【24102】AIによる創作:どうポテンシャルを引き出すかがカギに(その1)
李詔宇(科技日報記者) 2024年11月08日
2024中国国際ビッグデータ産業博覧会で、AI創作プラットフォームを体験する来場者。(撮影:瞿宏倫)
いくつかの言葉や一部のストーリー要素を入力するだけで、AI(人工知能)が流れるようなストーリー展開の文学作品を執筆してくれる。そんなシーンが今では決して珍しくなくなっている。生成AIはユーザーに利便性をもたらしているが、多くのプロの作家はこれに脅威を感じている。
中国で最近、オンライン小説プラットフォームの作者らが「AIトレーニング付帯協定」に反対しているという話題が注目を集めた。AIの効率性に対し、執筆への影響を心配する人が少なくない。
AIはまだ独自に創作する能力を持っていない
公開された情報によると、上記の「AIトレーニング付帯協定」は、創作者に対して、AIの能力を高めるデータとして、作品を提供するよう要請するものだ。最終的にこの協定は取り消されたが、AIによって創作空間が縮小する、ひいてはAIが作者に取って代わるという懸念に関する議論が、作者の間で巻き起こっている。
では、「AIが作者に取って代わる」ということが現実になる可能性はあるのだろうか?
中国工業・情報化部(省)情報通信テクノロジー委員会委員で北京理工大学サイバーセキュリティ研究所の閆懷志所長は「現在、補助の素材が全くない状況下では、AIにはまだ独立して文学作品を創作する能力はない」と述べた。
閆氏によると、文学作品の創作には複雑なキャラクター設定、プロット作成、感情表現などが関係しており、これらには豊富な素材と背景知識の支えが必要だ。
現時点でAIは「宗派の創始者」というよりは、臨機応変な「模倣者」といえる。
閆氏は「言語スタイルの面では、大量の学習とトレーニングを通じてAIが作成した文字作品は、複数の文学流派やさまざまな作家を模倣することができ、多様化した特徴を見せている。内容面でも、AIが作成した作品は、幅広い題材やタイプをカバーしている。だが、感情表現という面では、AIは人間のように本当の意味で感情を理解することができず、繊細な感情の変化を捉えたり、伝えたりすることが難しい。そして、AIが作成した作品は、往々にして、機械的で深みがなく人間の作者のような独特な視点と深い感情体験に欠けており、繊細な感情的共鳴や独特な思想・見解を生み出すのが難しく、淡々としている」と指摘した。
筆者はある生成AIプラットフォームを利用し、家庭をテーマにした小説を生成してみた。すると、要素をどのように変えても、AIが作成した物語のキャラクター設定が似ており、ストーリーも「ままごと」のようなワンパターンなものが大半だった。そして、「雷雨」や「リア王」などのような本当の意味で名作といえる文学作品が生成されることはなかった。AIが作成した作品は、言葉遣いこそ美しいものの、実質的意義において読む価値はなく、「深遠さ」については論じるにも及ばない。
そのため、現時点では、AIが力を発揮できる場というと、テキスト分類や整理などのより機械的で、同じことを繰り返す単調な作業が多く、感情の面で非常に要求が高い文学作品の創作に用いるのは難しい。
ただ、AIの長所を合理的に利用すれば、文学創作者にとっては有益なツールとなるだろう。閆氏は「AIを合理的な方法で利用して文学作品を創作すると、効率を高めることができるだけでなく、文学作品創作の多様性と可能性を高めることもできる」と説明。「まず、AIのスピーディーな生成能力を活用すると、創作の効率を極めて大きく高めることができる。そして、詩歌や小説などの初稿を素早く生成することで、内容の深化やインスピレーションの発掘などに集中することができ、時間をかなり有効活用できる。次に、AIは従来の思考パターンの束縛を打破し、作家に斬新な思考パターンとアイデアを提供できるため、作家は思考パターンの限界を打破し、新たなテーマや視点、ストーリーテリングを模索できる」と強調した。
現時点では、AIによる創作は補助素材をベースにしているが、AIの創作力は高まり続けており、一部の革新的成果も挙げているようだ。例えば、中国ではAIを活用してオンライン小説の創作に成功したケースが既にある。あるAIが単独で創作した小説の文字数は100万字に達しており、AIが長編の文学作品を創作するということが現実となっている。また、別のAIが単独で創作した小説は、匿名の形でSF文学作品コンテストに参加し、それを知らない審査委員が評価した結果、二等賞を獲得した。
近い将来、補助素材を必要としない本当の意味での「AI創作者」と「AI作品」が登場するかもしれない。
(その2 へつづく)
※本稿は、科技日報「AI创作:规范发展路径 释放创意潜能」(2024年9月13日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。