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【24-90】パラレルリンクロボットの設計ハードルを下げる数学ツール(その1)

陳 曦(科技日報記者) 2024年10月01日

パラレルリンクロボットの革新的設計と調整理論設計を応用したロボット(画像は取材先提供)

 産業用ロボットは現在、製造業の重要な「労働力」になっている。パラレルリンクロボットは、よく見かけるシリアルリンクロボットに比べ、積載量が大きく、精度が高く、動的特性に優れ、再構成能力が高いなどのメリットを備えており、航空・宇宙や医療・ヘルスケアなどの分野で中核設備となっている。

 しかし「優れた機構は統合が難しく、優れた性能は設計が難しく、高い精度は調整が難しい」という科学的難問が、パラレルリンクロボットの設計・応用のハードルを高め、その発展を妨げている。天津大学機械工程学院の孫濤教授のチームは、パラレルリンクロボットの設計・応用における革新的な新理論を打ち出した。「工学的経験を利用して試行錯誤を繰り返し、何度も設計する」という従来の方法プロセスを改め、数学の新しい法則の発見、力学の新しいメカニズムの解明、機構学の新しい方法の提起という3つの面から着手して、高性能パラレルリンクロボットを発明・設計・調整する方法を打ち出した。この「パラレルリンクロボットのイノベーション設計と調整理論」プロジェクトはこのほど、2023年度天津市自然科学賞の特賞を受賞した。

パラレルリンク機構のトポロジーの簡潔な記述を実現

 機構はロボットの「遺伝子」で、ロボットの機能を直接決定するものであり、ロボットの性能を本質的に決定するものだ。ロボット機構学の視点から分類すると、既存のロボットは主にシリアルリンク型とパラレルリンク型に分かれる。

 孫氏は「シリアルリンクロボットは1本の腕のようなもので、各関節がつながってできている。パラレルリンクロボットはいくつかのリンク構造がクローズドループ構造を形成し、2本または数本の腕が一緒に握る動きをするようなもので、複数の腕が共同で1つのことを遂行する。1本の腕では耐荷重に限界があるが、複数の腕が連携すれば、ロボットの耐荷重はより大きくなり、より優れた性能で作業を実現できる」と説明する。

 パラレルリンクロボットでは、各ジョイント間を結ぶ必要があるため、その機構には複数のクローズドループ構造、伝達回路、動作構成という特徴がある。これを統合することは機構学と数学の学際的な分野における研究の注目点であり、難問でもあった。

 孫氏は「既存の方法では、複雑で多様なパラレルリンク機構のトポロジーを簡潔に記述して正確に計算することは難しかった。その結果、統合プロセスが設計者のインスピレーションと経験に大きく依存することになり、パラレルリンクロボットの機構設計を制約していた。これは試行錯誤を繰り返すプロセスであり、認知の限界により、正確な機構の設計が非常に難しくなることがある」と指摘した。

 孫氏のチームは数学的視点から着手し、数年の歳月を費やしてロボットの機構的・数学的な表象や演算の関係を研究した。最終的に連続した運動を表象する最も簡易な数式の有限スピノルとその4種類の演算法則を発見し、パラレルリンクロボットの機構を統合する有限スピノルの新理論を打ち出した。これは、機構のトポロジーの代数計算と連続した運動の正確な設計に対する数学ツールを提供するものだ。

 チームメンバーの連賓賓さんは「私たちは他にも、応用シーンに向けた機構統合理論も打ち出した。インスピレーションや経験を数式で表現できるようになると、すべてがシンプルで明確になる。例えば、ある加工ロボットを統合する必要がある場合、ロボット機構の革新的理論を応用し、加工シーンにおけるロボットの運動ニーズを抽出し、運動パラメータを公式に代入して計算すれば、パラレルリンクロボットのプロトタイプに相当する適切な機構トポロジーを得ることができる」と説明した。

その2 へつづく)


※本稿は、科技日報「数学工具降低并联机器人设计门槛」(2024年8月13日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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