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【24-58】6Gの標準化スケジュールが確定し、技術開発が加速する(その2)

崔 爽(科技日報記者) 2024年06月20日

24年は6G技術選定のカギとなる時期で、6G標準制定に向けた動きが始まる。「1つの技術を使用しながら、次世代の技術を構築し、その次の世代の技術を開発する」という移動通信産業の発展ペースに基づき、6Gのテクノロジー・ロードマップやシーンのニーズなどが各方面の議論を通じて明確になりつつある。

その1 よりつづき)

6G実現にはグリーンや性能などへの配慮が必要

 移動通信の標準化団体3GPP(第3世代パートナーシッププロジェクト)が6Gの標準化スケジュールを明確にしたことで、産業界の6Gに対する注目も以前より高まっている。

 6Gが、要求が高い業界の応用ニーズを支え、低コストでユーザーの硬直的需要を満たすためにはどうすればいいのだろうか?

 中国工程院院士(アカデミー会員)の鄔賀銓氏は「6Gのエアインターフェースは、実際のニーズに応じて複数のアーキテクチャを採用できる。これにより、基地局の設計を複雑にし、端末の要件を簡素化することが可能だ。また、AI技術を導入し、コンピューティングを変調、コーディング、RFフロントエンド処理の代わりとし、コンピューティングで通信をサポートすることで、端末チップ設計の複雑さを引き下げることができる」と、自身の見解を述べた。

 中国科学院院士で、紫金山実験室主任を務める未来移動通信フォーラム副理事長兼秘書長の尤肖虎氏は「6GネットワークにおいてAIは不可欠だ。6Gの重要指標において、AIネイティブとグリーン(環境配慮)、性能保証などの面には矛盾が存在している。これらの要求を両立できる解決策を見つけ出し、6Gのビジョンを実現しなければならない」と直言する。

 尤氏は「AIは6Gネットワークにおいて、大量のデータと極めて高い計算能力が必要となる。これは、ソリューションが適切でなければ、エネルギー消費量が非常に多くなることを意味する。高エネルギー消費は、二酸化炭素排出量の増加を意味し、ネットワークのグリーン化という目標と相反する。そのため、AIを6Gネットワークに組み込む上で、環境保護が最初の重要な課題になる。国際電気通信連合(ITU)の要求に基づくと、6Gネットワークの能力を少なくとも1桁高めるとともに、エネルギー消費量は現状を維持する必要がある。つまり、1ビット当たりのエネルギー消費量を少なくとも1桁減らさなければならないということで、これは6Gにとって、非常に高いハードルとなる」と指摘した。

 尤氏はさらに「AIを6Gネットワークで使用する際に直面する不確実性と予測不可能性の問題も今後の大きな課題となるだろう。AIには、根拠が説明できない場合や予測不可能性が存在し、AIをそのままモノのインターネット(IoT)に組み込むと、ネットワーク性能が不安定になる可能性がある」と訴えた。

 そのため、適切な方法を見つけ出し、ネットワークの安定性を維持する必要がある。尤氏は「データナレッジグラフに基づくネイティブAIを使うことで、6Gネットワークの環境要件を満たし、特徴データ駆動型ネットワークデジタルツインをさらに発展させることで、ネットワークAIの性能の不確実性という問題を解決することができる」と、自らの考えを述べた。

 鄔氏は「6Gは各業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させるだけでなく、プラットフォームやIoT、端末企業のために、5Gよりさらに多くのイノベーションやビジネスチャンスを生み出すだろう。6Gの発展過程では、応用のエコシステムを強化し、産業チェーンの川上・川下の連携を一層強める必要がある」と語った。

「低空経済」が6G応用の典型的シーンに

 6Gの発展には、関連技術だけでなく、その潜在的な応用にも注目する必要がある。低空域飛行活動による経済形態「低空経済」は、6Gの典型的な応用シーンになると見られている。2024世界6G技術大会プログラム委員会の主席を務めた未来移動通信フォーラムの呉建軍副秘書長は「低空経済が6Gの新興応用シーンであるということは、今回の大会で共通認識となった」と説明した。

 中国電信(チャイナテレコム)の首席専門家を務める米ベル研究所フェローの畢奇氏は「現時点では、6Gとセンシング技術の統合が通信キャリアにとって利益を生み出す最大のチャンスとなっている。うち、最大の収入源はドローンサービスとなるだろう。ドローンは、宅配業や農業、スマートシティ、低空巡回点検などのシーンで価値を発揮するだろう」と強調した。

 これらの新興産業のブルーオーシャンをめぐり、通信キャリアは既に事業展開と試行を始めている。畢氏によると、中国電信は低空セルラー移動通信システムのカバーについての模索を進めており、8都市で実証実験を行っている。低空経済は6Gの主な応用シーンとなるだけでなく、通信キャリアが収益を拡大できる可能性が最も高い分野でもある。低空域をカバーする基地局の数は地上基地局1~2%だが、2桁の収入増をもたらす可能性があるという。

 呉氏は「6Gと低空経済は相互に結びついているが、多くの検討すべき課題もある。未来移動通信フォーラムは、低空経済分野の技術的問題を担当するワーキンググループを立ち上げ、その標準化と産業の大規模化を促進する。このグループではまた、さまざまな産業の専門家を集め、低空経済が6G技術の支援を受けて成熟した大規模産業へと発展するよう推進していく」と語った。


※本稿は、科技日報「加快发展人工智能 实现生产力跃升」(2024年5月6日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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