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【24-57】6Gの標準化スケジュールが確定し、技術開発が加速する(その1)

崔 爽(科技日報記者) 2024年06月19日

世界6G技術大会の先端成果展示エリアで、6G関連技術の成果を見る来場者。

 第6世代移動通信システム(6G)の足音が少しずつ近づいている。「2024世界6G技術大会」において、移動通信の標準化団体3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト)の共同議長3人が、6Gの標準化スケジュールを発表した。発表によると、2024年9月に6G業務のニーズに関する研究を開始し、25年6月に6Gのテクニカルプレリサーチを始め、27年上半期に6G標準を制定し、2029年に6Gの初版仕様(Rel-21)が完成する。

 24年は6G技術選定のカギとなる時期で、6G標準制定に向けた動きが始まる。「1つの技術を使用しながら、次世代の技術を構築し、その次の世代の技術を開発する」という移動通信産業の発展ペースに基づき、6Gのテクノロジー・ロードマップやシーンのニーズなどが各方面の議論を通じて明確になりつつある。

マルチ技術の深い融合と協同イノベーション

 6Gは今後、次世代デジタル情報インフラとして、物理的世界とデジタル世界を結ぶ懸け橋となり、万物のインターネット(IoE)からモノの人工知能(AIoT)へのステップアップを後押しすると期待されている。中国移動研究院首席科学者の易芝玲氏によると、6Gネットワークは5Gと比べ、転送速度や遅延などの面で大幅に向上する見込みだ。ピークデータレートは5Gの10倍に相当する100Gbps(ギガビット毎秒)に達し、遅延は5Gの10分の1に当たる0.1ミリ秒に短縮される。ユーザー体験も大幅な向上が期待されている。

 世界の主要エコノミーは現在、6Gの研究開発を加速させており、各国の政府・企業が6G技術の研究に巨額の資金を投じている。6G研究は現在、標準化に先立つ需要の定義とキーテクノロジーのブレイクスルーの段階にある。

 易氏は「移動通信技術の進化は、エアインターフェース技術の変革であるだけでなく、通信技術や情報技術、データ技術といったマルチ技術の深い融合と協同イノベーションの成果でもある」と強調。「6Gは通信、感知、コンピューティング、インテリジェンスが深く融合し、宇宙・空・地上一体化によって全域をカバーする次世代移動情報ネットワークだ」と見解を語った。

 通信・感知・コンピューティング・インテリジェンスが一体化したワイヤレスネットワークを実現するためには、感知、インテリジェンス、コンピューティング、データ処理などの能力を高め、宇宙・空・地上一体化の全域カバーを実現するためには、低軌道衛星に重点的に注目し、地上の移動体通信ネットワークの業務、ネットワーク、エアインターフェースのさらに優れたマッチングを考慮する必要がある。

 易氏は「どのような新技術でも、スタート段階から大規模導入に至るまでの間は、高コストや高エネルギー消費などの問題を避けて通ることはできない。6Gの発展過程も同じだ」と指摘した。

 消費側から見ると、5Gのスペクトル効率と単位エネルギー効率は、4Gを大幅に上回っているが、一般ユーザーはそのメリットを実感することが難しい。ユーザーが利用するパケットも数倍単位で増加しているものの、通信キャリアのARPU(1ユーザーあたりの平均的な収益)に反映されていない。中国工程院院士(アカデミー会員)の鄔賀銓氏は「通信キャリアが得る5Gの恩恵は予想を下回っている」と語っている。

 5Gの経験を活かすために、6Gはさらに多元化・パーソナライズ化する必要がある。そうすることで、さまざまな応用シーンにおける端末や通信速度、スペクトル、インテリジェンス、セキュリティ、遅延に対するニーズに対応することができる。

その2 へつづく)


※本稿は、科技日報「加快发展人工智能 实现生产力跃升」(2024年5月6日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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