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【24-78】情報通信業界の新たなトレンド「AI活用で5Gを超える」(その1)

崔 爽(科技日報記者) 2024年08月20日

2024MWC上海展で展示された空飛ぶ車「旅航者X2」。(画像提供:視覚中国)

 中国上海市でこのほど、「2024年モバイルワールドコングレス(上海)」(以下「MWC上海」)が開かれた。会場では中国電信(チャイナテレコム)のスタッフが最新の空飛ぶ車「旅航者X2」について「これは広東匯天航空航天科技(小鵬匯天)が開発したもので、深圳から特別に運んできた」と来場者に紹介していた。「旅航者X2」は展示ホールで注目の的となり、多くの人が足を止めて撮影していた。

 モバイルワールドコングレスは、世界最大規模で影響力が大きい通信・モバイル見本市であり、業界では「モバイル通信のバロメーター」と見なされている。上海での開催が11年目を迎えた今年は「フューチャー・ファースト」をテーマに、「5Gを超える」「人工知能(AI)エコノミー」「デジタル・スマート製造」の3分野に焦点を当て、世界のモバイル通信業界の発展傾向と技術の方向性を模索した。

 大会での発表によると、今年5月末時点で中国の5G基地局数は累計383万7000カ所となり、世界の5G基地局総数の60%を占めた。大会に参加した専門家や学者は「中国は5Gや人工知能(AI)を含む新世代情報技術の融合的推進を加速させ、新たな業務や新モデル、新業態を生み出し続けなければならない」との見方を示している。

デジタル・スマート生産性を高める「AI for Networks」

 AI技術とその応用は、端末製品のイノベーションにおける重要な注力ポイントとなる。MWC上海でもAIは注目の的となり、通信キャリアや設備メーカー、端末メーカーがAI分野の革新的成果を揃って展示した。特に今年は「5G-A(5G-Advanced)」商用化元年となったことで、AIはネットワーク自動化のルートテクノロジーの一つとして、その重要性がより際立つようになった。

 AIは現在、情報の生産や処理、伝達、インタラクションの方法を再構築しており、モバイルAI時代に新たなチャンスをもたらしている。生成AIなどの技術の応用が、ネットワークパケットの爆発的増加を加速させているが、デジタルヒューマンやスマートカーなどのAI端末も多様化しながら発展しており、接続規模が今後さらに拡大し、汎用端末時代の到来を推進すると見られている。

 華為(ファーウェイ)取締役で5Gプロダクトライン・プレジデント(ICT製品&ソリューション・プレジデント)を務める楊超斌氏は、「AIは2030年までに、1万にのぼる業界の細分化されたシーンに応用され、AIサポーターのユーザー数は10億レベルに達し、デジタルライブ配信やスマートファミリー、エンボディドAI(身体性を持つAI)などのユーザー数も1億レベルに達する」と予測している。

 これにより、ネットワークの自動化レベルや運用・保守効率などの面において、さらに高いレベルが求められることになる。楊氏は「スマート化によってネットワークを強化し、ネットワークのデジタル・スマート生産力を飛躍的に向上させる」との理念を打ち出した。これはつまり、AI技術の応用を通じて、ネットワークをより高度な自動化・スマート化へと発展させ、生産力の飛躍的向上を実現するというものだ。

 具体的には、通信の大規模言語モデルを導入し、ネットワークデータに対する正確な感知とスマート分析を実現することで、ネットワークの複雑さ、正確さ、効率などの問題を効果的に解決する。次に、スマート運用・保守体制を構築し、ネットワークの自動化レベルを高める。スマート監視やスマート予測、スマート意思決定などは、ネットワークの状態をリアルタイムで監視し、事前アラートを行うほか、ネットワークに障害が発生した場合、速やかにそれを見つけ出し、修復することができる。

 楊氏は「AI技術は5G-Aビジネスの成功を支える重要な要素だ。AIが電気通信業界をさらに高いレベルへと押し上げるのは必然的な流れだが、それは同時に複雑で時間のかかるプロセスでもあるため、業界全体が力を合わせて協力し合い、モバイルAI時代の新たなチャンスをしっかりと掴む必要がある」と指摘した。

 MWC上海の期間中、ファーウェイはネットワークにAIを導入する「開城計画」を発表した。同計画は、世界の通信キャリアとの協力を強化し、共創、共生、共同成長するワイヤレススマート化エコシステムを構築することにより、ネットワークの生産性を全面的に高めるのが目的だ。第一段階として、半年以内に基地局のエンジニア1000人が、基地局1万カ所以上を管理できるようにし、杭州、広州、バンコク、済南、深圳の5都市をほぼカバーできるようにするという。この措置により、都市のネットワークインフラ整備を強化できるほか、スマート化管理を通じて、ネットワークの運用効率を高めることもできる。

その2 へつづく)


※本稿は、科技日報「信息通信业新风向:拥抱AI 超越5G」(2024年7月8日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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