【24-100】全盛期を迎えた老化研究 健康に年を取る時代も遠くない?(その1)
宗詩涵、陳 磊(科技日報記者) 2024年11月06日
健康に年を取るためには慢性疾患を予防・抑制するだけでなく、日常生活における健康管理もおろそかにできない。(画像提供:視覚中国)
人間はなぜ老化するのだろうか。私たちは今どれほど老いているのだろうか。また、健康に年を取るにはどうしたらいいのだろうか。
このほど北京で開かれた「香山科学会議」で、基礎研究の科学者と臨床医師らがこれらの話題について議論した。
会議の執行議長の一人で、中国科学院動物研究所研究員の劉光慧氏は「こうした問題はそれぞれ、老化メカニズム、老化の度合い、老化への介入という3つの分野の科学的課題に対応している。関連研究は現在、ターゲットが不足している、早期警戒が難しい、介入が不十分などの課題に直面している」と指摘する。
「老化のメカニズムと介入」をテーマにした今回の会議において、専門家は「老化のメカニズム解明、高精度の老化度判定、老化への科学的介入などの議題について、老化生物学の基礎研究を強化し、関連技術の臨床・応用を推し進め、最終的に、健康に年をとって、あまり病気にならずに元気に過ごせる健康な高齢化を実現させる」と呼び掛けた。
人体の老化は複雑な全体的プロセス
2023年末時点で、中国の60歳以上人口は2億9700万人で、総人口に占める割合は21.1%に達した。2050年前後には、60歳以上人口は4億8000万人に達し、世界の高齢者人口の4分の1を占めるようになると予想されている。中国は高齢者の規模が大きく、その速度が速く、情勢が厳しいため、老化メカニズムの研究と科学的な予防・抑制は急務となっている。
老化は病気の1つなのだろうか。老化については、年を取ると起こる生理的変化という見方、進行性で退化・変質する病気という見方、病気ではないが病気をもたらすという見方、さらに、病気かどうかは老化の程度によって決まり、過度に早い老化、つまり早老症は病気という見方もある。実際、2018年に世界保健機関(WHO)は老化を病気と定義し、世界的に老化介入の研究が進められている。
会議の執行議長の一人で、中国科学院院士(アカデミー会員)の裴鋼氏は「老化は、生命科学研究の最先端分野で、生物医学の重要な分野でもある。多くの病気と密接に関係しており、老化というキーポイントを把握し、そのメカニズムを研究すれば、重大疾患の治療における新たな突破口を見つけることができる可能性がある」との見方を示す。
老化は、人体の複数の器官と関わっているが、老化が最も早く始まるのはどの器官なのだろうか。劉氏は「老化は複雑な非線形生物学の過程で、分子、細胞、器官といった複数のレベルが関係している。器官によって、老化の進み具合が異なり、同じ器官でも細胞によって老化の性質が異なる。それらが研究の難易度を高めている。科学界は依然として、人体のどの器官に一番早く老化現象が表れるのかを積極的に模索している段階だ」と説明する。
暨南大学老化・再生医学研究院の鞠振宇院長は「老化は造血や免疫、心血管、神経、呼吸、消化、内分泌、生殖など複数のシステムと関係している。人体の老化は、全体的なプロセスで、各系統の間には共通性もあれば、特異性もあり、複数の次元からそのメカニズムを総合的に解明していかなければならない」との見解を述べた。
老化はある程度定量化が可能
風邪をひいて発熱すると、体温を測ったり、血液検査をする。では、老化の度合いはどのように科学的に測定することができるのだろうか。
陸軍軍医大学陸軍特色医学センター(大坪医院)神経内科の王延江主任医師は「老化は、加齢の過程において、自分の原因または外部の要因で発生する損傷の蓄積が原因となり、機能の衰退や慢性疾患などが起こり、最終的に死亡する。老化度の正確な測定は解決が急務の重要な科学的問題だ」と説明した。
老化度を効果的に評価するとともに、老化および関連疾患の介入に的確な根拠を提供するためには、適切な老化バイオマーカーを見つけることが非常に重要となる。
(その2 へつづく)
※本稿は、科技日報「衰老研究"风华正茂" 健康老去愿景可期」(2024年9月24日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。