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【24-103】AIによる創作:どうポテンシャルを引き出すかがカギに(その2)

李詔宇(科技日報記者) 2024年11月11日

中国で最近、オンライン小説プラットフォームの作者らが「AIトレーニング付帯協定」に反対しているという話題が注目を集めた。この協定は、創作者に対して、AIの能力を高めるデータとして作品を提供するよう要請するものだ。最終的にこの協定は取り消されたが、AIによって創作空間が縮小する、ひいてはAIが作者に取って代わるという懸念に関する議論が、作者の間で巻き起こっている。

その1 よりつづき)

AI創作の市場化は多方面の規範化が必要

 AIがサポートした既存の作品であれ、将来登場する可能性のあるAIが単独で創作する作品であれ、規範的発展という問題が存在する。この種の作品の著作権の帰属と収益方法をどのように明確化すればいいのだろうか。

 首都経済貿易大学法学院講師の季冬梅氏は「この問題に関しては、学術界と実務界では見方が異なっている。1つはAIが生成したコンテンツの著作権はAIの使用者、つまり指示を入力したり、パラメータを選択したりといった操作を行った自然人、または法人に帰属するという見方だ。もう1つは、AIが生成したコンテンツの著作権はAIの設計者、または開発者に帰属するという見方だ。どちらに帰属するとしても、AIが生成したコンテンツは、データソースが真実で合法であるというのを基礎として、合法的な購入、契約の約定といった方法を通じて、権利の帰属先とリスク分担を明確にしておかなければならない。元となった素材の提供者を十分リスペクトしなければならず、無理に利用するという方法は、明らかに合理的ではない」と見解を述べた。

 中国工業・情報化部(省)情報通信テクノロジー委員会委員で北京理工大学サイバーセキュリティ研究所の閆懷志所長は、「AIが創作した作品は、AIのプログラマーと補助素材の提供者の間に生まれた『子供』のようなものだ。プログラマーは技術プラットフォームとアルゴリズムのサポートを提供しているのに対し、補助素材の提供者は、創作のベースとインスピレーションを提供している。法律や契約といった形で、プラットフォーム側と素材提供者の権益を明確にし、各者の権益を合理的な形で守るという協力・共有モデルがこの問題の解決策になるかもしれない」と指摘する。

 季氏は「AIが創作した作品の著作権を明確にし、技術の進歩がもたらす市場の変化に対応すべきだ。それには、権限を授与されたデータソースの開放や集合的管理組織の集中認可といったさまざまな案を策定し、セーフハーバー・ルールを活用し、免責を実現するといった措置が含まれるかもしれない。また、既存の著作権制度を適度に調整し、AI時代のニーズに対応することも必要だ」と訴えた。

 さらに季氏は「著作権の合法性を確保し、権利の帰属先を明確にするとともに、相応の制度による保障をすることで、技術進歩によって市場が変化するという状況下でも、関連する創作者の利益を最大限保護することができる。ただ、これはさらなる探求と実験が必要だ」と語った。

 今後予想されるAI単独作品の創作に関しては、より多くの問題について検討する必要がある。今後、この種の作品が文学創作で独立したジャンルとなり、市場に進出することができるのだろうか。もしそのような日が来れば、どのように規範化すべきなのだろうか。

 季氏は「長い目で見ると、AIが単独で創作した作品が一つのジャンルとなって市場に進出する可能性は確かにある。技術が急速に進歩するにつれて、AIは、文章、音楽、絵画といった複数の分野で既に、並外れた創造的可能性を発揮するようになっている。さらに、デジタルコンテンツの創造的生成作業に、次第に深く溶け込むようになっており、大きな価値を生み出している」と語った。

 閆氏は「技術が継続的に進歩し、市場が成熟するにつれて、AIが創作する作品のクオリティや多様性も高まり続け、さらに多くの消費者のニーズを満たすようになるだろう」と述べた。

 季氏は「AIが単独で創作した作品の市場化は複雑なプロセスで、技術、法律、市場といった多方面について総合的に検討し、規範化するべきだ」との見方を示す。

 これについては閆氏も、「AIが創作する作品の発展を規範化し、関連創作者の利益と権利を保護するためには、関連する法律・法規体制、業界基準の策定・健全化、技術の監督・管理強化、業界の自律・イノベーションの推進、合理的な利益分配メカニズムの模索といった複数の面から着手する必要がある」と強調した。


※本稿は、科技日報「AI创作:规范发展路径 释放创意潜能」(2024年9月13日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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