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【24-75】新エネ貯蔵の発展にはビジネスモデルの革新が必要(その2)

何 亮(科技日報記者) 胡軼慧(科技日報実習生) 2024年08月09日

中国はここ数年、新型エネルギー貯蔵の開発・利用を加速させている。中国国家エネルギー局が発表した統計によると、2023年末現在、中国国内で稼働している新型エネルギー貯蔵設備容量は3000万キロワット(kW)を超えている。新エネ貯蔵は現在、再生可能エネルギー産業の安全で効果的な発展を後押ししている。

その1 よりつづき)

 三峡集団科学技術研究院の唐博進副院長は「中国は既に、電池やインバータ、エネルギー貯蔵システムなどを含むエネルギー貯蔵産業チェーンを構築しており、エネルギー貯蔵分野で高い競争力を備えている。海外と比べると、中国は同分野において、低コストや整備された産業チェーン、政策支援、強力なイノベーションなどの優位性がある」と語った。

共有エネルギー貯蔵施設の建設を模索

 中国では、新型エネルギー貯蔵施設は新しいエネルギーステーションに合わせて建設されることが多く、投資や建設、運営・メンテンナンスは通常、発電企業が担っているため、企業に大きな経済的圧力をもたらし、発電所の持続可能な発展を一定程度制約している。

 では、エネルギー貯蔵プロジェクトをより経済的に運営するにはどうすれば良いのだろうか?

 江蘇省如東県でこのほど、同省最大級の共有エネルギー貯蔵発電所が完成し、系統接続された。発電所と名付けられているが発電は行わず、電気エネルギーを「搬送する」だけだ。夜間の電力需要が少ない時間帯に、電力網から電気エネルギーを発電所に「ダウンロード」してエネルギー貯蔵電池に充電する。そして、日中の電力需要が多いピーク時間帯に電力網に放電する。

 このエネルギー貯蔵プロジェクトには「独立」と「共有」という2つの重要な属性が存在する。「独立」については、この発電所は第三者が投資、建設、運営を行い、独立した立場で電力市場の取引に参加している。「共有」というのは、発電企業や電力利用者にサービスを提供するだけでなく、エネルギー貯蔵施設を複数のユーザーが使用できるように開放し、ユーザーは自身のニーズと能力に応じて相応の電力を購入できることを意味する。

 三峡電能・江蘇豊儲共有エネルギー貯蔵プロジェクトの現場責任者である魏永清氏は「発電所は独立した立場で、電力調整機関と直接、系統接続や調整に関する協定を結ぶことができ、新エネルギーを利用して発電する企業には必要分の容量を、電力網にはピーク調整や周波数調整といったサービスを、ユーザーには高品質の現物取引商品を、それぞれ提供している」と説明した。

 業界の専門家は「『独立+共有』というビジネスモデルは、エネルギー貯蔵発電所の利用率と運営価値を高め、その収益ルートを拡大しており、エネルギー貯蔵業界の健全で持続可能な発展にとってプラスになる」と評価している。

「共有エネルギー貯蔵」という概念は2021年7月に初めて登場した。中国国家発展・改革委員会と国家エネルギー局が共同で打ち出した「新型エネルギー貯蔵発展の推進加速に関する指導意見」は、新型エネルギー貯蔵の独立した市場主体としての地位を明確に認めており、エネルギー貯蔵が独立した市場主体として補助サービス市場に参入し、共有エネルギー貯蔵を模索することを奨励している。

 電力企画設計総院の徐東傑サブチーフエンジニアは「新型エネルギー貯蔵は新しいものだ。今後、新型エネルギー貯蔵のコストが下がり、技術が進歩するにつれて、さらに多くのビジネスモデルが登場するだろう。こうしたビジネスモデルが、新型エネルギー貯蔵産業全体の発展を推進する可能性がある」と語った。


※本稿は、科技日報「新型储能"走得远" 商业模式需创新」(2024年6月11日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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