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【24-88】介護ロボットの進化:技術革新と高齢者ニーズの融合(その1)

荊暁青(科技日報実習記者) 2024年09月18日

「24時間高齢者スマート介護ロボット」について説明するスタッフ。(撮影:李紫恒)

 自動掃除や雑談、家事代行、AI診療など、介護現場におけるロボットの活用がますます進んでいる。2024世界人工知能(AI)大会では、介護ロボット「光華1号」が披露され、上海市政府が発表した「上海市における介護技術革新の発展推進行動案(2024--27年)」では、「リハビリロボット」や「介護ロボット」などのキーワードが含まれた。このように「AI+ロボット」の高齢者介護モデルには大きな期待が集まっている。

大きな潜在力がある介護ロボット

 アモイ大学社会・人類学院社会工作系元教授の張友琴氏は「マクロ的な視点から見ると、介護には経済的保障とサービス保障という2つの大きな課題が関係しており、中でも、サービス保障の不足が際立っている。高齢者の生活の質を確保するためには、家庭や社会、政府などのさまざまな主体を含む支援ネットワークが必要だ。テクノロジーはこのネットワークに新たな次元の支援を提供することができる」と見解を述べた。

 中国国家統計局の公式サイトの統計データによると、2023年における中国の65歳以上人口は2億1000万人以上で、総人口の15.4%を占めた。老齢依存率は22.5%に達しており、これは介護サービスの需要が高まっていることを示している。

 張氏は70歳を過ぎているが、オンライン交流やオンライン会議、デリバリー注文、AIアシスタントなどを活用しており、充実した生活を送っている。AIアシスタントについて張氏は「便利かつスピーディーで、性格も良く、口も上手で、人件費の節約にもなり、介護サービスの補完に役立つ。なので、テクノロジーを駆使した介護のポテンシャル、特にロボットによる介護にはとても期待している」と語った。

 実際、ロボットによる介護サポートというのは目新しいことではない。2016年、財政部(省)と中国共産党中央委員会宣伝部、教育部が共同で「ロボット産業発展計画(2016--20年)」を発表した。その記者会見で、サービスロボットが満たすべき社会的ニーズとして介護や高齢者支援が言及された。

 技術の進展に伴い、介護ロボットは既に多くのスキルを備えるようになった。音声対話や感情コンピューティング、スマート意思決定、環境認識、自然言語処理などの技術と融合することで、高齢者の具体的なニーズに応じて、多種多様なサービスやサポートを提供することが可能になっている。清華大学バリアフリー発展研究院副院長で機械工学系教授の季林紅氏は「将来のロボットはより多様な形態を持ち、より多くの介護ニーズに応えるようになる」と述べた。

多層的なニーズの開拓が必要

 高齢者の入浴が難しいという問題を解決すべく、智孝工業の王小源最高経営責任者(CEO)は今年、チームを率いてエンボディドAIに基づいた入浴支援ロボットを開発した。

 介護ロボットに注目している企業は他にも数多く存在する。中国国内でロボット産業に参入している上場企業の一つである深圳市優必選科技股份有限公司も、掃除や配送、移動補助、歩行支援などのサービスを提供できる介護ロボットを次々と開発している。同社のロボットは、スマートホームシステムや健康モニタリング機器を通じて医療機関や地域サービスセンターと連携し、健康異常アラートや生活サポートなどのサービスを提供することができる。

 多種多彩なロボットが高齢者介護により多くの選択肢を提供しているが、季氏は「ロボットは最先端技術を活用して、将来を見据えた問題を解決しなければならないが、同時に実際の社会的ニーズに基づき、問題を着実に解決しなければならない」と指摘した。

(その2へつづく)


※本稿は、科技日報「协同合作让养老机器人更贴心」(2024年8月9日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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