【24-113】「誰もがAIデジタルヒューマンを持つ時代」はすぐ到来するのか?(その1)
崔 爽(科技日報記者) 2024年12月11日
2024インターネット岳麓サミットの会場で、AIデジタルヒューマン「小麓」と会話する来場者。(撮影:陳沢国)
デジタルヒューマンは今、私たちの日常生活に浸透し続けている。中国インターネット協会がこのほど発表した「中国デジタルヒューマン発展報告(2024)」によると、中国のデジタルヒューマン産業は発展がさらに加速し、2025年にはコア市場の規模が400億元(1元=約21円)を超え、それに牽引された産業市場の規模が6000億元に達する見込みだ。現在、中国のデジタルヒューマン関連企業は114万社以上に達し、24年1~5月に新たに登録されたデジタルヒューマン関連企業は17万4000社以上となった。
デジタルヒューマンの応用シーンは幅広く、文化・娯楽やメディア、金融、教育などの分野をカバーし、デジタル経済発展の新たな成長源になりつつある。中国工業・情報化部(省)の関係者は、このほど開催された2024(第1回)中国デジタルヒューマン大会で、「中国は今後、デジタルヒューマン標準体系を構築・整備し、応用・普及を加速させる」と明らかにした。
「誰もがAIデジタルヒューマンを持つ」時代が少しずつ近づいているのだろうか。
大規模発展段階に突入
賽迪顧問(CCIDコンサルティング)人工知能(AI)・ビッグデータ産業研究センターのアナリスト、白潤軒氏は「デジタルヒューマン産業は既に大規模発展段階へ突入した。生成人工知能(AIGC)の登場が、デジタルヒューマンのイノベーションを推進する力となり、従来の作成・運営スタイルを根本的に変え、生成効率を大幅に高めた。AIGC技術が幅広く応用され、デジタルヒューマン産業は今、未曾有の発展のチャンスを迎えている」と見解を述べた。
螞蟻集団(アントグループ)の「霊境」デジタルヒューマンプラットフォームアルゴリズム責任者の楊明暉氏は「大規模言語モデルとデジタルヒューマン技術を組み合わせることで、デジタルヒューマンの生成コストが大幅に低減した。これまでのデジタルヒューマンの作成は、『コンピュータグラフィックス(CG)技術+ヒューマンモーションキャプチャ』という方法がメインで、リアルな人間のデータの大量収集や高度なモデリングが必要で、時間がかかり、効率が悪かった。一方、大規模モデルを活用すると、AIアルゴリズムを通じて、ディープラーニングモデル、アクションの模倣、感情の模倣などの技術をベースに、わずか数分の動画があれば、本物そっくりのデジタルヒューマンを生成できる」と説明した。
デジタルヒューマンは、大規模モデル能力の担い手の一つでもある。「大規模言語モデル+デジタルヒューマン」は、人間の介入がいらない自動インタラクション能力を備え、マルチモーダルインタラクション能力と組み合わせると、ヒューマンコンピュータインタラクションの水準を向上させることができ、医療や政務、金融などの分野で既に応用されている。
インターナショナル・データ・コーポレーション(IDC)は、AIGC推進型のロボットを「AIデジタルヒューマン」と呼んでおり、それは人間の外観、インタラクティブ感知能力、表現能力を有している。IDCの応用分類に基づくと、AIデジタルヒューマンは、汎娯楽(多領域エンターテイメント)のデジタルヒューマンと、企業サービスのデジタルヒューマンに分類することができる。汎娯楽のデジタルヒューマンは主に、音楽や美術といった芸術創作分野に応用され、映画・テレビ番組、ゲームのバーチャルアバターなどが多く、IP構築やブランドイメージキャラクターなどの機能を持っている。企業サービスのデジタルヒューマンは、企業の内外部にサービスを提供するデジタルヒューマンを指し、ライブ配信デジタルヒューマンやスマートカスタマーサービス、バーチャルパーソナリティ、保険仲立人、AIデジタルスタッフ、バーチャルガイド、バーチャル解説員などがある。
デジタルヒューマンの金融業界における応用を例にすると、デジタルヒューマンは、クライアントのリスクアペタイト、資産運用の目標、消費習慣といった要素に基づき、クライアントのためにオーダーメイドの金融サービス案を制定できるほか、ビッグデータ解析やAIアルゴリズムを通じて、クライアントの信用リスクをモニタリング・評価し、サービスの効率と質を高めることができる。また、ブランドイメージを高め、クライアントとのコミュニケーションの強化にも役立つ。
IDC中国のAI研究マネージャー、程蔭氏は「2023~24年、大規模プレトレーニングモデルとAIGC技術の進歩に伴い、AIデジタルヒューマン市場は高度化の時期を迎えた。今後、表情やアクション、音声、視覚、さらにはマルチモーダル分野の超大規模プレトレーニングモデルがさらに発展し、AIデジタルヒューマンの人物モデリング、インタラクション、意思決定といった面の能力がさらに高まる。また、AIデジタルヒューマンの普及度がますます高まることにより、その使用とコストのハードルが低くなり、『誰もがAIデジタルヒューマンを持つ』時代の到来が早まるだろう」と語った。
(その2 へつづく)
※本稿は、科技日報「"人手一个AI数字人"的时代还会远吗」(2024年11月11日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。