新たな旅の歴史的出発点に立つ中国は、宇宙強国の建設を加速し、人類の運命共同体の理念を支持し、他の国々と同じ道を継続し、宇宙におけるグローバルガバナンスや交流協力に積極的に参加し、宇宙空間の安全を保護し、宇宙活動の長期的持続可能な開発を促進し、地球の家の保護・民生福祉の増進・人類の文明の進歩に奉仕するために、さらに大きな新しい貢献をしていく。
以上
参考リンク