【24-66】政策の供給を最適化し、科学技術成果の実用化を促進(その1)
徐海竜(中国科学技術発展戦略研究院副研究員) 2024年07月11日
中国共産党第20回全国代表大会は、科学技術成果の実用化と産業化の水準を高める必要があると打ち出した。ここ数年、中国の科学技術成果の実用化は全体的に質と量が向上するという発展傾向を示している。しかし、科学技術成果の実用化率の低さは、依然としてイノベーション能力の向上と経済の質の高い発展を制約する切実な問題となっている。科学技術成果の実用化に関する政策の最適化・調整を加速させ、成果の実用化チェーンに存在するボトルネックを解消することが、この難題を解決する鍵となる。
成果実用化体系の整備を
科学技術成果を現実的な生産力へと転化するために、中国はさまざまな発展段階において、成果の実用化における制約や関連する問題について、制度のメカニズム改革を深化させており、成果を上げている。ただ、科学技術成果の実用化チェーン全体を円滑化させるためには、実用化の奨励、需要と供給の連携、プラットフォームのサポートなどの面で引き続き問題点が存在している。
第一に、実用化奨励メカニズムのさらなる整備が必要だ。研究者に成果の所有権や長期使用権を与えるといった奨励政策は、研究者の積極性と主体性を引き出す面で一定の役割を果たしているが、政策の実施効果を見ると、さらなる向上が待たれる。一方で、科学技術成果の管理制度や事業機関の国有資産管理制度には、評価額の査定や利益分配などの面で矛盾が存在し、成果の評価額査定が難しくなっている。他方で、国有資産管理の制約を単純に弱めるだけの改革では、表面上は研究者にさらに大きな自主権を与えたように見えたとしても、実際には大学や研究機関、およびその責任者が直面し得る国有資産の流失などの責任リスクを解消しておらず、機関が科学技術成果の実用化における主体的責任を果たす積極性は依然として低い。
第二に、成果の需要と供給がうまくマッチングできていない。科学技術成果と産業化ニーズがかけ離れており、実用化が難しいというのが、実用化率が低い主な原因だ。科学技術成果の実用化チェーンの両端から見ると、大学や研究機関、企業は目標、能力、制度メカニズムの面で、連携や効果的なマッチングが不足している。目標という点から見ると、大学や研究機関が行う基礎研究の大半は先端分野向けで、産業とマッチングして、速やかに産業化できる成果は少なく、企業のニーズとマッチさせるのは難しい。能力という点から見ると、大半の大学は市場化、専門化した成果の管理や運営、実用化能力を備えていない。また、企業は大学や研究機関の質の高い成果を活用する能力に欠けている。科学研究制度という観点から見ると、企業は国家科学技術計画プロジェクトにおける発言権を十分持っておらず、参加度も低い。大学や研究機関は論文や奨励、特許といった指標をメインとした研究評価の方向性が全く変わっておらず、応用基礎研究に従事する研究者は、産業の発展や企業のニーズを対象として研究を行うという意識が低い。
第三に、プラットフォームの仲介サポートが不十分だ。科学技術成果の効果的な実用化ニーズと比べ、成果の実用化プラットフォームと仲介サービス能力には依然として問題点が存在する。まず、概念実証プラットフォームの構築はスタートが遅く、全体的に見て、依然として初期の模索段階にある。パイロットプラットフォームの構築は資金や専門人材の不足、管理・運営メカニズムの不備などの問題に直面しており、「作ったものはあまり使われず、必要なものは作れない」という現実的な苦境に立たされている。次に、科学技術サービス機関は多いものの、専門化・社会化された「強大で実力を持つ」技術移転機関は少なく、キャリアプラットフォームのリソース統合能力が低く、大学や研究機関と起業家に十分な専門的指導とサポートを提供できていない。さらに、ベンチャーキャピタル投資の早期・小規模・長期・キー&コアテクノロジーに対する機能が効果的に発揮されておらず、「長期資本」が占める割合が低く、供給も不足しており、ベンチャーキャピタル機関は早期・中期、スタートアップ企業の育成に対する忍耐力が欠けている。
(その2 へつづく)
※本稿は、科技日報「优化政策供给 促进成果转化」(2024年5月14日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。