【24-89】介護ロボットの進化:技術革新と高齢者ニーズの融合(その2)
荊暁青(科技日報実習記者) 2024年09月20日
多種多彩なロボットが高齢者介護にさまざまな選択肢を提供している。ロボットは最先端技術を活用して、将来を見据えた問題を解決すべきであり、また、実際の社会的ニーズに基づいて問題を着実に解決する必要もある。
(その1 よりつづき)
では、実際の社会的ニーズとは何だろうか。アモイ大学社会・人類学院社会工作系元教授の張友琴氏は「まず、高齢者が実際に何を必要としているかを理解しなければならない。高齢者にもさまざまなタイプがある。病気で寝たきりの高齢者にとって必要なものは何か。また、比較的健康な高齢者が必要なものは何か。彼らのニーズはそれぞれ異なる。技術を導入する場合、ニーズをレベル分けする必要があり、画一的に対処することはできない。少なくとも、現時点では1種類のロボットで全ての問題を解決するのは不可能だ」と説明した。
そして、「実際に起こる問題を解決しなければならない。高齢者の入浴やトイレというのは、家庭や介護施設で難しい課題となっている。しかし、食事や排泄は人間の基本的な生活ニーズであり、介護の基本だ。寝たきりの父親の介護をしていたので、このことをよく理解している。介護ロボットは人とのインタラクションを重視しており、技術的障害は小さいが、発展を妨げる最大の障壁は、実際の問題を掘り下げることにある」と指摘した。
智孝工業の王小源最高経営責任者(CEO)も同じ考えだ。高齢者が安全かつ快適で、清潔かつ便利に入浴できるようにすることが、彼の起業の原点だったと語る。「水温や水圧、洗浄角度などは、センサーが収集するユーザーのバイタルサインデータや環境パラメーターに基づいて設定しなければならない。また、高齢者が転倒を怖がること、皮膚が薄いこと、風邪をひきやすいこと、さらには心理的な敏感さや経済的な負担能力なども考慮しなければならない」と語った。
清華大学バリアフリー発展研究院副院長で機械工学系教授の季林紅氏は介護ロボットの主な目的として二つを挙げた。一つはサポート機能を提供することで、これは高齢者がロボットの力を借りて自身の能力を高め、これまでできなかったことをできるようにすることだ。もう一つは、介護者の精神的・身体的負担を軽減することだ。
感情的な付き合いというのも避けて通れないニーズだ。張氏は「実際、高齢者は非常に孤独だ。特に、一人暮らしの高齢者や子供がいない高齢者のニーズを掘り起こすことは急務だ。少子化という社会的現実に直面し、AIによる簡単なやりとりであっても、インタラクションを通じて高齢者に一定の感情的サポートを提供することができる。もし、ロボットの外見がかわいくて、高い能力をもっているなら、素晴らしいパートナーになるはずだ」と語った。
分野を越えた協力が発展を促進
季氏は「介護ロボットの設計と開発は典型的な学際的研究だ。介護ロボットの開発には、情報技術や機械工学、電子工学、医学などの理工系分野だけでなく、心理学や社会学、人口学といった社会科学の支援も必要だ。技術的なブレイクスルーを遂げるためのカギは、学際的協力だ」と自らの考えを述べた。
清華大学計算機系のヒューマンコンピュータインタラクション実験室では現在、四川大学華西医院のリハビリ医学科と協力して、在宅用スマートリハビリロボットの開発を進めている。コンピューターの専門知識を持つ王重陽博士と、リハビリ医学の専門家である朱思憶副教授は、テクノロジーによる高齢者支援の研究過程を弓矢に例え「技術が弓矢で、医師の指導やユーザーの参加によって得たニーズが的の中心だ。学際的な協力により、理工系研究で得た技術という弓矢を、社会科学研究の的の中心に命中させることで、最大の社会的利益を生み出すことができる」と語った。
世界で高齢化が加速しており、デジタル・スマート化の波が間違いなく介護に新たな可能性をもたらしている。しかし、デジタル・スマート技術を介護分野に応用することで生じる技術の安全性という問題も、多くの人に懸念を抱かせている。こうした問題を解決するためにも、学際的な協力を積極的に行うことが必要だ。
王重陽氏は「介護ロボットの秩序ある発展を推進する過程で、それぞれの役割には限界がある。データの安全性や個人のプライバシーを保証するためには、マクロ的な政策と科学技術倫理のガバナンスが必要だ。また、アルゴリズムや計算能力、大規模モデルフレームワークといった基礎技術の安全性を確保するためには、産学研の共同連携が必要になる」と訴えた。
※本稿は、科技日報「协同合作让养老机器人更贴心」(2024年8月9日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。