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【23-13】"新・礎石研究者プロジェクト"における採択者が発表

小松義隆(アジア・太平洋総合研究センター フェロー) 2023年02月24日

 新・礎石研究者プロジェクト(新基石研究员项目)において、58名の研究者が採択された[1]。本プロジェクトは、2022年4月30日より正式にスタートし、応募期間は同年7月1日から9月30日までであった。中国における研究開発に対する公的な資金提供は、中央政府や省庁等による資金提供のみならず、地方政府(省や市等)も相当額を負担している。特に科技部(中华人民共和国科学技术部)やNSFC(国家自然科学基金)が多くの割合を占めている。

 その中で本プロジェクトは「プロジェクトではなく人を選ぶ」ことに重点を置いたもので、新しいタイプの基礎研究費制度といわれている。中国科学技術協会の指導のもと、研究者が基礎研究に専念し、「0→1」のオリジナル・イノベーションを実現するために、実験的カテゴリーは1人あたり年間500万元を超えず、理論的カテゴリーは1人あたり年間300万元を超えないものであり、資金提供は5年間とし、今後10年間で100億人民元をテンセント(腾讯公司)が独自に資金を提供し運営するものである。

 2023年1月13日に、数学・物理と生物・医学科学の2分野から58名の研究者が発表された。採択者の内訳として、数学は7名(12.1%)、物理は13名(22.4%)、化学は10名(17.2%)、生物・医学は28名(48.3%)であった(図1)。なお、採択された56名は教授(科学院の場合は研究員)が大部分を占めており、残り2名は副教授と研究員であり、ポスドクといった若い人は採択されていなかった。また、所属機関の位置を図2に示す。なお、中国科学院における各機関は、科学院としてまとめている。

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図1 採択者の分野と所属機関 (新基石研究员项目より作成)

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図2 採択者の所属機関の位置 (新基石研究员项目より作成)

 採択者の研究分野として、数学では表現論、算術幾何学、整数論、無限次元解析、機械学習、物理ではニュートリノの質量の起源、量子計算や量子コンピュータといった量子技術、超伝導、化学ではがんワクチンの設計、炭素資源等の最適利用と持続可能な開発、人工光合成、X線イメージング、生物・医学ではウイルス感染症、RNA研究、免疫細胞、持続可能な農業開発、遺伝子発現、脳内メカニズム、免疫細胞、心血管および脳血管疾患、神経伝達物質および老化現象等である。

 なお、2021年に、中国の経済・社会全体に関わる中長期計画案として第14次5カ年計画が公布された。ここでは、R&Dの拡張やハイテク産業の産業化といった方針が示され、次世代人工知能、量子情報、集積回路、脳科学および脳型知能、遺伝子およびバイオテクノロジー、臨床医学および健康、深宇宙・地層・深海および極地の探索等の最先端分野に照準を定め、戦略的科学計画およびプロジェクトを制定するとしていた。さらに、中国共産党第二十回全国代表大会における報告においても基礎研究と独創的イノベーションが不断に強化されるべきであると述べていることから、今回採択された研究分野の発展が著しく伸び、質の高い研究論文数等が増産されていくことであろう。


1.新基石研究员项目, https://www.newcornerstone.org.cn/#/

参考資料

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