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【24-61】AIデジタルヒューマンが大人気、25年には市場規模480億元に(その2)

宗詩涵、薛 岩(科技日報実習記者) 2024年07月02日

AIデジタルヒューマンにはどんな新たな特徴があるのか? また、その発展のためには、どんな難題を解決する必要があるのか? これらの疑問について、業界の専門家と関係者に聞いた。

その1 よりつづき)

業界に立脚してスマート化水準の向上を

 中国伝媒大学文化産業管理学院の張洪生執行院長は「市場の多くのAIデジタルヒューマン製品は、依然として試験や体験の段階にあり、主に人々の好奇心を満たすためのものとなっている」と指摘した。

 そして、「一部のAIデジタルヒューマンは『見かけ倒し』で、独自に問題を解決する能力や個別化された思考能力を備えておらず、回答の質も低い。AIデジタルヒューマンの応用シーンは人々との対話だけに限らない。業界に溶け込み、ユーザーに個別化サービスを提供してこそ、その中心的な価値がある。そのためには、AIデジタルヒューマンのイメージをもっと立体的にし、大規模言語モデルに基づきディープラーニングを行い、問題解決能力を高めなければならない。そのためには、専門業界のコーパスを構築し、方向性を絞ってAIデジタルヒューマンをトレーニングすべきだ。AIデジタルヒューマンの応用の進度はAI技術の発展速度によって決まる」と語った。

 騰訊雲(テンセントクラウド)AIデジタルヒューマンの劉晶プロダクトマネージャーは、「AIデジタルヒューマンを現実の生産力に転化させることで、消費市場と企業のために大きな価値を創出する必要がある。しかし、AIデジタルヒューマンの発展を推進するためには、技術だけでなく規範化や指導も必要だ」と述べた。これについて張氏は「市場の法則に従い、市場による資源配置という形で、AIデジタルヒューマンのさらなる応用を推進するとともに、政府も支援策や誘導策を打ち出し、AIに関する倫理・モラルやプライバシー・データ保護などの研究と監督・管理を強化する必要がある」と訴えた。

 そして、「AIデジタルヒューマンが完全に人間に取って代わることは不可能で、人間の一部の仕事をサポートできるだけだ。現時点で、AIデジタルヒューマンは一部の単純な反復作業を担うことができるが、今後、大規模言語モデルが進歩するにつれて、AIデジタルヒューマンはさらにスマート化が進み、その応用範囲も拡大していく」と述べた。

中国の複数地域がデジタルヒューマン産業を展開

 インタラクティブスマート技術の発展に伴い、デジタルヒューマンが技術革新から産業応用の段階へと移行しており、中国各地での展開が加速している。

 2022年7月、江蘇省文化・観光庁など6部門が共同で発表した「文化産業の農村振興活性化推進に関する実施意見」は、条件が整っている地域に対して、地元の農産物や手工芸品のPRに、バーチャルヒューマンの導入を試行するよう促している。

 同年8月、北京市経済・情報化局が発表した中国初のデジタルヒューマン産業特別支援策「北京市デジタルヒューマン産業イノベーション発展促進行動計画(2022--25年)」は25年までに市内のデジタルヒューマン産業規模を500億元以上に引き上げることを打ち出した。

 同年12月には上海市経済・情報化委員会など6部門が発表した「上海市トレンド消費財産業の質の高い発展行動計画(2022--25年)」では、デジタル分野の企業に対して、バーチャルファッションを発展させ、デジタル優良品、デジタルファッション、デジタルバーチャルヒューマンなどを重点的に拡大するよう打ち出した。

 関係者は「デジタルヒューマン産業はより統一された技術基準・規範を作り、健全で秩序ある発展を確保する必要がある」と強調した。


※本稿は、科技日報「AI数字人何以成为行业"香饽饽"」(2024年5月20日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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