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【24-67】政策の供給を最適化し、科学技術成果の実用化を促進(その2)

徐海竜(中国科学技術発展戦略研究院副研究員) 2024年07月12日

ここ数年、中国のテクノロジー成果の実用化は全体的に数と質が共に向上するという発展傾向を示している。しかし、テクノロジー成果の実用化率の低さは、依然としてイノベーション能力の向上と経済の質の高い発展を制約する切実な問題となっている。

その1 よりつづき)

政策の最適化は4つの面に注力

 科学技術成果の実用化チェーン全体を円滑化させ、科学技術イノベーションの成果を速やかに産業やそのチェーンに応用し、新たな質の生産力を発展させるためには、どうすればよいのだろうか。それには、目標志向を強化し、制度メカニズム改革を本筋として、各部門の横のつながりと政策施行を強化し、企業主導による産学研融合メカニズムを垂直的に構築することで、チェーン全体の体系化されたサービス能力を形成し、科学技術成果の実用化と産業化の水準を高めなければならない。

 第一に、政策の統合や科学技術成果の実用化チェーン全体の管理を強化する。また、政策体系の全体設計を持続的に整備し、主体機能の連携、改革政策の実施、関連政策の整備などの面で、政策の統合を重点的に強化する。そして、科学技術や財政、監査、国有資産、規律検査などの関係部門が、互いに連携・協力を強化し、関連政策のマッチングと施行を推進する。「トップダウンで、上から下まで連携する」という政策施行状況の監督検査、フィードバックメカニズムを構築し、科学技術成果の管理改革、評価改革、職務における成果の活性化改革の試行から得た経験を体系的にまとめ、最適化調整と普及・実施のための計画案を制定する。地方における科学技術成果の実用化に対する指導と支援を強化し、中央が地方の科学技術発展を指導する資金運用方法を革新し、審査における科学技術成果の転化・実用化指標の比率を高め、地方が現地の状況や地域産業の発展ニーズに合わせ、科学技術成果の実用化関連政策を整備し、転化・実用化するよう誘導する。

 第二に、科学技術制度改革を深化させ、制度改革を通じて、科学技術成果の実用化に原動力を提供する。研究機関の主体的責任を強化し、成果の評価がきちんと旗振り役としての役割を果たすよう取り組み、機関やプロジェクト、人材評価、科学技術奨励における成果の実用化効果の比重を増やす。職務における科学技術成果の権利帰属改革を深化させ、こうした成果の全面的な「単独管理」を推進し、国有資産管理からの試験的な撤退を進める。職務における科学技術成果の期限付き実用化メカニズムを構築し、知的財産権を取得してから一定期間が経過し、実用化を行わない正当な理由が存在しない応用技術系の成果については、機密を伴わない成果の場合、一定のプロセスを経て、企業が有償または無償で実用化できるようにする。地方および大学や研究機関に対し、科学技術成果の実用化において職務を尽くした場合の責任免除、失敗許容・自己修正メカニズムを実施するよう促し、ネガティブリストを採用したメカニズム施行を模索し、規律検査・監察部門と共同で、政策の解説と宣伝・普及を確実に行う。

 第三に、目標志向を強化して、企業主導の産学研連携イノベーションエコシステムを構築する。ニーズ志向と問題志向の科学技術計画プロジェクト形成メカニズムを健全化し、企業や業界の実践から応用研究課題を抽出することを強化し、「企業が提案し、政府が決定し、大学や研究機関が解決する」科学研究プロジェクトの組織メカニズムを普及させる。世界的な影響力を持つ複数のテクノロジー大手企業の育成を加速させ、これらの企業が産業チェーンでリーダーシップを発揮できるようにし、先端技術のブレイクスルーやキーテクノロジーの研究開発、イノベーションエコシステム構築など、産業への応用を方向性とした重要科学技術任務を推進させる。また、産業チェーンが細分化された分野においてテクノロジー型中小企業の集団を形成し、優位性を相互補完するイノベーション連合体を構築し、技術開発と応用の一体化を推し進める。

 第四に、体系の支えを強化し、成果の実用化チェーン全体のサービス能力を高める。技術研究開発、パイロット生産検証、産業化応用の全プロセスを円滑化し、科学技術イノベーション拠点プラットフォームの整理と規範化を契機として、科学技術成果の実用化プラットフォームの配置を最適化し、概念検証センターやパイロット生産熟成拠点などの建設・配置を強化する。これにより「メイカースペース--インキュベーター--アクセラレーター--産業パーク」からなるインキュベーションチェーンを整備し、各種イノベーション・起業キャリアの専門的サービス能力を高める。科学技術成果情報の公開・共有を強化し、地方が発展ニーズに合わせて、地域的な科学技術大市場を構築し、社会に向けて科学技術成果の情報検索、選別、宣伝、取引などのサービスを提供するよう奨励する。科学技術の重要課題支援と実体経済サービスを同時に推進し、科学技術イノベーション全チェーンおよび科学技術型企業の全ライフサイクルの資金調達というニーズを体系的に牽引する。科学技術金融商品とサービスを充実させ、「長期資本」と「忍耐資本」を誘導し、早期、中小企業、キー&コアテクノロジーへの投資を推し進めることで、科学技術産業における金融のハイレベルな循環を促進するべきだ。


※本稿は、科技日報「优化政策供给 促进成果转化」(2024年5月14日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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