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【23-33】AIプラットフォーム、揚水発電所の効率的な点検を可能に

葉 青(科技日報記者) 2023年07月12日

 中国広東省広州市で、南方電網揚水発電人工知能(AI)データ分析プラットフォーム「XS-1000D」が稼働した。これにより、設備容量1028万キロワット(kW)の揚水発電所7カ所で、発電機34基のデータスマート点検やコンディションスマート診断、運営・メンテナンスモデルの変革が実現した。これは中国で稼働している設備容量の4分の1近くを占める揚水発電設備が、従来の人工管理からオンラインスマート管理に変わったことを示しており、年間約1760億元(1元=約20円)の経済効果を生み出すものとなる。

 南方電網は2018年より、AI データ分析技術の揚水発電分野における研究応用を開始した。同プラットフォームは発電所7カ所の60近くの設備システムの測定点データ31万件を、統一標準のデータ体制によって総合処理ユニットに接続してデータ収集を行い、ネットワークにアップする。外に出なくても発電所の各設備のコンディションをチェックできる。システムはデータの異常を発見すると直ちに故障箇所を調べ、設備異常の原因を徹底分析する。XS-1000Dの高いデータ分析機能により、技術者は蓄電ユニットの全体的なコンディションを迅速に評価し、リスク箇所を速やかに特定できる。

 かつて最も広く使用されていた30万kW発電機を例にすると、年間日常点検項目は400以上にのぼり、約850人が1日がかりで行う必要があった。

 南方電網儲能修試公司電気一次検修部の鄭清班長は「以前は各発電所の発電機ごとに定期的なコンディション分析評価を行う必要があり、現場に移動して各発電機の千件を超えるデータを観察・記録しなければならなかった。報告書作成の仕事量が膨大な上、ミスが出やすかった。現在はXS-1000Dが報告書を自動作成し、どのような異常があるかを直接、リアルタイムで教えてくれるようになった」と述べた。これらはAI データ分析の中核であるアルゴリズムによるものだ。

 技術者は各種データの分析原理と設備運営・メンテナンスの需要に対し、49種の組み合わせ可能なアルゴリズムモジュールを独自開発した。そしてXS-1000Dに千近くのスマート分析アルゴリズムを導入し、独自の知的財産権を持つ揚水発電所設備コンディションスマート分析方法を生み出した。これは技術専門家の知恵と経験を「クラウド化した」ことに相当する。

 南方電網儲能修試公司党委員会の郭小濤書記は「毎週アルゴリズムが新たに追加され、クラウドブレーンの分析能力を持続的に強化し、従業員は重複する機械的作業から解放される」と述べた。

 プラットフォームは大量の多次元データにより、設備コンディションの評価の結論を正確に導き出し、設備の不備・リスクを予測する。設備データ分析と点検修理プランの作成を結びつけることでRCM(信頼性を中心とする整備)分析をより全面的かつ正確にし、運営・メンテナンス担当者に設備の現在のコンディションと今後修理するかどうかを伝え、経験に基づく意思決定からデータに基づく位置決定への変化を後押ししている。


※本稿は、科技日報「人工智能数据分析平台 快速高效巡检抽水蓄能电站」(2023年5月19日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。